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カルテ302 眠れる海魔の島(後編) その31

「……とまあいろいろありまして、うちの父親とハイ・イーブルエルフの決死の活躍によって無事海魔ゲンボイヤは再び眠りにつき、更なる大津波は未然に防ぐことが出来たんです。だからうちの母親も助かり、つまり本多先生は私の命の大恩人に当たるわけなんですよ! あーっ、疲れたーっ! ちょっと一杯貰いますね!」


 無駄話好きの本多よりも長い長い昔話を語り終えたリーゼ・ファリーダックは、本多の手元にあった十数種類が混ざっているらしいお茶入りの翡翠色のペットボトルを彼が許可する前にふんだくると、左手を腰に当てて、ごくごくラッパ飲みした。


「あーあ、風呂上りのコーヒー牛乳じゃないんだから……まったくしょうがないお嬢さんですねぇ……」


 買ってきたばかりの貴重なお茶を奪われた本多は恨めし気な視線をリーゼに向けていたが、彼女は欠片も気にかける様子がなく、濡れた口元を手で拭うと豪快にゲップを一発かました。


「あー、美味しかった! さっすが異世界の飲み物ですね! はい、少ししか残ってませんけどお返しします!」


「要りませんよ! あなたインフルエンザ陽性だったじゃないですか! 全部あげるから持って帰って下さい!」


「えっ、本当にいいんですか!? ありがとうございます、先生! 一生の宝にします!」


「そんな不燃ゴミ宝になんかしない方がいいと思いますよ……やれやれ」


 さすがの本多もこのお転婆な16歳の娘っ子には押されまくりで、禿げ頭に手を当てるとお茶臭いため息を吐いた。


「しかし話の最後がだいぶ省略されてましたけど、どうしてあなたのお父さんが銛をタコ八郎の口に放り込んだら一件落着みたいになったんですか? さっぱりわかりませんよ。僕、気になります!」


「えー、わかりませんでしたか? 本多先生ならてっきり先刻承知のはずだと思って省いたんですけど……」


「普通わかりませんって! お茶あげたんだしいじわるせずに教えてください!」


「仕方ないですねぇ……でもこれも、本多先生がすごく関係しているんですよ」


「???????」


 本多の脳内は鬼教官の試験問題を前にした学生並みに疑問符の群れと化した。

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