俺は考える
空から降ってくる水はもう……。やみ始めていた。
巣穴はほとんど水につかっていた。
水に浮いた先ほどまで家族だった肉片を狙ってカラスがうろついている。
子オオカミには何でみんな動いてくれないのかわからなかった。何も悪いことはしてないのに……。
姉貴の鼻をなめる。いつもだったら姉貴がおいかぶさってきてじゃれあいとなるのだが、今日は何もしてくれない。
子オオカミは雨が降る前チョウチョウを追いかけて遊んでいた。家族は全員寝てしまってたので暇だったのだ。夢中で追いかけていたため、気がつくと巣穴から遠いところへ来てしまっていた。
そこはまだ子オオカミが見たことのない開けた場所だった。何に使うかはわからないがとても巨大で鳥の様な形をした物もあった。それもまた子オオカミが見たことのない素材で作られていた。
姉貴達に自慢してやろう。
そう思って帰ろうとした時に雨は降り始めたのだった。
それはすぐにひどい大雨になった。辺りは水浸しになった。少し地面が削れている所では激しい濁流のようだった。
子オオカミは顔をあげる。雨も止み、夜は明け始めていた。
子オオカミは顔を下げる。肉の塊がそこにはあった。それに背を向け元来た道を歩いていった。
★
今日は心地よい寝起きである。ただベットさえあればなぁ……。まぁ仕方ないか。
昨日食べた弁当の残りもんを一気にかき込みリンゴジュースで流し込む。
さぁ、今日は飛行機周辺探索だ。俺は飛行機から降りた。久々の外の空気だ。
俺は考える。
もし救助の人達が何らかの理由で来れない場合、自分一人の力でより多くの日数を生き抜かなければならない。そのとき重要なのは水と食料、生活場所だろう。
生活場所は間に合っている。問題なのは水と食料だろう。池か川があれば魚もいるだろうし水がある。
もし森に池か川があれば……。
そんな期待を抱きながら俺は森に入っていった。
◆
誰かが階段を上がってくる音を聞いて達也との電話を切った隆太は、ドアから少し離れていつでも戦えるような体勢をとる。
足音がドアの前で止まる。
唾を飲み込む。
ドアノブがまわる。
拳に力が入る。
ドアが開く。
全身に力が入り…抜けていった。
そこにはボサボサ頭で隈がある死んだような目にメガネをつけた男が白衣姿で立っていた。
彼は言った。
「やぁ」
★
「あった…!」
川が、あった……!
飛行機から徒歩10分。見晴らし最低日当たり微量の物件場所としては最悪な場所に川が流れていたのだ。しかも魚もたくさんいる。
俺が川を見つめていると向こうの方で何かが動く音がした。おそるおそる近づいてみると、そこには鳥がいた。
俺は石を静かに、かつなるべく多くかき集めた。そして2、3個の石を手に掴んで鳥に狙いを定め…
おもいっきり投げた。すぐに次の石を投げる。
一心不乱に投げてゆく。
無我夢中で投げてゆく。
全ての石を投げ終わり鳥がいた所へ行った。
鳥は泡をふいて気絶していた。額の所々から血が滲み出ている。
やった! 大成功だ! まさかうまくいくなんて思ってなかったけどね。やっと俺にツキが来たのかもしれない!
俺は鳥の首を掴んだ。
そして横に思い切りまげる。
いやな音とともに鳥の首は不自然な角度に折れ曲がった。
鳥だけでなく落ち葉や木の枝も拾う。かばんの中に入れてあったライターの付き具合を確認する。
ボウッ、という音とともに火が付きほのかな暖かさがした。よし、ちゃんついた。今日はやきとりだ!
7月6日 誤字訂正