表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
第一幕~序章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/67

ep.12 兆し

はじめまして。 異世界転生ものを書いてみたくて、思い切って投稿してみました。 魔法が使えるようになる話ですが、いきなり強くなったりはしません。 ちょっとずつ、言葉を覚えて、魔法を学んでいく感じのゆるい成長物語です。 初心者ですが、楽しんでもらえたらうれしいです!

夜。 町の灯りがまばらになって、風の音が少しだけ強くなる頃。 空は雲ひとつなく、月が静かに浮かんでいた。 その光は冷たくもなく、温かくもなく、ただ“見守っている”ようだった。


俺は、猫影茶屋の縁側に座っていた。 焙じ茶の香りはもう消えていて、代わりに夜の空気が静かに満ちている。 胸の奥には、昼間の“囁き”がまだ残っていた。


「……クロノ、いるのか?」


誰に聞かせるでもなく、ぽつりとつぶやいた。 風が頬を撫でて、障子の隙間がわずかに揺れる。 その向こうに、屋根の影が見えた。


そこに――いた。


黒猫が、静かに座っていた。 月明かりの中で、その姿はまるで“神の使い”のようだった。 毛並みは黒く、でも深い藍のような光をまとっている。 目は閉じていたけれど、確かに“見られている”感覚があった。


俺は、声を出せなかった。 ただ、胸の奥がふっと震えた。


クロノが、ゆっくりと立ち上がる。 足音はなかった。 でも、空気が少しだけ揺れた。


そして、こちらを見た。


目が合った瞬間、胸の奥に“響き”が広がった。 それは言葉ではなく、意味でもなく、ただ“感じる”もの。 昼間の祠で感じたものに、少しだけ似ていた。


「……クロノ」


猫は、何も言わなかった。 でも、その瞳が語っていた。 風の中に、月の下に、猫神様の“意志”が宿っていた。


そして――


「ひげがゆれるとき、それが夜明けだ」


その言葉が、頭の中に響いた。 声ではない。 でも、確かに“届いた”。


【素養《Oralis理解》が成長しました】


胸の奥に、光が走った。 それは、言葉ではない。 でも、確かに“意味”があった。


クロノは、しばらく俺を見つめていた。 そして、何も言わずに、また座った。 他の猫たちも、それに合わせるように、静かに目を閉じた。


風が吹いた。 鈴の音が、遠くで鳴った。 それは、誰かが“扉を開けた”ような音だった。


俺は、その場に立ち尽くしていた。 でも、胸の奥には、確かに“何か”が残っていた。 それは、猫神様がそっと通り過ぎたような、そんな気配だった。


修徒帳の表紙に刻まれた爪痕が、ほんのわずかに温かくなった。 そのぬくもりは、猫神様の気配が“近くにある”ことを教えてくれる。


でも、それは“始まり”ではない。 まだ、誰とも繋がっていない。


俺は、静かに屋根の上の猫を見つめた。


「……いつか、誰かと一緒に歩けるかな」


その言葉は、夜の空気に溶けていった。


猫は、月明かりの中で、ただ静かに座っていた。 まるで“夜明け”を待っているように。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました! 感想やアドバイスなど、いただけたらとても励みになります。 これからも、のんびり続けていきますので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ