ep.184 波の音、旅立ちの背中
ep.174「波の音、旅立ちの背中」
(夜明け・再出発)
東の空が、わずかに白み始めていた。 森の木々が静かに揺れ、鳥の声がひとつ、またひとつと響き始める。
旅団の若手たちは、眠気をこすりながら荷をまとめていた。 焚き火の跡はすでに冷え、朝露が草を濡らしている。
「……よし、準備完了」 セシルが荷を背負い、周囲を見渡す。
ルミナはすでに立ち上がり、手に小さな帳面のようなものを持っていた。 表紙には、銀の紋章――北方聖堂の印。
彼女は無言で、旅団の動きを見つめ、 その帳面にさらさらと何かを書きつけていた。
「……記録、開始」 誰に言うでもなく、そうつぶやく。
氷雨はすでに前方の道を確認し、静かにうなずいた。
「進路、問題なし」
ルミナは帳面を閉じ、旅団に背を向けた。
「では、出発します。……遅れないでください」
その背中に、誰も返事はしなかった。 けれど、ラディは少しだけ気を引き締めて歩き出し、 セシルとリンダも、静かにその後を追った。
朝の光が、森の木々を透かして差し込む。 その中を、旅団と“氷の監視者”たちは、無言のまま進んでいった。




