13話
ぜかましとはたかぜは練習艦としてしばらく現役に残りますがw
スサノオシステムは日本版艦隊防空システムで、諸外国の防空システムより半導体技術が進んでおり1個当たりのコストを削減する事に成功している。
2017年9月1日、公試や完熟訓練を短縮化した護衛艦ふそうときいが護衛艦隊に加わり、ようやくしまかぜとはたかぜが一線を退いた。
ふそうは岡山を出発すると紀伊水道を抜け、四国の沖合を東進し、4日後の9月5日、F-15に護衛されながらふそうは島根沖に到着したのである。
ふそうCIC
「オールシステムグリーン、好調です!!」
「そうか・・・・・・技本や統合幕僚本部、自衛艦隊がスサノオシステムに掛けた期待は大きいからな・・・・・・」
レーダー員の報告を聞いた初代ふそう艦長、西村恭一1佐が呟いた。
スサノオシステム、それは海上自衛隊が開発した僚艦防衛システムであるFCS-3を発展させ、艦隊防空やBMDに使える次世代防衛対空システムへ発展させたもので、かが型護衛艦で初めて採用されたシステムである。
イージスの由来がギリシア神話に登場するゼウスがアテナに与えた盾に由来するのに対し、日本が時間をかけて開発したこの完全国産防空システムが日本神話のスサノオに因むもので、海上自衛隊と技術本部の職員たちがこのシステムに掛けた期待も相当大きいものである事がうかがえる。
スサノオシステムはFCS-3D対空捜索/誘導弾管制レーダーを中心に、対空誘導弾などを搭載する96セルの米国製最新鋭VLSMk-57で構成されており、欧州のAPARやEMPARに引け劣らない性能を誇る。
数分が立った・・・・・・
「旧北朝鮮領、東倉里から朱雀弾道弾飛来を感知しました!!」
レーダー管制員の一人がそう報告すると西村艦長が対空戦闘開始を命じた。
「各員、戦闘配置につけ!!対空戦闘用意!!!」
かくして、ふそうは護衛艦ちょうかいと共にBMD任務に就いた。
「目標の弾道計算が完了しました、着弾予想地点は・・・・・・ひっ、広島市です!!!」「何っ!!」「何だと・・・・・・」
その場が凍り付いた、無理もない、広島は中国地方最大の都市で、もしこの都市が攻撃されたら、死傷者は数万人は下らないだろう・・・・・・
「艦長・・・・・・我々は何の為にこの扶桑と言う船を動かしているのですか?」
砲術科勤務のとある若い1尉がそう言うと艦長が呟く。
「勿論、国土を、国民を護る為だ、SM-3スタンバイ!!・・・・・・」
彼の言葉を聞いた艦長はミサイルの発射を命じた。
「コメンス・ファイア、撃てぇえええー!!!!」
ふそうのヘリ甲板と船体前部に装備されたMk-57VLSから計4発のスタンダードミサイル3型が放たれ、虚空に白煙を曳きながら上昇する。
同じ頃、イージス艦ちょうかいからもSM-3が発射され、隠岐諸島奪還の任務を終えたばかりのスサノオ艦であるかがやその随伴艦である第3護衛艦隊所属のイージス艦みょうこうもそれに続いた。
中国地方に向けて放たれた朱雀弾道ミサイルは約7発、対する自衛隊は護衛艦ふそう、かがのスサノオシステム搭載艦とイージス艦みょうこうとちょうかいの連携によって4発の撃墜に成功するも、1発が日本列島を飛び越え、太平洋に落下するも広島市や中国地方に被害が発生する事は無かったのであったが、1発が中国山地に、1発が四国山地の山間に落下し、爆風によって半径数百m以内の鉄塔を溶融させ、広島東部、岡山西部、そして愛媛県の一部で停電が発生、日本側にとって手痛い損害となったのである。
韓国、ソウル郊外大統領府
「ふはははは・・・・・・我が人民を痛め付けていた日本帝国主義者どもが泣き叫び、私に謝罪を請う姿が目に浮かぶ・・・・・・」
韓国第12代大統領金元孫が3軍と海兵隊大将の前でフランス産の高級ワインを片手に乾杯をしていたが、突如空軍の李大将が喋り始めた。
「閣下、空軍の戦闘機と操縦士の数が足りません、来週には中国と国内の工場からJF-17戦闘機が搬入されます、ですから作戦の開始を来週に延期してください!!」
万円の笑みを浮かべる大統領に対し、李空軍大将は戦力の無駄な投射を控える様に進言したが、大統領の機嫌を李大将の一言が損ねてしまい、直後に、大統領は大統領府警備隊に命じて彼の処刑するように命じたのである。
バンッ!!・・・・・・
警備隊は持っていた拳銃を李将軍に向け、撃ったのである。
大統領府警備隊員に撃たれた李はそのまま大統領謁見室の大理石敷かれた床に血塗れで倒れこみ、数分後に死亡したのである。
「この敗北主義者がどうなったか、見ていた君たちもこうなりたくないなら私の命令に背くな・・・・・・」
冷酷な笑みを浮かべる金元孫を見ると残った3人の将軍たちは怯えて縮こまる様な表情を浮かべつつ、敬礼をしたのである・・・・・・
はっきり、この男は将軍たちにとって本当に困った最高司令官である。
同じ頃、福岡市内では木下3佐率いる陸上自衛隊第11戦車師団を中心に陸海空自衛隊の部隊が集結、後に戦史にも名を刻む大作戦である希望の朝作戦が開始されたのである。




