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カルテ369 ライドラースの庭で(後編) その39

「ハハハ……まあ、ぶっちゃけそうなんっスけど、あんまり早くネタバレしちゃうと初夜直前のバージンの花嫁さんみたいに心臓バックバク状態のジオールの旦那のドキドキ度が減っちゃうんじゃないかって思ったんで……つまりじらしプレイってやつっスかね?」


「き……貴様ああああああああああ!」


 思わずノービアに詰め寄ったジオールだったが、そこは名うての傭兵、黒い彗星のごとく通常の三倍の速度で相手がトンズラしたため、風を掴むようなものだった。


「まあまあ、二人とも落ち着いてくださいよー。あんまり焦らすのも病み上がりの身体に良くないですし、仕方ないからバラしちゃいますけど、そのプールは実は二重底になっていたんです。簡単に説明しますと、プールの上から30㎝くらいの深さのところにガラスの……そちらではビドロっていうんでしたっけ? まあそれで出来た大きな板がプール全体にはめ込まれており、その上に深さ10㎝程度に水が入っているだけだったのです。意味わかりますか?」


 その場の全員が本多の問いに頷いた……ただ一人、硬直したジオールを除いて。


「続けますよ。つまりそのガラスの下には大きな空気のある空間があったってわけです。美術館のお客さんは出入り自由で、長い地下通路を通ってその空間を思う存分満喫できます。僕も行ったことありますけど、まるでお魚になったような不思議な気分でしたね。ああ、あの頃は結婚していて楽しかったなあ……」


「先生、脱線する時は時計見てからにしてください」


 既に診察が長時間になるのを危惧してか、セレネースがカチコチ動く壁にかかった丸い物を指差した。



 セレネースに土下座して謝る本多を横目にブレオはあの幻想的な月下の中庭での出来事を思い浮かべる。あの時月よりも輝く禿頭の男が無様に放り投げた石は放物線というよりはひょろひょろの山なりに飛んでいき、力尽きたかのごとくポチャンと聖なる池に飛び込んだ。


 医師に促されるままに恐る恐る池を覗き込んだ時は驚愕し、頭をぶん殴られたような衝撃を受けたものだ。なんと石は予想に反して水底に沈まず、水深10㎝程の位置に留まっており、途中で何かに引っ掛かったんたじゃいかと目を疑ったほどだ。


 これには何事にも滅多に動じないノービアまでもが絶句し、口をパクパクと水面の鯉よろしく開け閉めしていたが、やがてピンと閃いたようで右手の人差し指をにょっきり天に向けて突き立て、雄叫びを上げた。

すみませんが次回更新は一週間後の6月7日です!では、また!

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