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ep.162 まだ見ぬ貴方へ
「まだ見ぬ貴方へ」
今日は、“夜明けの月”という名前の糸を手に入れました。 ほんのり青くて、でも白くて、朝の空気みたいな色です。 誰かのために選んだわけじゃないのに、 なぜか、誰かのことを思ってしまいました。
今日、誰にも話さなかったけれど、 あの工房で糸を選んでいるとき、 ふと、懐かしい風を運んできたような青年の姿が浮かびました。 どこかで会ったことがあるような、でも思い出せないような―― そんな不思議な気配でした。
その人が誰なのか、私はまだ知りません。 でも、あの糸を手にしたとき、 「この色を、あの人に渡したい」と思ったのです。 理由はわかりません。 ただ、そう思ったのです。
この気持ちに名前をつけるには、 まだ少し、時間がかかりそうです。




