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カルテ391 ライドラースの庭で(後編) その61

「そういや俺様、ここから北のガウトニル山脈のファロム山に運命神の聖なるお告げ所があるって聞いたことがあるっスよ! なんでも半分ボケた婆ちゃんがお告げの解読をやってるとか……」


「やけに詳しいな、ノービア! しかし本当びっくりだわ……よもや神様から御指名とはな」


 ユーパン大陸の出身者はあまりのビッグニュースに衝撃を受けて蜂の巣をつついたような騒ぎとなり、診察室は一時的にお祭り状態だった。


「なんか医者同士の紹介状みたいな頼み方されると身体がこそばゆくなりますねー。しかしお会いしたいのは山々なんですが、ご存知の通り、当院は僕の意思じゃ自由に好きな場所に移動できないんです。まったくひどいクソ仕様ですよー。それこそ運命神様とやらのお力でなんとかならんもんですかねー?」


 先天的に神を敬う気持ちなど露ほども持ち合わせていない本多は、別に普段と変わらぬ態度で先ほどの覚醒もどこへやら、やる気なさげにぶーたれた。どうやら伝言の内容が期待外れだった様子にジオールには見受けられた。


『残念ですが、多分それは無理ではないかと思われます。白亜の建物はこの世界のことわりからかけ離れた異質な存在ですからね。ここの運命を操作することなど、たとえ最高神にも不可能でしょう。ただし、もし万が一貴院がファロム山のお告げ所近辺に顕現することがあれば、心あらば御足労を賜りたいのです。ご面倒ですが、この世界のためにもどうかよろしくお願いいたします』


(おお……)


 姿の見えぬ神が深々と頭を下げる映像が、一同の脳裏に自然に浮かび上がった。それほどの心のこもった切なる願いだった。


「ああ、そういうことならお安い御用ですよライさん……ってやっべえええええええええええ!」


 突如本多が椅子を倒して立ち上がると、禿げ頭を抱えながら天に向かって素っ頓狂な声をぶっ放した。おかげで床に落ちていた小動物の糞のような黒い粒が飛び跳ね、ジオールの禿げ頭に付着した。


「静かにして下さい先生、深夜ですよ」


 すかさずお目付け役同然の看護師が凛々しく手刀の構えをとる。しかし本多はそんなことはお構いなしに、両手の人差し指を頭の上に突き立てて角のポーズをした。


「なんの真似っスか先生? ドラゴンですか?」

 

「惜しい! っていうか全然違うよ! もっとエロいやつ!」


「エロい……ひょっとしてレプラコーンか?」


 いつの間にか興味を持ったブレオまで即席クイズに参加していた。

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