湾曲
「姉さんに変なこと言われたんだったら、俺に言えよな。後で叱っとくから」
「あいつを怒れるの?何かの冗談?」
「うっ・・・・」
今の私に、彼の優しさは口に合う。
「でも、ありがとね」
「え!?」
彼は私の言葉を予想だにしなかったのだろう。一瞬こちらを向いた顔は驚きに満ちていた。
「心配してくれてありがとう、って言ってるのだけれど。何か文句が?」
「いえ、いえいえいえ。躑躅が『ありがとう』って言った記憶が無かったから」
私はその言葉を聞いて少しショックを受けた。
「忘れてるの・・・・?」
声にならない言葉を言った。
「・・・・なんか言った?」
「別に何も言ってないわ」
「そう」
彼が思い出すにはもう少し時間がかかるのかもしれない。
「なあ、躑躅」
「何?」
「碧ちゃんは?」
「あ・・・・」
「あれ、開かない」
私が大学から戻ってくると部屋に鍵がかかっていた。入りたいのはやまやまだが、私は鍵を持っていなかった。
インターホンを鳴らすが反応はない。いつもなら姉がいるので開けてくれるはず。
「どうしよう・・・・」
「お困り?」
私が困っていると、美人な女性が尋ねてきた。彼女は顔が整っていて女優やモデルのような人だ。いや、そうなのかもしれない。けれども、この人のことをここに来てから一度も見たことはない。
「ええ、まあ・・・・」
「そう。それじゃあ、これが必要ね」
彼女はそう言うと、鍵を取り出した。その鍵にはクマのキーホルダーが付いている。私たちの部屋の鍵だ。
「ど、どうしてそれを?」
「あなたのお姉さんから預かったの」
それを聞いて安心した。彼女は姉の知り合いだったんだ。
「あなたの腹違いのお姉さんから」
それを聞いて不安になった。彼女はただの知り合いではない。この秘密を知っているのは片手で数えられる程度の人数・・・・・。
「姉さんの何を知ってるの?」
「それはどういう意味かな?身長?体重?それとも――――」
「分かったわ。ひとまず、部屋の中に入りましょう。この話はオープンで話せないもの」
「そうだったわね」
彼女は解っていたかの様に笑みを浮かべた。私はその微笑みに彼女への警戒度を少し引き上げた。
「それじゃあ、鍵を渡してよ」
「はい」
彼女は鍵を私に向かって投げた。私は落としそうになりつつもキャッチに成功。
「ところで」
私は鍵を開けつつ彼女に質問をした。
「あなたの名前は?」
「・・・・フフッ」
彼女は先ほどの様に笑みを浮かべると私の問いに答えた。
「私の名前は、≪志摩野 錫≫十八歳!ぴっちぴちのJKですっ!ヨロシクねっ!」
すみません。この章の最後は来年になります・・・・本当に申し訳ない。
ですが、この物語ではなく、世界の終焉がなんちゃらの方は年内に出しますので(
←無理そうです・・・・・)ご覧になっていただけると有難いです。ではメリークリスマス!(私は一人でクリスマスを過ごします・・・・)
追記:蒼が蒼になっていたのでなおしました。