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カルテ371 ライドラースの庭で(後編) その41

「地下の秘密の通路は、排水用と偽って造らせ、なるべく大きい方が詰まりにくいとかなんとか言って強引に太く作らせた。後で腹心の部下を使って多少手を加えたがな」


「かなり苦しい言い訳っスよ、それ!」


「また、ビドロ板の件は、周囲には正殿の天窓の改修のためと偽り、昔のつてを使って知人に大金を積んで特注で作らせ、夜中に突貫工事を行い秘密を守らせた。あそこには今迄にも何かと便宜を図っているのでな」


 ノービアが途中でくちばしを入れて来るも、ジオールはウザそうにシッシッと手を払うジェスチャーをしながら続けた。


「あそこって……ああ、確か以前ビドロ屋で働いておられたとか……」


 ブレオが神官や使用人の噂話から仕入れた情報を口にする。ジオールは無言で肯定した。彼の若い頃から薄く、今や完全に禿げあがった頭部の内部に、少年時代に雇われていたビドロ工房の賑やかな店先が鮮やかによみがえる。門前の掃除係の貧農の子は、作り方も習わぬのにビドロの特性を見抜き、壮大な計画を閃いたのだ。こいつはいつか使える、と。


「ブラボー! エクセレント! ジーニアス! 俺は天才だ! うわらば! っていやはや本当にマジで凄いですよ! 僕もあのスイミング・プールのことを知らなかったら一生気づかないままでした。こちら側の世界に独力であれを考案できる人がいるなんて、学会発表ものでイグ・ノーベル賞受賞間違いなしですよ! 認めましょう、あなたは千人に一人の大天才ですジオールさん! サインしてください!」


 本多が手放しで褒めたたえるため、いささか思歯がゆくなってきたジオールだったが、よく考えればこれ(ジオール=天才)とそれ(勝手に治療したこと)とはまったくの別問題であったため、緩んできた表情筋に活を入れた。


「フン、そんな当たり前のことなぞ貴様ごときに言われずとも、自分でよーくわかっとるわ! もっとも俺が優秀なためか後継者になる器の神官が育っておらず、次の神官長を決めかねてはいるがな。で、貴様は池の秘密を暴いて鼻高々なのかもしれんが、だからといって怪しげな治療行為とやらを許したわけではないぞ!」


「ええっ、往生際が悪いっスよ、ジオールの旦那! さっき負けを認めてベラベラ喋っていたじゃないっスか!」


 ノービアがすかさず糾弾するも、古だぬきの大神官は、「黙れ下衆が! 聖なる池を甘く見るでない!」と一喝した。

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