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変転の夜

今回も長いです。

web小説としては致命的な長さながら、紙媒体の一章としては短い、

そんな中途半端な長さです。


今回はこの話唯一の戦闘シーンが入ってます。

楓の家で晩御飯を食べ、帰る頃には太陽は山の影に隠れてしまっていた。

「また、いつでもいらっしゃい

うちは一人増えても全然問題ないから。」

玄関まで見送りに出てきた楓の母の言葉にレイは笑顔でうなずく。

「ありがとうございます、またごちそうになりに来ますね。」

玄関に灯されたランプが、柔らかな明かりを周囲に広げている、

その外側では夜の闇が勢力を広げ、辺りは薄暗くなり始めていた。

「だいぶ暗くなったね、明かりはあるの?」

一緒に外に出てきた楓が辺りを見回してレイにたずねる。

「だいじょうぶ、ライトを持ってきたから。」

レイが肩から掛けたカバンの中から少し大きめの手回し式懐中電灯を取り出す。

「やっぱりそれか、

それ、明るいけどうるさいんだよね。」

楓の感想にレイも頷く。

「それに、手も疲れるし、

けどランプよりは明るいんだよね。」

「昔は電池式のもあったんだけど、今じゃあ高級品だからね。」

楓の母も昔を懐かしむように言葉をつなげる。

「けど、ずいぶんと暗くなってきたわね、

明かりがあるとはいえ夜道を女の子一人では、少し心配ね。」

暗く影に沈み山を見ながら、楓の母は心配そうにつぶやく。

「大丈夫よ、私が送っていくから。」

楓の言葉に母親はあきれ顔になる。

「あんた、帰りはどうするんだい?」

母親の言葉に楓は当然のように応える。

「大丈夫よ、私もライトを持っていくから。」

「楓、それ何も解決してない。」

楓の言葉に隣でレイも苦笑する。

「大丈夫ですよ、いつもの道ですし、そんなに遠くないんですから一人で帰れます。」

「けど、何があるか分からないからね。」

そう言って楓の母は家の中に向かい声をかける。

「葵、ちょっと。」

声をかけるとすぐに、葵が出て来た。

出てきた兄の服装に楓は呆れ顔になる。

どう見ても葵の服装は外出着だ、今まで居間でくつろいでいた格好では無い。

それに、出て来るまでが早すぎる。

「何、母さん?」

白々しく言う葵に母も少し苦笑を浮かべて告げる。

「暗くなったし、レイちゃんを家まで送って行ってあげて。」

「分かったよ。」

葵はすぐに頷き、そのまま出てくる。

「根性なし、」

葵が横を通り過ぎる時、楓は兄にだけ聞こえる声でつぶやく。

葵は、一瞬表情を引きつらせるが妹の言葉は聞かなかったことにする。

「大丈夫ですよ、私一人で。」

何とか遠慮しようとするレイの様子に今度は別の意味でため息をつき楓が口を開く。

「まぁ、キメラの件もあるし、こんなのでもいないよりはましだと思うよ、

それに、私が帰るときの問題もこれで解決だし。」

そう言って、楓はレイの手から懐中電灯を取ると兄の手の中に収める。

「何よりも、葵がいれば自分で回す必要がないし。」

そう言って、楓は先に立って歩き始める。

「ちょっと、楓、」

慌ててレイが後を追う、その後ろを葵がついて行く。

「葵、ライト。」

暗がりに出た楓の言葉に、葵は苦笑しながらも懐中電灯のハンドルを回し始める。

発電機独特のモーター音と共に新しい光源が三人の足元を照らす。

「すいません、葵さん。」

レイの言葉に、葵は慌てて応える。

「いや、ほら、その、

俺は大丈夫だからさ」

笑ってごまかす兄の様子に楓は前を歩きながらもう一度大きなため息をつく。

「気にすることないって、葵は好きでやってるんだから、」

言いながら、楓も速度を落として二人と並ぶ。

「一応、自警団員だし、キメラはともかく熊ぐらいなら役に立つよ。」

「いや、熊もさすがに無理だな、野犬ぐらいまでなら何とか、」

正直に答える兄に楓は

「俺に任せとけ、ぐらい言いなさいよ。」

呆れて返す。

「何も出ないのが一番ですけどね。」

いつもと変わらない調子のレイの言葉に、

「まぁ、それが一番だけどね。」

楓も頷く。

「そういえば、山向こうのキメラってどんな奴だったの?」

唐突な妹の言葉に葵は思わず手を止める。

「ちょっと、明かり消さないでよ。」

妹の言葉に慌ててハンドルを回しながら、不思議そうに首をかしげる。

「何で、お前が知ってるんだ、その話?

まだ、自警団と役員くらいしか知らない話だぞ。」

兄の言葉に楓は呆れ顔で返す。

「あれだけ大声で父さんと話してれば嫌でも聞こえるって。

で、どんなのだったの?」

楓の言葉に葵は思い当たる節があるらしく苦々しげな表情になる。

「まぁ、もう問題は無いってことだからな、」

そう前置きして葵が話し始める。

「確か、馬ほどもある犬だったって話だ、」

「大きいですね、」

葵の話にレイが驚きの声を上げる。

「レイなんか、一口で食べられそうね。」

「赤ずきんじゃないんだから。」

楓の言葉に、レイが苦笑しながら返す。

「人は襲わなかったらしいぞ、被害にあったのは家畜と畑だけだって。」

「それはそれで大変ですね。」

葵の言葉に、さすがにレイも楓も冗談を言う気になれず眉をひそめる。

「まぁ、それほど家畜の被害は大きくなかったし、

襲われた畑も収穫がほとんど終わっていて影響は無いそうだ。」

葵の説明に、二人とも少し安心したように表情を緩める。

「けど、そうするとなんだか間抜けだね」

「まぁ、宇宙人のすることだしな、知らなかったんだろ。」

楓の言葉に葵が応じる。

「宇宙人は畑とか作らないのかな?」

「そういえば何食べるんだろうね、」

そんな会話をしながら歩くうちに山際の細い道に入る。

この道は片側は田んぼになって開けているが、もう一方が木の生い茂る林になっていて道に影を落としており一際暗くなっている。

「ここってちょっと不気味だよね、何か出そうで。」

楓が少し気味悪そうに辺りを見回す、

「何もでりゃしないよ。」

そういう葵の言葉も少し緊張しているようだ。

「私はここの木の音、結構好きなんだけど」

「昼間ならね、」

レイの言葉に楓は同意しかねるように返す。

「そうかな、夜の方がはっきり聞こえるんだよ。」

そう言って風が起こす木々の葉擦れの音にレイは耳を澄ます。

ざわざわと揺れる木々の音は耳に心地よい。

その音の中に微かにいつもと違う音が混じっている気がする。

「何か聞こえる、」

つぶやき、レイは辺りを見回す。

「ちょっと、レイ、脅かさないでよ。」

楓の言葉を無視して、レイは足を止めて辺りを見回す。

「葵さん、明かり消して」

いぶかしげに辺りを照らしていた葵もレイの言葉に手を止める。

モーターの音が消え辺りが静かになる。

「何なのよ、」

楓は葵に体を寄せ不安そうにあたりを見回す。

林の中から音がしていた、風の起こす葉擦れとは違う何か大きなものが動く音、

葵は、レイと楓をかばうように二人の前に回る。

「とりあえず、そっと進もう。」

林の方を向いたまま、葵がレイと楓を促す。

三人固まったままゆっくりと暗がりの中を歩き始める。

幸い、空に雲は無く足元が見える程度には明るい。

「何なのよ、」

楓は音のした方から視線を逸らせないまま震える声をだす。

「分からない、ただの狸かもしれない。」

そういう葵の声も緊張に固く震えていた。

林の中から感じる何かの存在感は、三人の知る何かとは根本的に異なっていた。

やがて、林の闇に赤い光が三つ、三角に浮かび上がる。

「何あれ、」

じりじりと後じさりながら楓が強張った声を出す。

その光は音と共にゆっくりと林の中を近づいてくる。

恐怖が三人の視線をその光にくぎ付けにする。

光はやがて影の中からその体を現す。

巨大な黒い犬だった。

だが、それは犬ではありえなかった。

馬ほどもある巨体、縦に切れた額の三つめの目、自然の生き物ではない。

三つの目が赤い光を放ち闇に不気味に浮かび上がる。

動けないままでいる三人の前に怪物は影からその全体を表した。

黒い毛並みはまるで闇の様で夜との境が曖昧に霞んで見える。

獣のような息遣いも、唸り声もない怪物の非生物的な雰囲気がより不気味さを増していた。

「ひっ、」

楓はあふれ出す悲鳴を必死に喉の奥に押し込める。

怪物はゆっくりと視線をめぐらすと、三人の方に顔を向けた。

怪物の視線が三人を捉える。

ゆっくりと体の向きを変えると怪物は三人の方へと足を踏み出す。

恐怖に押されるように、三人の体が後ろに下がる。

怪物は、走ることなくゆっくりと歩を進める。

「ケガしてる…」

レイが呟くように口にする。

よく見ると、怪物は足を引きずっている。

「走れないのか?」

二人をかばうように立ったまま葵が呟く。

背後にかばう二人の少女に一瞬視線を向け、葵は決意したように口を開く。

「二人とも、俺が合図したら全力で走って家に逃げ込め。」

声はまだ震えていたが、その言葉はしっかりとしていた。

「分かった、うちがここからだと一番近いから。」

言いながら、レイは背後を振り返る、今はまだ林の影に隠れているがすぐそこに家がある。

葵はゆっくりと足元に落ちていた木切れを手にする。

その動きに警戒するように怪物が動きを止めた。

緊迫した空気の中にレイは何か懐かしい気配が混ざるのを感じた、

混乱した心が少し落ち着く気がする。

気配の元を求めてレイは視線をめぐらせるが、

「いくぞ、」

葵の押し殺した小さな声に意識を引きもどされる。

気配の事を頭から追い払い、視線を向けた葵に頷いて応える。

葵も小さく頷くと、一度息を吸い込む。

「走れ!」

声と同時に葵は手にしていた棒切れを投げつける。

怪物はとっさにそれを避けようとしたが、ケガのせいかバランスを崩してその場に倒れる。

レイと葵は同時に駆けだす。

だが、楓は怪物を見つめたまま動けなかった。

恐怖にすくんだ心が思考と体の自由を縛っている。

「楓!」

レイの叫び声に楓が振り返る、

慌てて走り出そうとするが、足がもつれてバランスを崩す。

倒れた怪物はすでに起き上がっていた。

駆け戻った二人が楓を助け起こし駆けだすのを追いかけるように、怪物も重い足音を立てて飛び出す。

葵は咄嗟にレイと妹を田んぼの方に向かって突き飛ばし、自身は前に転がる。

間一髪、とびかかってきた怪物の爪は三人をとらえることはなかった。

だが、怪物は葵の目の前に立っていた。

怪物の赤く光る眼が葵を射すくめる。

「葵さん!」

レイが声をかけるが、葵はそちらを見ることすらできない。

怪物が咢を開く、本当にレイを一飲みにできそうな大きな口の奥には、やけに白く輝く作り物のような鋭い牙が並んでいた。

目を逸らすこともできず、葵はその口を見つめる。

明かりが射し、赤い口の奥まではっきりと見えた。

「っらぁ!」

突然の気合の声と共に光が弾ける。

三人の目の前で巨大な怪物が弾き飛ばされる。

葵の前にさっきまでの怪物の咢の代わりに長身の女性の背中があった。

葵が驚きに口を開けないでいると、女性が振り返り、声をかける。

「あんた、立てるかい?」

健康的な褐色の肌の女性の顔ははっきりと見えた。

その女性の周囲だけがまるで太陽の射す昼間のように明るい。

「アメリアさん?」

見覚えのある女性の顔にレイが驚きの声を上げる。

アメリアもレイの顔に気が付く。

「ああ、ちょうど良かった、あんたのとこへ行くとこだったんだよ。」

レイの目に笑顔で応えるアメリアの後ろで怪物が起き上るのが見えた。

「アメリアさん、後ろ!」

レイの声にアメリアが振り返るが、すでに目前に怪物の爪が迫っていた。

だが、怪物の爪はアメリアの体に届くことなく再び弾かれる。

飛来した矢が怪物の額の目を貫きその巨体を弾き飛ばしたのだ。

矢の飛来した方から声がした。

「あなたは、大雑把すぎです。」

視線を向けると薄明かりの中、アメリアの太陽のような明かりとは対照的な、

月光をまとったかのような静かな輝きに包まれた銀髪の女性が弓を手に立っていた。

「そう言うなって、何とかなったんだから。」

後から現れた女性の抗議の声を気にした様子もなくアメリアは軽い口調で言葉を返す。

「何とかならなかったらどうするつもりだったんですか?」

ため息をつきながら女性が近づいてくる、

「怪我はないですか?」

まだ地面に転がったままだった葵に女性は声をかけ手を貸し立ち上がらせる。

「あんたも、大丈夫かい、」

道から一段低い草むらの中に座り込んだままのレイにアメリアが声をかける。

頷こうとして、レイは何かを感じアメリアの背後、弾き飛ばされた怪物の方に視線を向ける。

さっき感じたのと同じ気配。

林の影になり、はっきりとは見えないが、何か大きな物の輪郭が見える。

その影に恐怖はあったが、それ以外の気配がそこから感じられた。

じっと見ていると、影の一部が動いているのが分かる。

動いている部分は怪物の影を離れ人の形をとると、こちらに向かってくる。

「ニア?」

顔も見えないその影が双子の兄、ニアだとレイにははっきりと感じられた。

レイの言葉にアメリアも背後を振り返る。

「終わってたか?」

歩み寄る影にアメリアが問いかける。

「問題ないと思う。」

頷きながら影の中から歩み出た人物はレイと同じ顔をしていた。

「ニア!」

レイは慌てて立ち上がり駆け寄ろうとするが、足に力が入らずバランスを崩し倒れそうになる。

「大丈夫か?」

地面に倒れる前にレイを受け止めたのは、近くにいたアメリアではなく、

離れたところに立っていたニアだった。

「ありがと、」

礼を言い顔を上げると間近にニアの顔があった、

「ニア?」

少し男らしくなった気はするが、その顔はレイのよく知ったニアの顔、のはずだった。

だが、一瞬だけ違和感があった、ニアの目の色が黒く見えた。

もう一度見直した時にはレイと同じ緑だったが、一瞬だけ確かにニアの瞳がレイには黒く見えた。

「ニア、その眼、」

レイの言葉を遮るようにニアは顔を上げると楓に声をかける。

「楓も、怪我はない?」

ニアの言葉に、レイも慌てて楓の方を振り返る。

楓は、レイのすぐ横で座り込んだままだった。

「大丈夫、」

応えた声はまだ震えている。

「ねぇ、ホントにニアなの?」

青白い顔を上げ楓はニアにたずねる。

その声は不安げに揺れていた。

「大丈夫、本物だよ。」

ニアは楓を落ち着けるようにゆっくりと声をかける。

楓の視線がニアの顔からその後ろへと動く。

ニアはさりげなくその視線を遮り、背後の影を楓の視線から隠す。

「アレは僕らが退治した、もう安全だよ。」

「ホントに、もう大丈夫なの?」

楓が震える声でもう一度たずねる。

「もう大丈夫、僕らが保証する。」

ニアはそう言ってゆっくりと頷いて見せる。

緊張の糸が切れたかのように楓の体がくずおれる。

ニアは慌てて手を伸ばして楓の体も支える。

「楓?」

楓は感情の堰が切れたかのように、支えたニアの腕にすがって泣いていた。

「私は大丈夫だから、」

ニアにそう言って、レイは体を離す。

「怪我は?」

アメリアに声をかけられて改めてレイは自分の体を確認する

所々に擦り傷があるが他には目立つ傷は無かった。

「大丈夫です、ありがとうございます。

アメリアさんは?」

レイの言葉にアメリアも頷く。

「私は問題ないよ。

そっちの男の子は?」

葵の方に声をかける。

「ああ、はい、大丈夫です。」

妙に裏返った声で葵が応える。

「リタは?」

アメリアがもう一人の銀髪の女性に声をかける。

ニアの方をじっと見ていた女性が振り返る。

「えぇ何も問題ありませんわ。」

リタもなぜか少し慌てた様子で応える。

「ニア、その子は?」

アメリアの声に楓をなだめていたニアが顔を上げる。

「少し落ち着いた、

とりあえず、家まで送ってくるよ。」

楓を立たせ、道の上につれて上がりながらニアが応える

「いや、俺が連れて帰るよ。」

道に上がった二人に駆け寄りながら葵が慌てて声をかける。

葵の声に楓は顔を上げる。

楓がそっとニアの手から離れる。

「楓、大丈夫なの?」

楓のそばによりレイが声をかける。

「さっきよりは、ね。」

まだ弱々しいながらも青白い顔に笑顔を浮かべて見せ、楓が応える。

「このまま帰るより、うちで少し休んでからの方が良いんじゃない?」

レイの提案に楓は首を振る。

「大丈夫よ、お母さんたちが心配するし、やっぱり帰るわ。」

その声にもやはりまだ力がない。

まだ危うげな妹の様子に葵が声をかける

「母さんたちには俺が伝えておくから、今日はレイの家で休ませてもらえ。

そんな様子じゃ、家まで連れて帰るのが大変だ。」

楓が何か言うよりも先にニアが同意の声を上げる

「そうだな、うちの方が近いしその方が良いかもしれない。

リタ、レイと楓をうちまで連れて行ってもらえるか?

僕は葵さんと一緒に行って事情を説明するよ。」

ニアの言葉にレイは違和感を感じた。

まるでニアが家に帰りたく無いように感じられる。

「ニア、」

レイが言葉を発するより先にアメリアがニアに声をかける。

「ニア、あんたが行く方がその子達も安心できるだろ、

それに、あんたが行けば細かい説明も省けるしね、二人はあんたが送って行きな。

リタはそっちの、葵さんだっけ、を家まで送って事情を説明してきてくれ。」

「分かりましたわ、」

アメリアの言葉にリタはすぐに頷くが、

「ちょっと、アメリアさん、」

ニアは納得いかない様子で声をあげる、

「早くその子を休ませてやりな。」

アメリアの言葉にニアはまだ頼りない様子の楓を見る。

ニアは一瞬だけ少し迷うようなそぶりを見せたが、

一度息を吐き出し頷く。

「楓、歩ける?」

ニアたちのやり取りを聞きながらレイは楓にたずねる。

「だいじょうぶ、怪我したわけじゃないし。」

まだいつもの元気はないものの楓もだいぶ落ち着いた様子で応える。

「そっか、とりあえず行こうか。」

二人そろって歩き出し、そこにニアが明かりを持って並ぶ。

懐中電灯の明かりに照らされた夜道にレイは慌てて振り返る。

背後ではアメリアの周りだけが昼のように明るくなっている。

「アメリアさんの覚醒時特性だよ。」

レイの視線に気が付きニアが説明する。

「人によって様々だけど覚醒させた時に何らかの現象が起こるんだ。」

ニアの言葉に視線を戻しレイがたずねる。

「ニアも明るくなるの?」

「いや、僕はアメリアさんみたいに光ったりはしない。」

苦笑しながらニアは応える。

「ニアも能力者なんでしょ。」

レイの反対側から楓がたずねる。

「まぁ、一応ね、」

ニアは曖昧に頷く。

「ニアはどんなふうになるの?」

レイの言葉にニアは曖昧な笑顔を浮かべた。

「僕のはそんなに大したものじゃないよ。

それよりも、もう家が…」

ニアの言葉が途切れる。

明かりのついていない家が見えた。

「そうか、」

ニアは隣を歩くレイにも聞こえないような小さな声でつぶやく。

続く言葉は音になることはなかった。


句読点の位置、改行、と見やすい一文の長さと、それに合わせた表現、

難しいですね。

理想と現実は遠いです。


今回、文内部でキメラと怪物、楓と妹、葵と兄、状況に応じて地の文で意図的に書き換えてます。

統一した方が見やすいのか、難しいとこですね。


次話ではレイが悩む予定です。

残り二話で完結の予定となっています。

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