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カルテ291 眠れる海魔の島(後編) その20

「こ、これですか?」


 アラベルは、尻とマットの間に挟まっていた青いブリキの缶を抜き取ると、掲げてみせた。四角くわずかに角が丸みを帯びたそれは、エアマットの色と非常に似通っていたため、よくよく注意しないと気づくことが困難だったのだ。


「そう、それよー。あたいの美少年の陰毛コレクション入れにちょうど良さそうなその箱の中には、一体どんなお宝が入ってるのーん? 何だか背徳的な秘密の匂いがムンムンするわー」


「そのコレクションとやらは即燃やした方がいいと思いますよ」


 さすがに慣れてきたアラベルは氷のような眼差しで道化者を蔑視するも、根が親切なため、正直に白亜の建物の医師と出会い、ジンジャークッキーを貰った時の様子を物語った。


「へぇー、そんな便利な食べ物が異世界にはあるのねー。ちょうど小腹が空いたから、あたいにも一枚ちょうだいなー」


「残念ですが中のクッキーはもう全部食べてしまったので、今は代わりに別の物を入れてあるんですよ」


「陰毛?」


「……やっぱり噂通りイーブルエルフは邪悪極まる種族だったんですね。いっそ死にますか?」


「一緒にこいつを突き落とそう、アラベル。今なら大抵のことは許されるぞ」


「なんでゼローダちゃんまで会話に入ってくんのよおおおお! んもー、ちょっとした冗談だってばー」


「やれやれ……」


 アラベルは肩をすくめるも、現在の缶の中身について、イレッサに正直に打ち明けた。背後のゼローダの威圧感もあってか、珍しく神妙にして聞いていた彼だったが、予想外の答えを知ると、突然策士の顔になってうつむき、ぶつぶつと何事かをつぶやき始めた。


「ふむふむ……ってことは……だから……して……だから……閃いた!」


「ど、どうしました?」


「わかったのよ、復活したゲンちゃんを再び海底に沈める方法が! これでいきましょう!」


 爛々と双眸を輝かせ、嬉々として喋るイレッサは、喜びのあまり今にも飛び跳ねんばかりだった。


「おお、何か新たな策が浮かんだのか? 何か俺に手伝えることでもあるか?」


 つられてゼローダも興味を示し、身を乗り出した。


「そうねー、何か先の尖った硬いものがあるといいんだけど……それをあそこにぶっ刺して……ああん、想像するだけで興奮して身体が熱くなっちゃうわー」


「急に何を言い出すんだお前は? やっぱりそっちの方向なのか?」


「やっぱりこの人海に叩き落としましょう、あなた!」


「ごごご誤解よー!」


 もはや筏の上はコント会場となっていた。

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