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カルテ413 幸運のカルフィーナ・オーブの災難(前編) その4

「誤解だニャ、エリザス! 新しいタップダンスの練習を二人でしていただけだニャ!」


 あまりのエリザスの剣幕に酔いも一時的に吹っ飛んだランダが懸命にダイフェンを援護する。


「嘘! じゃあなんで小鳥じゃあるまいし屋根の上なんかでするのよ!?」


「だってここでしたら邪魔で迷惑だし、あれってちゃんと木の床があるところでないと音が出なくて意味がないからだニャ!」


「それならそうと早く言ってよ! アホな勘違いしちゃったじゃないの!」


「だって恥ずかしいじゃないか! この歌って踊れる神の申し子的な大天才で世紀のプレイボーイのさすらいの吟遊詩人であるダイフェン様が凡人のごとくこっそり練習してるなんてバレるのは……」


「はぁ……」


 急にモジモジするダイフェンにあっけに取られたエリザスは、赤い魔眼も引っ込んでしまった。


「それよりもとっととキノコを集めんかい! ワシャ腹が減ったぞい!」


 バレリンの一喝の元、別の意味でのキノコの疑いの晴れた馬鹿夫婦と巻き込まれて既にグロッキー状態の残りの者たちはとっとと作業を再開した。カナリアだけはそんな皆の間をちょこまかと動き回って元気溌剌としている。


「あれ、これは何のおもちゃだ?」


 ふとキノコ拾いの手を止めたダイフェンが床の一隅を凝視する。虫でも出そうな暗がりに微かに光を反射し揺れ動く何か丸い物が転がっていた。


「でっかい水晶玉か? それにしては変じゃのう……」


 いつの間にか側に来たドワーフの言う通り、それは直径6、7センチ程の大きさの透明な水晶玉のようであった。ただし奇妙なことに、その中には水と思しき液体がトロリとたゆたっており、そこに細かくキラキラきらめく金色の粒子が、液体の動きに従って球体内部を小魚の群れのようにクルクルと泳いでいた。


「「うお……!」」


 王家に代々伝わる門外不出の至宝にも匹敵する珍品を前に、無骨な2人の男は言葉を失い、その吸い込まれそうな摩訶不思議な魅力にただただ耽溺していた。


「すっごい綺麗だニャ……まるで星いっぱいの夜空を眺めた猫の目みたいだニャ」


 ふらふらと危なっかしげに室内を徘徊していた酔いどれ猫も歩みを休め、彼らと一緒にその美しさに見惚れていた。

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