結
俺は違和感を覚えていたのかもしれない。
卯月は『ヒント』を出していたが、その『ヒント』を出すたびに訳が分からなくなる。
そして彼女はなぜ今日、開けたがっていたのか。こんなもの来年の同じ日にでもやればいい。あるいは、去年や、一昨年に必死こいてやるか、箱を壊して中身だけ確認すればいい。
そして、こんなものは誰にでも出せる仮定と結論である。
この箱は確実に答えを知っていなければ開かない。
知っていると答えた卯月は数字を言った。
「0519」
「・・・なんだ、自分の誕生日だったんですね。」
卯月は箱を手に取った。
「そうよ、最初に違うって言っておけば開ける人なんていない。なかなかいい考えだったでしょう?」
「ええ、むかつくほどに」
確かに、これはとてもいい考えだとは思う。
「ふう、それじゃあ、説明しなきゃね。
おじい様が交通事故に遭う前日におじい様が、「お前の生まれた日に開けなさい。でも、その箱を開けるときにはすべてを受け入れる覚悟を身に着けない。」と言われて渡されたのがその箱なの。でも当時の私には『生まれた日に』ってことは誕生日に勝手に開くと思ってのその年の誕生日に一日中その箱を監視したこがあったのよ。かわいいでしょう?分かったわよ、そんな顔しないで冗談よ。
で、おじい様の言った『生まれた日に』ってことを理解できた頃には開ることなんて簡単にできた。・・・できたのだけれども、『すべてを受け入れる覚悟』という言葉が気になって開けられなかった。鍵を開けたのはいいのだけれども、怖くなって開けられなかった。それでこんな歳にもなっていまだに開けられないの。可笑しいでしょう?そんなもの怖くない。けど・・・私には『覚悟』が足りない。後ろの文字を見つけた時には余計に自分にはこれほど『覚悟』が足りないことを知った。
そこで、誰かに一緒に開けてもらおうと考えた。けど、ここでもダメだった。私の家庭事情のせいで友達なんてできもしない。一緒に開けてもらえる人なんて当然できなかった。そして今、あなたという知り合いができた。これはチャンスだと思った。けれど、ここでも私の『覚悟』は無かった。最初に説明をしておけばいいものを私はできなかった。そして私はあなたに解いてほしくないと思ってしまった。」
卯月躑躅には
「・・・分かった。そんなに怖いなら、」
心の支えが必要であり
「一緒に開けよう」
悩みを話せる人が必要だ。
「だから、」
だから、
「『友達』になろう」
俺がなぜあの答え――――『友達になる』という答えが出てきたのだろうかが自分でもはっきりとはしない。ただ、俺が感じたのは卯月には心の支えが必要だった。俺でなくてもいい、他の人でも。ただ、卯月の心を聞く。それだけでいい。俺はそう思った・・・のだと思う。だが、いくら考えても答えはでない。それは今、卯月躑躅と再会したとしても。
・・・・まあ、『箱』に入っていた問題のせいで余計にそうなったのだが。
そしてこの後、卯月躑躅が泣きながら眠りについたことは一条だけの秘密である。
え?何週間だって?しらないな。