カルテ381 ライドラースの庭で(後編) その51
「ええい黙れ黙れ黙れ! 神聖なる我が神との対話中に邪魔しおってからに! そもそもわかっているのか貴様!? 当神殿がかくも金銭的に難儀している最大の原因はだな……」
はらわたが煮え返りまくって口から火でも噴きそうな勢いのジオールは、ここぞとばかりにどす黒い怨念を込めて本多を睨み付けた。
「この邪悪なる異形、白亜の建物の存在だ! 貴様の施す怪しげな医術とやらのせいで、市井の愚民どもがよからぬことを信じ、恐れ多くも我が神を貶めるような卑劣な噂を流しておるのだ! 貴様の方が患者を上手く治癒し、ライドラース神殿など必要ないというふざけた妄言を撒き散らされ、我々は非常に迷惑しておるのだ! この悪魔の手先の狡猾なる詐欺師めが!」
喉も枯れよとばかりに黄色い歯を剥いてがなりたてるジオールは、並の心臓の持ち主ならばその場で凍り付きそうなほどの迫力を帯びていた。だがいくら彼が吠え立てようと、肝心の本多に対しては、暖簾に腕押ししながら糠に釘を打つようなものだった。
「はいはい、悪いけどそれって僕とは無関係ですよ~。要するに勝手にシェアを奪うなってことが言いたいんでしょうけど、そっちは外傷専門で、こっちは病気専門なんだから、ちゃんと住み分け出来てるじゃないですかー」
「そんな細かい違いなんぞ無知な下々の者たちには到底理解出来んわボケェ! とにかくもうこの世界に二度と出現するな、異端の化け物めが!」
「そうは言ってもそいつは無理ってやつですよ。大体こっちの方がそちらのラブラブ神殿が出来るより前から存在してるんですけどねー。別に『元祖』って暖簾はぶら下げちゃいませんけど」
「前か後かの問題じゃないわ! 正か邪かについて言っとるんじゃい!」
「そもそも僕が今晩この体育館じゃなかった神殿にポンッとお邪魔したからこそ、ジオールさんは寸でのところで助かったわけじゃあーりませんか?」
「余計なお世話だ! 頼んでもいないのに勝手なことをしおってからに! 毛の先ほども、これっぽっちも貴様に感謝なんぞしておらんわ! 貴様なんぞに治療してもらうくらいなら、死んだ方がよっぽどマシだったわ!」
「あちゃー……」
予想通りの台詞を上司に言われ、ブレオが額に手をやる。このまま論争が続けば、自分までとばっちりを喰らうことは明白だった。




