ep.178 踏み込みを意識して!
ep.173「網と灯と、夕餉の支度」
(ヒルダと子どもたちの場面)
港から少し離れた広場では、木剣を手にした子どもたちが、元気に駆け回っていた。 その中心に立つのは、赤い髪を後ろで束ねた女性――ヒルダだった。
「はい、そこ! 足元が甘い! 剣は振る前に、まず踏み込みを意識して!」
「はーい、ヒルダ姉ちゃん!」
子どもたちの声が、夕暮れの空に溶けていく。 ヒルダは笑いながらも、動きは鋭く、教え方は本格的だった。
その様子を、ラディたちが少し離れた場所から見ていた。 ラディはまだ魚の匂いが染みついた袖を嗅いで、顔をしかめる。
「うわ、俺、めっちゃ魚くさい……」
「そりゃあ、あれだけ網に絡まってたらね」 セシルが笑うと、リンダもくすっと笑った。
そのとき、子どもたちの一人がラディに気づいて、駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん、魚くさいー!」 「うっ……やっぱり!?」
「でも、すごいね! 漁師さんと一緒に海に出たんでしょ? かっこいい!」
ラディは一瞬たじろいだが、すぐに胸を張った。
「ま、まあな! L+の魚も引き上げたし!」
「えー! パン24個分のやつ!?」
「そうそう、それそれ!」
子どもたちが「すごーい!」と目を輝かせる。 その様子を見て、ヒルダがにやりと笑った。
「人気者じゃん、ラディ。……でも、明日も行くんでしょ? 筋肉痛、覚悟しときなよ」
「うっ……」




