ガチャ6 名も無き冒険者パーティ
リュウが千里眼で見つめる先には、短剣を持った軽装の男とレザーアーマーを着けてバックラーとロングソードで武装した男がゴブリンにそれぞれの武器を突き立てている姿が写っている。
恐らくは冒険者。
辺りには数体の死骸があった。ゴブリンを仕留めた男達が揃って後ろを振り向いて手を挙げている。
どうやら後方にも仲間がいたらしい。
杖を持ち、緑色のローブを来た男が笑って手を挙げ返していた。
「今回は数が多かったな」
「ったく。最近は妙にゴブリンの数が多いような気がするなぁ」
「話してる間にまたゴブリンに囲まれちゃいますよ。早く魔石と耳だけ採って帰りましょうよ」
「わかってるっつーの」
前衛を務めていた軽装の男が悪態をつきながらゴブリンの胸に馴れた手つきで短剣を突き入れ、肉を斬り裂いてく。
人間であれば心臓があったであろう位置に、赤色の小さな石のようなものが見えてきた。
「……チッ。やっぱり屑魔石か」
「当たり前じゃないですか。ゴブリンみたいな低ランクのモンスターから質の良い魔石が手に入ることなんて、滅多にないことなんですから」
「そうだな。20~30体程の群れになったゴブリンを全て倒しても屑魔石しか出ないことが多いと聞く。期待する方がおかしいだろう?」
「うるせぇなぁ。わかってるっつーの! こんなにゴブリンばっか倒してんだぞ! 1つくらいまともな魔石がでなきゃ割に合わねぇだろ」
苛ついた様子で怒鳴り散らして軽装の男はその場で座り込んだ。しかし、確かに男達は確かに多くのゴブリンを倒していることも事実。
散発的に現れる3~5体のゴブリンのチームを立て続けに全滅させてきたのだ。
軽装の男が怒りたくなる気持ちはわかると言わんばかりに残りの男達も頷いている。
「気持ちはわかるが、依頼の目的は果たしたんだ。これ以上ここでゆっくりしていれば大量に流れた血の臭いに釣られてモンスターが集まってくるだろう。
日も暮れそうだ。採れるものは採って、死体を片付けてさっさと帰るぞ」
レザーアーマーを着た男に命令され、仕方ないという表情で軽装の男が倒したゴブリンの死体から屑魔石と耳を順番に剥ぎ採っていく。レザーアーマーを着た男もナイフを取り出し、剥ぎ採っていった。
リュウはゴブリンの内蔵が切られ中身が見えた所で吐き気を催すが、堪えて観察を続ける。
数分と経たない内に魔石と耳を取られた死体が山になった。
ローブを着た男が杖を握り精神を集中していく。
「ーー燃やし尽くせ。ファイヤーボール」
練り込まれた魔力が杖の先で直径1メートルほどある火球に変わり、勢いよく死体の山に飛んで行った。
火球が着弾し、屍が炎で燃やされながら独特の臭いを撒き散らし煙を上げている。
「撤収だ」
死体の処理を終えた男達はレザーアーマーを着けた男の掛け声で街の方面へ戻って行った。男達の姿が見えなくなったところでリュウは木から降りた。
(魔石と耳が売り物になりそうな口ぶりだったな)
吐き気を堪えながら順番にフレイムタンで耳を切り落とし、心臓付近を切り裂いて魔石を取り出した。1体目、2体目屑魔石が採れたが3体目からは綺麗な球体の形をした大きめのビー玉サイズの魔石が採れた。
驚いたリュウは鑑定のスキルがあることを思い出して、屑魔石とビー玉状の魔石を調べた。
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名前 ゴブリンの魔石(極小)
評価 G
価値 銅貨5枚
説明 ゴブリンから採れる魔石。保有魔力がかなり少ない。
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名前 ゴブリンの魔石(中)
評価 C
価値 銀貨30枚相当
説明 通称ゴブリンハート。極稀に採れる状態の良いゴブリンの魔石。保有魔力がある程度あり、再充填可能な逸品。
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(おお! 銀貨1枚なんて余裕で超えてるな。流石は幸運EX! やっと街に向かえるな。死体から剥ぎ取るってリアルだと生々しくて気持ち悪い。耳を持ち運ぶなんて……。あぁ、鑑定忘れてたな。耳も見ておくか)
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名前 ゴブリンの耳
評価 G
価値 なし
説明 ゴブリンから採った耳。素材としての使い道はほとんどない。
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「……価値なしってふざけてんのかぁ!!」
怒りのままに耳を思いっきり地面に叩きつけ、夕陽が射す美しい森の光景に目もくれず、リュウはイライラしながら駆け抜け、街に向かって行った。