ep.176 パン24個分!?
船が沖へ出る頃には、空はすっかり白み始めていた。 波は穏やかで、風もよく通る。波留が「今日は当たりかもしれませんね」とつぶやくと、カヤが無言でうなずいた。
「よし、網を下ろします。ラディさん、こちらを持ってください」 「はいっ!」
ラディは張り切って網の端を持ち上げたが、思った以上に重く、よろけてしまう。
「うおっ……!? な、なんでこんな重いんですかこれ!」
「水を含んでいますからね。無理に引かず、重さを逃がすように――そう、そうです」 波留の声は穏やかだったが、指示は的確だった。
セシルはすでに反対側の網を支え、波の動きに合わせて力を加減している。 リンダは船底に滑り込んだ魚を手際よく拾い上げ、木箱に分けていた。
カヤは言葉を発さないまま、ラディの動きを見て、網の角度を調整する。 その手つきは無駄がなく、まるで海と会話しているかのようだった。
「……すごいな」 ラディが思わずつぶやく。 カヤはちらりと彼を見たが、何も言わず、次の網の準備に取りかかった。
やがて、網が引き上げられる。 中には、銀色の魚が数匹――Mサイズが三匹、そして、ひときわ大きなLサイズの魚が一尾。
「おおっ、でかい!」 「Lサイズですね。これは、6NkQ……いえ、これは“銀斑”か。L+です。24NkQの価値があります」 波留が魚の鱗を指でなぞりながら言った。
「パン24個分……!」 ラディが目を丸くする。 セシルが苦笑しながら、「換算そこ?」とつぶやいた。




