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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
4章~巫女の祝祭~

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ep.168 第五幕:響きの儀

踊り子たちの舞が終わると、広場にふたたび静けさが訪れた。  けれどそれは、終わりの静けさではない。  まるで、何かが始まる前の、深い息づかいのような──そんな静寂だった。


その中に、ひとつの音が響く。


──りん……りん……


澄んだ鈴の音。  それは、空気の奥にまで染みわたるような、やさしくも芯のある響きだった。


音の方へ視線を向けると、そこに立っていたのは、美琴みこと。  白銀の装束に、淡い紫の帯を結び、手には小さな鈴と、細身の琴を抱えている。


彼女は一礼し、静かに座すと、琴の弦にそっと指を添えた。  そして──


ぽろん。


ひとつの音が、広場に広がる。  それはまるで、空に浮かぶ光の粒をひとつずつ撫でていくような、  やさしく、あたたかく、そしてどこか懐かしい音色だった。


「この音は、あなたの心の奥にある、忘れかけた願いを呼び覚ますもの──」  美琴の声が、音とともに流れる。


「どうか、思い出してください。   あなたが最初に笑った日を。   誰かと手をつないで、心がほどけた瞬間を──」


琴の音が重なり、鈴の音が舞い、  踊り子たちが再び舞台に戻ってくる。  今度は、美琴の音に合わせて、ゆったりと、まるで夢の中を歩くように舞い始めた。


音と舞が重なり、空間がひとつの「響き」となる。  観客の誰もが、言葉を忘れ、ただその音に身を委ねていた。


そして、美琴が最後の音を奏でたとき──  広場の灯が、いっせいにふわりと揺れた。  まるで、音に応えるように。

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