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カルテ418 幸運のカルフィーナ・オーブの災難(前編) その9

「まあ、この地にいればしばらくは無事だと俺は読んでるけどね」


「うむ、何しろ泣く子も黙る地上最強の魔獣姉妹もおることだしのう……ってこりゃまたいかんって痛たたたたたたた!」


「さっきからこそこそ話をしているようだけど、全部ちゃーんと聞こえてますからね」


 気づかぬうちに寝室を抜け出し背後に立っていたエリザスがドワーフの尖った耳先を摘まみ上げる。


「ちなみに断っておきますが、私たちは確かに地上最強かもしれませんが、インヴェガ帝国の兵士に対しては攻撃できないよう暗示をかけられていますからね。だからたとえ戦争になっても戦力にはなりませんよ。お生憎様ですが」


「うがあああああああーっ!」


「ギャハハハハハ! なんでえバレリンその形相はよ! さっきの夕食噴き出しちまうじゃねえか!」


 影の様に間近に現れたエナデール先生ことエミレースも反対側のバレリンの耳を引っ張り上げるため、哀れなドワーフの顔は傍目には非常に面白いことになっていた。


「わわわわかったからやめんかい! ワシの肉体があまりにも魅力的だからってひど過ぎるわ!」


「誰もそんなこと言ってないわよこの腐れドワーフ!」


「なんじゃとこの駄目デューサが! このままだと真っ二つに千切れて脱皮してしまうわ!」


「そりゃちょっと見てみたいわ。ファブリオーの元ネタくらいにはなるかもしれないしな」


 笑いながらダイフェンが傍らのギターを手に取った瞬間だった。


「うげえええええええーっ!」


 甲高い少女の悲鳴が響いたため、エリザスと愉快な仲間たちはおふざけを一旦中止して声のした方向に注目した。


「カナリアちゃん! どうしたの!?」


 なんと先ほどまで無邪気に玩具をいじっていた少女の口からは真っ赤な血がぽたぽたと垂れ落ち、床に小さな池を作っていた。その朱色に染まる水面には光を反射する透明な何かの欠片が混じっており、傍らではランダが膝をついてオロオロになり、何も出来ずにただ震えていた。


「ランダ、何があった!?」


「こ、この子が、あの綺麗な水晶玉をいつの間にか口に中に入れて転がしていて、噛み砕いて飲み込んだんだニャ! ごめん!」


 ようやく我を取り戻した猫獣人はダイフェンの言葉に涙腺が決壊し、泣きじゃくるばかりだった。一同は蒼白になった。

次の更新は一週間後の12月20日です!では、また!

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