幸いと災い
「で、何でついてこようと?」
俺は家に帰る道を辿りながら卯月に聞いた。
「えーと、あなたのお姉さんがどんな人か気になってね」
「・・・そうですか」
朝、自分の家に帰ろうとすると卯月が「連れてって」と言ってきたので断ると「え?それじゃあ、新学期に『一条真琴が、女子生徒の家にお泊りした!!』なんて噂が流れないようお気をつけて」云々、不気味なことを言い出したので許してしまった。
しばらくして、俺の家の前に着いた。
「余計なことはしゃべらずにお願いします」
「もちろん」
そうして俺は我が家のドアを開けた。開けたドアは緊張?のためか重く感じられた。
「おかえりー!」
開いたドアの隙間から顔が覗いていた。その顔を見てもっと扉が重くなった気がした。いや、確実に重くなった。
そして俺がドアを全開に開けると我が家の住人である彼女が出てきた。
「あっ、君が躑躅ちゃんね!よろしくぅ~!」
俺の姉、≪一条 錫≫である。
錫はサッと外に出ると卯月に抱き付いた。
「ぐはっ!」
むしろ、締め付けている?
「ダ、ダズゲデ・・・」
絞殺事件が発生しそうだったので止めてあげよう。
「姉さん、そろそろ離してあげて・・・」
「むぅ、しょうがないな~」
卯月は錫から離れるとゼエゼエと息をしていた。
「それで、どうして卯月の名前を知ってたの?」
まあ、なんて答えるかは見当がついているけれど。
「私、神様だから」
「・・・・」
卯月は呆れたように姉を見ていた。
「あー、えっと、気にしないでいつもこんなんだから」
「そう」
卯月は完全に引いた目で返事をした。
「それじゃあ、卯月は中に入ってね!俺の部屋は階段上ってすぐ右の部屋だからね!
それと、姉さんには少々お話があります。」
卯月を中へ押し込んで姉さんと話をしようとすると
「ねえ、話って何?もしかして、私たちの子供を作ろうって話?そんなこと、躑躅ちゃんの
* * *
「なんか、騒がしかったけど大丈夫?」
卯月は少々引きつった顔で尋ねてきた。
「ああ、何でもないよ。姉さんを軽く締めただけだから」
「そ、そう」
とりあえず、姉さんには小屋での生活にしてもらったからしばらくは安心できるはずだ。
「えーと、家に上がらせてもらったのだけど大丈夫だったから?」
「その気で来たんだろ」
「その通りだけど、まさか本当に家に来れるとは」
そうえば、なぜ卯月を家に入れてしまったんだ。
「ところで、あの話は本当なの?」
「あの話?」
「あなたのお姉さんが神様だって話」
「はぁ~、そんなわけないだろ。姉さんはよくそんな話をするから騙されないようにな」
「ええ、分かったわ」
卯月は俺の持ってきたお茶を飲むと真剣な眼差しになった。
「それで、あなたは今後どうしたい?」
「とりあえず、あの手紙のことが真実かどうかは知らないけど可能な限りは卯月のことを助けるつもりでいる」
「そうしてくれると有難いわ。ただ、私はいつも暇だから時間があるけれどあなたは学校が・・・・」
「今は夏休みだ」
「そうえば、もうそんな時期ね。」
卯月はどこか寂しい顔をして言った。
その表情は先ほどの辛い話をしていた時の顔だった。
学校で起きた辛い過去の話。
少し遅くなりました。すみません。次も少し(強調)遅くなると思います。