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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
第一幕~序章

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ep.8 夜の集会と輝く猫

はじめまして。 異世界転生ものを書いてみたくて、思い切って投稿してみました。 魔法が使えるようになる話ですが、いきなり強くなったりはしません。 ちょっとずつ、言葉を覚えて、魔法を学んでいく感じのゆるい成長物語です。 初心者ですが、楽しんでもらえたらうれしいです!

夜。 町の灯りがまばらになって、風の音が少しだけ強くなる頃。 空は雲ひとつなく、月が静かに浮かんでいた。 その光は冷たくもなく、温かくもなく、ただ“見守っている”ようだった。


眠れなかった。 昼間の“冷たい響き”が、まだ胸の奥に残っていたからかもしれない。 それは痛みではなく、でも心を落ち着かせるものでもなく、 何かが“動き出した”ような感覚だった。


ふと、窓の外に気配を感じた。 風が頬を撫で、どこかで鈴の音が鳴ったような気がした。 音は一瞬で消えたけれど、耳の奥に残る“余韻”だけが、静かに響いていた。


気づけば、外に出ていた。 足が自然と動いて、町の外れへ向かっていた。 石畳の道は、昼間よりも静かで、風の通り道になっていた。 屋根の影が長く伸びていて、まるで誰かがそこに座っているようにも見えた。


その先に、開けた空き地があった。 昼間は通り過ぎただけの場所。 でも今は、空気が違っていた。


そこに、猫たちがいた。 「とう……」 思わず数えてしまった。十。思ったより、たくさんいる。


みんな静かに座っていて、まるで“何か”を待っているようだった。 鳴き声もなく、動きもなく、ただ風と月の下でじっとしていた。 その姿は、どこか儀式のようで、でも誰も指示しているわけではなかった。


そのときだった。 ふと、呼ばれたような気がした。 声ではない。でも、確かに“こちら”と感じた。 胸の奥が、少しだけ震えた。


視線を向けると―― その中の一匹が、ほんのりと輝いて見えた。 光っているわけじゃない。 でも、月明かりの中で、その猫だけが“輪郭を持っている”ように見えた。


毛並みは黒く、でも深い藍のような光をまとっていた。 目は閉じていたけれど、確かに“見られている”感覚があった。 その猫が、ゆっくりと立ち上がる。 足音はなかった。 でも、空気が少しだけ揺れた。


そして、こちらを見た。 目が合った瞬間、胸の奥に“響き”が広がった。 それは言葉ではなく、意味でもなく、ただ“感じる”もの。 昼間の祠で感じたものに、少しだけ似ていた。


【素養《Oralis理解》が成長しました】


その言葉が、頭の中に浮かんだわけではない。 でも、確かに“何かが進んだ”感覚があった。 根が少し伸びたような、 水が静かに染み込んでいくような、 そんな成長だった。


猫は、しばらく俺を見つめていた。 そして、何も言わずに、また座った。 他の猫たちも、それに合わせるように、静かに目を閉じた。


風が吹いた。 鈴の音が、遠くで鳴った。 それは、誰かが“扉を開けた”ような音だった。


俺は、その場に立ち尽くしていた。 でも、胸の奥には、確かに“何か”が残っていた。 それは、猫神様がそっと通り過ぎたような、そんな気配だった。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました! 感想やアドバイスなど、いただけたらとても励みになります。 これからも、のんびり続けていきますので、よろしくお願いします!

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