ep.169 第六幕:灯の儀
美琴の最後の音が空に溶けると、広場はふたたび静まり返った。 けれどその静けさは、今や「満ち足りた沈黙」だった。 誰もが、心の奥に小さな灯をともされたような、そんな表情をしていた。
そのとき、舞台の奥から、ふたりの影が現れる。
雪花と雨音。 白と水色のメイド服に身を包み、手にはそれぞれ、灯をともすための器を抱えている。
雪花の器には、氷のように透き通った灯。 雨音の器には、水面に浮かぶような、ゆらゆらと揺れる灯。
ふたりは無言のまま、広場の中央に進み出る。 そして、そっと膝をつき、灯を地面に置いた。
その瞬間──
しゃらん……
どこからともなく風音の鈴が鳴り、 灯が、ひとつ、またひとつと、広場のあちこちでともり始めた。
「これは、あなたの歩んできた日々の灯」 雪花が、静かに語る。
「そして、これから歩む道を照らす光」 雨音が、やさしく続ける。
灯は、まるで生きているかのように、 人々の足元に沿って、ゆっくりと広がっていく。 その数、二千。
広場の隅々まで、やわらかな光が満ちていく。 まるで、夜空に星が降りてきたかのように。
子どもたちはその灯を追いかけ、大人たちはそっと手を合わせる。 誰もが、その光の中に、自分だけの記憶や願いを見つけていた。
そして、雪花と雨音は顔を見合わせ、ふっと微笑む。
「さあ、あとは──」
「夜の帳を、迎えるだけですね」




