ep.165 第二幕:祝主の登壇
朝の光が、社の屋根をやわらかく照らし始めた。 風音の清めの舞が終わると、広場の空気がふわりと変わる。 まるで、空そのものが息をひそめ、次の瞬間を待っているかのように。
その静寂を破るように、咲姫が一歩、前へと進み出た。 薄桃の衣が風に揺れ、手にした鈴が、かすかに音を立てる。
「この地に、光が満ちることを── この日を迎えられたことを、心より感謝いたします」
咲姫の声は、澄んだ朝の空に吸い込まれるように響いた。 彼女はそっと目を閉じ、両手を広げる。 そして、舞う。 風音が呼び起こした風に身を任せ、咲姫の舞はまるで花びらのように軽やかに、優雅に空間を彩っていく。
舞が終わると、今度は果林が進み出た。 彼女は巻物を広げ、静かに読み上げる。
「この地に集いし者たちよ。 今日という日は、ただの節目ではありません。 これは、私たちが共に歩んできた証。 そして、これからも共に在るという、誓いの日です──」
その言葉に、広場の人々が静かにうなずく。 誰もが、胸の奥に小さな灯をともされたような表情を浮かべていた。
そして、最後にうささまが、ころころとした足取りで壇上に現れる。 金の鈴が、陽の光を受けてきらりと光った。
「みんな~!今日も来てくれてありがとぴょん! さあ、祝祭の鐘を鳴らすぴょんよ~!」
うささまが鈴を高く掲げると、 ──しゃらん、しゃらん、しゃらん……!
その音が響いた瞬間、広場のあちこちで灯がともり始めた。 それはまるで、空気に浮かぶ光の花が、ひとつ、またひとつと咲いていくようだった。




