te.1 語り部の帳
障子の奥、灯りの揺れる帳場。 千夜は静かに巻物を広げ、筆を取った。
「風が通り過ぎるたび、誰かの名が残る。 これは、名もなき道を歩く者たちの記録――」
そして、筆が走る。
登場人物（ep1-12まで）
佐藤悠真 転生者。三十二歳。 かつては日本の企業で働いていたが、過労で倒れ、退院直後に事故死。 猫神様の言葉とともに、異世界へと導かれた。 今はまだ、名もなき道を歩く者。 素養《Oralis理解》《Veritas共鳴》が芽吹き始めている。
ミナ 修徒士。旅の風をまとった女性。 依頼を受けて町を巡り、札所に記録を残す。 言葉よりも行動で導く者。 悠真にとって、最初の“案内人”。
千夜 猫神様に仕える巫女。 語り部でもあり、響きを“聞く”者。 猫語を理解し、祈りの中で神の気配を伝える。
世界と用語
暦 この国の暦は、風と星の巡りに合わせて作られている。 一年は七百二十日。二十四の月が巡り、四つの季節がゆっくりと流れていく。 それは、猫神様のひげが揺れる速さに合わせたとも言われている。
言語 この世界では「共通語」が広く使われている。 一部の宗教者や巫女は「猫語」を理解する。 猫語は音ではなく“響き”で伝わる神聖言語。
素養 魔法とは異なる“感応の力”。 Oralis理解：言葉の響きを感じ取る力 Veritas共鳴：真意に触れる力 Nekomuris感応：猫語の囁きを受け取る力
修徒士 依頼を受けて町を巡る者たち。 札所に登録され、修徒帳を持つ。 階級は初徒・中徒・上徒などがある。
用語・素養・関連用語一覧（ep1-12まで）
Oralis理解
意味：言葉の“響き”を感じ取る素養。音ではなく、意味が心に染み込むように伝わる。
描写：言葉が通じない状況でも、風のような声が“意味”として届く。
登場：第1話で芽吹き、第3話・第5話・第11話・第12話で進行・進化。
特徴：言語を“聞く”のではなく、“感じる”ことで理解する力。
Veritas共鳴
意味：真意に触れる素養。言葉や気配の奥にある“本質”を感じ取る力。
描写：祠で猫神様の“記憶の足音”に触れた際に進行。冷たい響きが胸に残る。
登場：第1話で芽吹き、第10話で進行。
特徴：過去や記憶に宿る“意味”を感応する力。
Nekomuris感応
意味：猫語の“囁き”を受け取る素養。神聖言語である猫語を、響きとして感じ取る力。
描写：千夜との対話後、クロノの気配に応じて芽吹く。
登場：第11話で芽吹き。
特徴：猫神様の意志を“音ではなく気配”として受け取る力。
猫語
意味：猫神様や巫女が使う神聖言語。音ではなく“響き”で伝わる。
描写：千夜の祈りやクロノの気配の中で、言葉ではない“意味”が届く。
登場：第3話・第11話以降で本格的に描写。
特徴：理解には素養が必要。Oralis理解やNekomuris感応が育つことで受け取れる。
共通語
意味：この世界で広く使われている言語。町の人々や依頼札などに使われる。
描写：最初は通じなかったが、Oralis理解の芽吹きにより徐々に理解可能に。
登場：第1話から継続的に登場。
特徴：転生者には最初は通じないが、素養によって理解が進む。
町のイメージ
中心部：市場と札所のある通り
石畳の道が通っていて、屋台や干物屋、団子屋などが並ぶ。
修徒札所はこの通りの奥にあり、依頼札が並ぶ静かな建物。
市場は昼間は賑やかだが、夕方になると屋台の香りが漂い、猫が現れることも。
猫影茶屋：札所の裏手にある静かな茶屋
木造の建物で、障子越しに光が差し込む。
焙じ茶の香りが漂い、修徒士や巫女が憩う場所。
奥には小さな社があり、猫神様が祀られている。
千夜が祈りを捧げる場でもあり、響きが強く残る空間。
町の西側：静かな路地と祠のある丘
商業通りから離れた、少し古びた区域。
石畳が欠けていたり、屋根がくすんでいたりする。
古道具屋や小さな祠が点在し、猫の“記憶”が残る場所。
夕方になると風が通り、鈴の音が響くことも。
町の外れ：水辺と石橋
町の端にある静かな水辺。
石橋がかかっていて、猫が座っていたという話も。
水面に映る影が“猫の形”だったという老婆の証言あり。
風が強くなる時間帯には、猫神様の気配が濃くなる。
北の丘：古い祠と風の止まる場所
町から少し離れた草の坂を登った先。
音が消え、風が止む静寂の空間。
猫神様の古い祠があり、過去の“足音”が残っている。
悠真が“記憶の響き”に触れた場所。
町の空気感まとめ
昼：市場が賑やかで、屋台の香りが漂う。猫は屋根や軒先に現れる。
夕方：団子屋の香り、風の通り道、猫の気配が濃くなる。
夜：町が静まり、猫たちが集まる空き地や屋根の上に“儀式のような”空気が漂う。
