孤独な人間と自称神様
「遊びに行こう!」
私にはそんな声をかけてくれる友達なんていなかった。でも、それは中学生の時の話。
高校になればそんな友達ができると思ってた。だから家から遠い、私のことを知らない人の多い高校にした。その学校は私の偏差値と同じぐらいだった。まさに『私のための学校』だった。
高校1年の春、私には友達ができた。名前は晴。晴は地元の人で学校周辺の色々な場所に連れて行ってくた。
夏、私にはもう一人の友達ができた。名前は緋監。私、晴、緋監の三人で色々な場所に行った。それはとても楽しかった、夏休みの課題を忘れてしまうほどに。
秋、私の友達は一人に戻った。緋監に彼氏ができた。次の日から緋監と遊ぶ相手は彼氏だけになった。
冬、私の友達はいなくなった。晴は死んだ。
高校2年の春、私は学校へ行かなくなった。春休み明けには警察が来て緋監が死んだことを私に告げた。
* * *
「それで今に至る感じね。ただ、詳しくはまだ話せないの」
俺の家に向かう道中、卯月は学校に行かなくなった理由を語ってくれた。
「もう、十分ですよ!なんか、すみません」
「私が勝手にしゃべりだしたのだから貴方が謝る必要はないわ」
彼女は今まで何人もの死を体験してきた。その苦しみはとてつもないものだろう。
「ところで」
「なんですか?」
「なんで敬語なの?」
「・・・・え?」
「私、あなたと同じ年齢よ」
「・・・・え?」
雰囲気からして自分より上かと思っていたので衝撃的だった。
「分かったのならこれからは敬語を使わないで」
「分かりました」
「敬語使ってる」
「あ、すみま・・・ごめん」
「よく出来ました!」
と、こんな感じで俺の家についたのであった。
* * *
「面白いわね、あなたのお姉さん」
なぜか俺の姉さんの話で盛り上がっている。盛り上がっているのは卯月だけだが。
「面白くなんかねえよ!俺が死ぬところだったんだぞ!」
「そこが面白いんじゃない」
今は俺が姉さんに殺されかけた話である。
「そろそろ昼食の時間だけど食べてくぅ~?」
「もうそんな時間か・・・・って、姉さん!? どうやってここに!?」
ドアには俺が小屋に閉じ込めておいたはずの姉さんが立っていた。
「あんたはまだまだ甘いのよ。それでどうするの躑躅ちゃん」
「えっと、お邪魔になってしまうので帰ります」
「分かったわ。それじゃあ、躑躅ちゃんの家まで車で送ってあげるわ」
卯月の家まで遠いから車なら楽になるが・・・・
「姉さんの運転、大丈夫なのか?」
俺は姉さんに尋ねた。姉さんの運転を見たことが無かったからだ。
「もちろん平気よ~」
「安全運転で頼むよ。てなわけで、姉さんの車で送ってもらったら?」
「お言葉に甘えさせていただきます」
卯月は姉さんにお礼をして2人は部屋をあとにした。
扉を閉めると私に尋ねてきた。
「それじゃあ、躑躅ちゃん。・・・・・真実を聞きたい?」
自称神様、一条錫が。
次は9月の初めごろになる予定です