ep.170 第七幕:夜の祈り
灯がすべてともされた広場は、まるで星空を地上に映したようだった。 人々は言葉を交わすことなく、ただその光に見入っていた。 そのとき──
しん……と、空気が変わる。
どこからともなく、千夜が現れた。 深い藍色の装束に、月の紋がひとつ。 その姿は、まるで夜そのものが人の形をとったかのようだった。
千夜は、ゆっくりと広場を歩く。 その足元にある灯が、彼女の通り道に合わせて、ひとつ、またひとつと消えていく。
──ふっ ──ふっ
音もなく、光が静かに消えていくたび、 人々の胸の奥に、なにかがそっと染み込んでいくようだった。
「今日という日が、終わりを迎えます」 千夜の声は、夜風のようにやさしく、そして確かだった。
「でも、それは終わりではありません。 灯が消えるのは、また新しい光を迎えるため。 闇は、次の朝を育てる場所──」
彼女は最後の灯の前で立ち止まり、そっと手をかざす。 その灯がふわりと揺れ、やがて静かに消えた。
──しん……とした静寂。
けれどその中に、確かなあたたかさがあった。 人々は、誰ともなく手を合わせ、目を閉じる。
そして、千夜が最後にひとこと、祈るように言った。
「また、ここで会いましょう。 光と、風と、音と、結びの中で──」
その言葉とともに、夜空にひとすじの流れ星が走った。




