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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
第一幕~序章

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13/84

ep.13 (未定)

はじめまして。 異世界転生ものを書いてみたくて、思い切って投稿してみました。 魔法が使えるようになる話ですが、いきなり強くなったりはしません。 ちょっとずつ、言葉を覚えて、魔法を学んでいく感じのゆるい成長物語です。 初心者ですが、楽しんでもらえたらうれしいです!

灯りが揺れていた。 昼でも夜でもないような、曖昧な時間。 風は止まっていて、焙じ茶の香りも、もう薄い。


札を見ていた。 最初に受け取った、あの札。 「黒猫を探してほしい」って書かれてたやつ。


「……見つけた、のかな」


屋根の上にいたクロノ。 目が合った。 響きが届いた。 でも、それが“見つけた”ってことなのか、よくわからない。


「札って、返すんだよな」


誰に言うでもなく、ぽつりと。 棚には、返された札が並んでる。 でも、これはまだ、俺の手の中にある。


「それ、返さなくてもいい札かもね」


ミナが、いつの間にか隣にいた。 団子をかじりながら、空を見てる。


「猫を探す札って、姿を見つけることじゃなくて、気配を受け取ること。  あんた、クロノの“尾”を感じたんでしょ?」


「……感じた、と思う」


「なら、それでいい。札って、響きが残れば、それで終わることもあるから」


札の端に、黒い毛が一本、挟まってた。 風に乗ってきたのか、クロノが置いていったのか。


「……これ、クロノの?」


「たぶんね」


札を閉じた。 返すでもなく、しまうでもなく。 ただ、膝の上に置いた。


「……なんか、始まった気がするけど、まだ何も始まってない気もする」


「それが“始まり”ってやつだよ」 ミナが、空を見たまま言う。 「猫神様は、名前をつけない。  でも、風が通ったあとに、誰かが“名付ける”んだって」


「……じゃあ、今はまだ“未定”か」


「うん。でも、それでいい。  風が止まってるときって、響きが深くなるから」


屋根の上で、クロノが目を開けた。 風は吹いてない。 でも、空気が少しだけ揺れた。


胸の奥に手を当てる。 爪痕が、ほんのり温かい。


「……いつか、誰かと一緒に歩けるかな」


ミナは何も言わなかった。 団子の串を置いて、立ち上がる。


「行こ。風が動き出す前に、次の札、見に行こ」


札を持って立ち上がる。 まだ“未定”のまま。 でも、たしかに何かが、始まってた。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました! 感想やアドバイスなど、いただけたらとても励みになります。 これからも、のんびり続けていきますので、よろしくお願いします!

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