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ガチャ1 ゴッドレアを引いた!

ーーガチャガチャ。


 目当てのものが出るまで何回も回す。財布の中の小銭が無くなり、ガッカリして肩を落とし、家に帰っていく。ダブったものは大切に取って置き、友人にトレードを持ちかけ、ラインナップされているものは全て揃える。子供の頃の俺こと勝谷龍はそんな奴だった。

 社会人になってもそういった所は変わらない。スマートフォンが出てソーシャルゲームが流行ると、俺は飛び付いた。ソーシャルゲームにはガチャが用意されていたからだ。


 俺が一番ハマったのは黒猫プロローグ。指一本で本格アクションRPGをマルチプレイで楽しめるのが売りだ。

 当然、レアキャラクターや装備品をゲットするために課金してレアガチャを回しまくった。

 有利にゲームを進めるため。課金の効率をあげるため。何より所有欲を満たすために、一回500円もするガチャを数えきれないほど回し、クレジットカードも使って数百万と使い込んでいる。

 レアキャラクター、装備品をゲットしては喜び、ゲームにのめり込んでいった。


 今日も新イベントで追加されたキャラクターと装備品を入手するため、仕事終わりの車の中でスマートフォンを開き、黒猫プロローグを立ち上げる。


「……新キャラはやけにイケメンだな! 専用装備品の剣も強そうだ。当たれよっ」


 仕事のストレスを忘れるほどアドレナリンが出るのを感じながら画面に浮かぶ10連ガチャpushボタンを押す。

 

 タータタッタッタタターン!


 効果音と共にボタンを押した瞬間画面の中の黒猫の口から虹色に輝く卵が排出される。


「なんだこれ? 金の卵までしかでないはずじゃ……」

 

 一人で呟きながら、虹色に輝くの卵をpushするとスマートフォンの画面が強烈な光を発する。咄嗟にまぶたを閉じたが、あまりの眩しさに痛みを感じるほど。

 光が徐々に消えていき、目を擦りながら開けると、一面真っ白な世界が広がっていた。


 見渡す限りの白。夢じゃないことは明らかだった。握った拳に力が入りすぎて爪が食い込んで痛い。


(車の中に居たはずなのに!? ここどこだよ!! どうすりゃいいんだ!!)


「勝谷龍よ、会うのは初めてじゃな。お主のガチャへの姿勢、いつも感心しながら見させてもらっていたんじゃよ」


 途方に暮れている俺の背後から、呑気な声色でそんな言葉が聞こえてくる。

 後ろを振り向くと環を頭の上に浮かべたひげモジャのじいさんがいた。

 環をよく見るとカプセルボールが数珠繋ぎになっている。

 俺は確信した。コイツはガチャ神で間違いない。


「お主が引き当てたゴッドレア:虹の卵の説明をしよう。

 こいつは簡単にいうと可能性の秘められた卵。願いを込めて卵を撫でるとその者の願いが叶うというものじゃ。

 まっ、3つまでしか叶えられないがの!

 願いを決めて撫でれば卵が割れて七色の光がお主を包み効果が発動するからの。

 ほれ、はよきめんさい」


(ガチャ神はとんでもないことをサラリと言ったな。聞き間違いじゃなければ、要はなんでも願いが叶うということじゃないか)


「ガチャ神。どのような願いでも叶うのか?」


「もちろんじゃ。まっ、ワシにかかればシェンロンボールも裸足で逃げ出すほどの万能さよ! ワシに危害を加えたり、願いの数を増やすための願いと神になる願いだけは叶えられないがの。制約はそんなもんじゃな」


(シェンロンボールって、あのアニメに出てくる、7つ集めると龍が出てきて願いを叶えてくれる奴か。よく知ってるな。しかし、凄いなゴッドレア! なんで俺なんかが引けたんだろうな……。

 運が特別強い訳じゃない。というか、欲しいキャラは基本10万円の軍資金を用意して、なんとか軍資金が底をつくギリギリで手にはいるくらいだ。

 ゲームとガチャだけが趣味で実家暮らしだからそんな無茶な課金ができたわけで、普通の暮らしをしていたら、恐らく欲しいキャラや、装備はほとんど取れなかったと思う。

 つまり、どちらかというと不運。そんな俺がなぜ……)


「その、ステータス的に圧倒的に運が低いお前さんが、働いた金のほぼすべてをガチャに使い続ける姿にワシは感動したんじゃ!

 狙ったキャラが出ないならクレジットの枠引き上げも辞さない、不退転な姿勢にガチャ神として敬意を表してプレゼントしたいと思ったわけじゃよ。

 ワシだったら絶対ムリ。マジリスペクトじゃ!」


(心を読まれた! 流石は神様だ。バカにされたような気もするけど、ガチャ神は大真面目な顔で喋っていた。今も目付きは真剣だ。というか、現代の俺にもステータスなんてあったのか。驚きだ。しかも、運が低いってどんなもんだったのかな?)


「標準が10。最高値は100。最低値は0じゃ。お主は3じゃな」


(マジかよっ!)


 人生で運が良ければ乗り切れたであろう困難の数々を思い返し、ショックを受けていたが、ガチャ神が頭の上に浮かぶ環からカプセルボールを取り出し、それを投げつけられて意識を強制的に戻された。


「時間はあと1分しか残ってないぞい! 早く決めないと願いを叶える前に卵がわれちゃうのじゃ!」


(おいおいおいっ! そんな大事なことはもっと早く言ってくれよ! くそっ。俺は……。ええい!)


「剣と魔法のファンタジーな世界へ行かせてくれ! スキルや魔法、アイテムが貰えるガチャつきで! 運は最大値にしといてくれ!」


 早口で虹の卵に向かって喋りながら撫でると、虹の卵にヒビが入っていく。


(なんとか間に合ったようだな。焦った……)


「お主は、欲があるのかないのかわからんやつじゃの! チートなのは運だけか。面白いの! 特別に加護もつけてやるわい。異世界でも達者での」


 ガチャ神の声を聞いている途中、虹の卵が割れて七色の光が俺を包む。すべての色が混じり合い、虹色にグラデーションしながら光が爆発した。


 光が収まると、俺は異世界に転移していた。

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