ep.181 秩序の観察
ep.174「波の音、旅立ちの背中」
(道中・静かな緊張)
港を離れ、石畳の坂道を登る。 ルミナは一言も発さず、一定の速度で歩き続けていた。 その背中はまるで、風も寄せつけない氷壁のようだった。
氷雨はそのすぐ後ろを歩き、周囲に目を配っている。 旅団の若手たちは、少し距離を取ってその後ろをついていった。
「……ねえ、これ、ずっとこの感じなのかな」 ラディが小声でつぶやく。
「たぶん、そうだろうね」 セシルが肩をすくめる。
「“監視”って言われると、なんか……落ち着かないね」 リンダが不安げに言うと、ラディがうなずいた。
「ていうか、あの人、ほんとに人間? 氷の精霊とかじゃないの?」
「しっ」 セシルが小さく制した。 そのときだった。
「……無駄口は慎んでください」 ルミナが、歩みを止めずに言った。 声は静かだったが、空気が一瞬で凍りつく。
「あなたたちは“秩序の観察対象”です。 感情や雑談は、記録に影響を与えます。……不要です」
誰も、言い返せなかった。
ただ、氷雨だけがちらりと旅団を振り返り、 無言のまま、再び前を向いた。




