ガチャ0 銀髪の青年、怪物を斬る!
「燃え上がれ!」
魔剣を手にした銀髪の青年が叫ぶ。陽光を受けて煌めく紅い刃が、開戦の合図代わりに派手な炎を噴き上げた。
青年に向かって迫る大型の怪物が金属製の棍棒を脳天めがけて降り下ろす。
尋常ならざる腕力が超重量の棍棒を加速させた。
青年は頭上から高速で落ちてくる棍棒の根本に狙いを合わせ、魔剣で掬うように斬り上げる。
硬い金属を、魔剣の纏った炎が高熱で溶かしながら通り抜けた。
先端を失った棍棒が何もない空間に振るわれる。怪物の眼に僅かな動揺が走った。
ーー好機!
戦闘において致命的な隙を見せた怪物。
鋭く振り抜かれた魔法銀製のショートソードが巨大鬼型モンスターの首を一撃で斬り飛ばした。
(討伐完了だな)
秋から冬に変わっていくことを予感させる冷たい空気が吹き始めた荒野。青年の回りには複数のモンスターの死骸が並んでいた。魔剣を使い死骸から魔石を取り出すと、虚空から出現させた分厚いカード状のアイテムに吸い込ませる。
(よし、これで……)
満足そうな顔を見せた銀髪長身の青年が魔剣を鞘に戻す。右腰に下げたマジックウェポンを一瞥し、切り札の1つを使わずに倒せたことに達成感を覚えていた。
勝利の余韻に浸っていると体内に満ちる力を感じた青年は、ステータスを確認する。上昇したレベルや能力値を見て気分を高揚させた。
(着実に進んでいるな)
どんな相手にも屈せず、媚びず、自由気ままに生きていく。
異世界に転移をした青年は、人生第2幕を後悔しないで生きていきたいと強く願っている。
信念を貫き通すために必要な強さ。それは神からの得た特典スキルだけでは辿り着けないほどの高みであり、青年は戦いと修行に明け暮れる日々を過ごしていた。
(なんだか、懐かしいな)
青年は異世界で危険を犯してまで戦う理由を再認識すると同時に、異世界に転移するきっかけとなった『あの日』のことと、嗜好性の高い遊戯にどっぷり嵌まり込んでいたことを思い出してしまうのだった。