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カルテ423 幸運のカルフィーナ・オーブの災難(前編) その14

「いやーお待たせしましたお嬢さん。今の時代はこんな風に内視鏡が発明されてすげえ便利になりましたけど、昔はとっても大変だったそうですよー。そもそも内視鏡ってのは初期は真っ直ぐなパイプだったそうなんで、とっても飲み込みにくかったそうですがね。そんなのもう拷問ですよー」


 本多医院の診察室で、頭髪が後頭部だけ鉈で切り落としたかのようにスッパリと無くなっている上から緑の薄い帽子を装着した医師は、ベッドに臥床するエリザスの喉元にグイグイ魔物の触手のごとき黒くウネウネと曲がる細い管を器用に突っ込みながら、口はそれ以上に忙しげに動いていた。


「グガ……」


「エリザスさん、無理に無意味な無駄話に相槌を打たなくても良いですよ。すみませんね、本来でしたら事前に麻酔を注射して眠らせてから内視鏡検査を施行するのですが、それですと目覚めるまでの時間がもったいないとおっしゃるので、起きたままで申し訳ありませんが……」


 傍らから赤毛の看護師ことセレネースが、石化から蘇ったばかりなのにうるさくさえずる本多を再び石化しかねないほどの氷の視線で凝視しながらも、通常よりもやや優しげにエリザスに語りかける。といっても冬風が秋風になった程度の変化だったが。


「うう、ひどいよセレちゃん………ってほぼその通りなので申し開きできないけど……でも懲りずに言うと、内視鏡ってのは今やってるような止血目的以外にも、体内の病変部を調べたり、胃にできるポリープっていう腫瘍の卵のおできみたいなやつを除去したり、食道や気管にうっかり入っちゃった異物を取り除くのにも使われるなど、様々な用途があるんですよ」


 一見反省したかのような本多だったが、舌の根も乾かぬうちに、セレネースに睨まれているにもかかわらず、またもや言葉の暴走を再開した。


「フガフガ……」


「しっかし異物といえばとんでもない物が多くて困っちゃいますよ。まったく人間ってやつはもっとも賢い生物であるがゆえに、もっとも愚かしい行動を平気でしちゃう仕方のない存在なんですよー。有史以来、人類が口から飲み込んできた、食べ物ではない物を羅列したら、それこそ一冊の本になってしまいますよ」


 彼が楽しげに話すのに合わせて、内視鏡もゆっくりと彼女の中を突き進んでいった。

皆様明けましておめでとうございます!本日は日曜日だけどお正月なので特別更新です!2023年もよろしくお願い致します!

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