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ウルフは誰かの気配を感じていた

 ウルフは誰かの気配を感じていた。兄貴と女の他にもう一人だ。

 兄貴はウルフのことを助けてくれた。だからウルフは兄貴のことを守らなくてはいけない。

 ウルフは外へでた。辺りはすっかり暗くなっている。ウルフは神経を集中させて気配の居場所をさがす。気配を感じた方向に移動していると途中で途切れた。

 おかしいなと思いながらウルフは後ろを向いた。

 ウルフの後ろには一人の女が立っていた。危ないと思ったときには、もう遅かった。

 女は足に何かをさしてきた。針を通って何かわからない液体がウルフの体の中に入っていく。

 途端にウルフの体は動かすことができなくなってしまった。

 女はウルフの顔をのぞき込んで、笑った。



 スマートな電話の画面の上をなめらかに指が動いていく。すると指と同時にアイコンが一緒に動いていき、違うアイコンが画面上にやってきた。

「すごーい!」驚嘆の声をあげながら画面をペタペタさわるナノ。俺はナノに頼まれていくつかの「カガク」を披露していた。

 この世界にも魔術なる物があるらしい。それはこの世界の人なら規模は違えど誰でも扱えるらしい。でも日常生活が便利になる様な魔術はあまり無いのだという。   

 ふと周りを見渡すとウルフがいなかった。そしてドアがさっきよりあいていた。

 不思議に思い俺は外へでてみた。真っ暗でうっすらとしか周りが見えない。

 少しすると目が闇に慣れてきた。そして見えてきたのは草に倒れているウルフとしゃがみ込んでウルフに何かしている白衣姿の少女だった。

 程なくして少女は立ち上がった。少女は銀色に反射する注射器を手にしていた。中には何か赤っぽい液体が入っていた。それってウルフの血…?

 ウルフを助けなきゃ。

 俺は足音たてずに走り出し、ウルフとの距離2、3メートルまでたどり着いた。

 少女はまだ気づいていない。ウルフの目はぱっちり開いていて、息もしているのに全く動かない。ウルフを引き寄せるべくさらに近づいた。

 するとバリバリっと何かを踏んでしまった。

「うわっ!」驚いた拍子に後ろ向きにずっこけてしまった。

 少女が俺に気づき視線をあわせてきた。青がかったロングの髪の毛がはらりと舞う。とても整った顔立ちをしていて、こんな時にも関わらずきれいだ、と思ってしまった。

「動かないで」

 少女は冷ややかに言い放った。それがカチンときた。

「何で?別に動くのなんて人の勝手じゃん。何で指図されなきゃいけないんだよ!」

 少女が歩み寄ってきた。目と鼻の先に少女はいる

「動かないで」

「だから俺はお前の指z…」

 俺がしゃべり終わる前に少女の手が俺の太股へと動いていた。

 グサッ

 痛い。何が起きたんだ?

 太股をみると空になった注射器が刺さっていた。

 「おい、お前…!」

 そこまでいうと俺の体に異変が起きた。アゴが動かなくなり、血管を電気ショックが駆け抜ける。目が一点を向いたまま固まり、体中が痙攣し始める。なすすべ無く仰向けに倒れてしまった。

 少女の生気のない目が俺を見つめる。

「私はニナ。あなたはここの人じゃないようね」

 なぜそれを?

 少女改めニナの手元では赤と黒の液体が混ぜられている。

「だめだよぉ違う世界に来ちゃ」ニナは赤黒くなった液体を注射器に吸い取った。

 そして動けない俺の体に馬乗りになる。ニナは顔を近づけてきた。

「お仕置き…しなきゃねえ」

 吐息が俺の顔にかかる。

 ニナは俺の腕を取り上げ注射器をそえる。

 俺の肌は抵抗する。しかし注射器の針は肌を貫通してしまった。と、同時にナノの声がした。

「達也さん!」

 しかし注射器のピストンは押し切られシリンダーは空だった。少女は俺の体から降りると森へと去っていった。

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