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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
2章~冒険者たち~

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ep.150 あたたかい風

庁舎の扉を押すと、温かな空気とともに、ざわめきが流れ込んできた。 人の声、紙をめくる音、道具のぶつかる音、笑い声、ため息。 それらが混ざり合って、まるで生き物のように空間を満たしていた。


雨音は思わず立ち止まった。 目の前に広がるのは、まるで屋根付きの市場。 冒険者が依頼書を手に声を張り上げ、商人が品物を並べて交渉し、 職人たちが道具や武具を展示している。


「……ここが、ギルド庁舎……」 美空がぽつりとつぶやいた。


「にぎやかだな」 ドンが低く言った。だが、その声にはどこか、ほっとした響きがあった。


庁舎の奥、受付の前には列ができていた。 旅人風の男、若い女性、年配の職人風の男―― 皆、何かを求めてここに来ている。


「……まずは、相談してみましょうか」 雨音が言うと、美空がうなずいた。


「うん。何か、できることがあるかもしれないし」


三人は列の最後尾に並んだ。 少しずつ進む列の中で、雨音は胸の奥に手を当てた。 “誰でも受け入れてくれる街”――その言葉が、今も心の中で響いている。


やがて、彼女たちの番が来た。


受付には、三人の女性が並んでいた。 落ち着いた雰囲気の楓、笑顔を絶やさない椛、そして少し慌てた様子の香。


「いらっしゃいませ。ご相談ですか?」 椛がやわらかく声をかけた。


雨音は少し戸惑いながらも、静かにうなずいた。 「……はい。仕事を、探していて」


楓が帳簿を開き、淡々と尋ねる。 「ご希望の職種や、経験はありますか?」


「私は……以前、屋敷で家事をしていました。掃除や、炊事、洗濯……」 「私は畑を……でも、もう土地が痩せていて……」 「……俺は、薪を割ってた。昔は、剣を……少しだけ」


三人の言葉に、受付の三人はそれぞれうなずいた。


香が少し慌てながらも、書類をめくる。 「えっと……家事の経験があるなら、庁舎内の清掃や、宿舎の管理補助があります。 農業経験のある方には、街外れの畑の再整備の依頼も……」


椛が笑顔で続ける。 「それから、警備隊の補助や、物資の運搬などもありますよ。 無理のない範囲で、少しずつ始めてみてはいかがでしょう?」


雨音は、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。 ここでは、誰かが話を聞いてくれる。 ここでは、何かが始められる。


「……お願いします。できることから、始めてみたいです」


楓が静かにうなずき、書類に印を押した。

「ようこそ、エルシンポリアへ。これから共に、あなたの物語を紡いでいきましょう。」

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