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カルテ388 ライドラースの庭で(後編) その58

 だが、その静けさには今までの沈黙とは異なり、姿なき大いなる存在の深いためらいのようなものが心なしか感じ取られた。どうやら神は迷っているらしい。


『……実は私にも、かつて妹がいました。とても可愛らしく賢くて、しかも優しい子でした。彼女は私を慕ってくれて、とてもなついていました』


(な、何だと!?)


 突如慈愛神が前置き無く自分語りを始めたため、ジオールは目が点になった。彼が神官長になって以来、前例のないことだ。そもそも教義によれば神とはある時突然この世界に現れた全てを超越した至高の存在であり、先祖や子孫を持たず、人間のような家系図的なものがあるなど想像の埒外だった。


『ですから私にも、あなた方の兄妹愛は十分よく理解できます。筆舌に尽くし難い悪夢のような壮絶な生活の中で一緒に辛酸を舐め、苦楽を共にし、お互いに助け合った間柄は、往々にして強力な信頼関係を築くことがあります。ジオール神官長が妹を憂い、村人も含め教育などを与えた想いも、ハーボニー副神官長がそんな兄を慕う気持ちも、正に打算無き、偽り無き真の慈愛心と言えるでしょう。ただし……』


 またもやライドラース神の声が糸が切れたようにぷっつり途絶え、兄妹二人を不安の渦に陥れた。しかし神が口火を切るより早く、本多がサッと横やりを入れた。


「『ただし神の決定は絶対なので変えられません』ってことですか、自慰神様?」


『おお、さすが本多先生。今まさにそう伝えようとしていました。確かにルールは変更できませんが、いくら私でも鬼ではありません』


「そりゃぁ鬼じゃなくて神ですからねぇ。じゃあ、ここは一つ僕に任せてください! さっき良い解決策を思いつきましたよ!」


 本多は悪戯っぽくウインクしながら両手をサムズアップした。


(何をするつもりだ、こやつ……!?)


 本多に対して不信感バリバリのジオールは、矯めつ眇めつ彼を見つめるも、その腹立たしくなるほど得意満面の表情からは、策とやらを何一つうかがい知ることは出来なかった。


「そういや関係ないけど最近のクイズ番組って解答者が答えてから正解の発表まですげえ待たせますよね。大体十秒くらいかかることが多いですよ」


「ホンダ先生、わけのわからないことはどうでもいいっスから、焦らさずにさっさと早く教えてくださいっスよー!」


「あなたさっきはあれだけ焦らしたくせに……まあいっか、では、結果発表ー!」


 皆、おそらく神も含めて一斉に本多に注目した。

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