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Galaxy Trail  作者: 紀之
新天地を求めて

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第二十六話 出現!究極の兵器




Drファゼルは軍人ではない。それがたとえヘーレムの最高級の頭脳回路を意味する『金脳』だったとしても、思考の応用力は彼に割り振られた役割である技術者としての必要な考え方と知識に限定される。

だから秘密基地の入り口を開いた瞬間に中に敵が侵入してくるという考えを思いつきもしない。


彼の今の関心は究極兵器の完成のみである。その時間稼ぎの為にメカニオーム・ランビキをはじめとした稼働可能な全戦力を吐き出す事に躊躇(ちゅうちょ)はない。


「往け!カデシュ以外は大した戦力ではない!!叩き落せ!」


究極兵器の入っている巨大なカプセルを凝視しながら曖昧過ぎる命令を下す科学者の目には明らかな狂気が、火花が燃えていた。



突然飛び出して来たメカニオーム・ランビキの体当たりを受けたカデシュType・Nは空中へかち上げられた。


「くっ!」


機体全体を覆うカサブタのおかげでダメージは無いが、衝撃は伝わる。


「ガランが!?」


「わかってる!」


目の端が捉えた猛烈な光子砲の火線。相羽優歌の叫びの意味はメインパイロットの北条翔にも伝わる。


(重い!!)


重量増加の影響で体勢の立て直しに手間取るカデシュに1回転したランビキの尾がしなり、叩きつけられるがカデシュも負けじとプラズマソードを振り下ろす。


火花が散って地上へ吹きとばされたカデシュは剣とスラスターを使って立て膝の体勢で森林の樹木をへし折り、土砂を巻き上げながら大地を滑っていく。


「カケル、あれ!?」


レンの示した方向に土砂に塗れた4つ足の動物6匹がリマジハの地上部隊を襲っていた。


「あのカメレオンモドキか!?」


光学迷彩を使う暗殺マシン、メカニオーム・スマラグティナの存在にカっとなった翔は剣先で1体を叩き潰すと爆光に照らされて木々へ舞い上がる他の5体をフォトンライフルで纏めて消し飛ばした。


『こんな所でどうしたんです?』


「君達を援護しろと言われてな・・・!逆に助けられてしまったが」


モニター越しに彼らの装備を見て翔は呆れる。大砲や小銃でどうにかなる相手ではない。


『お気持ちだけで充分です。レガスにも良く伝えます!ですから下がって!』


翔とリマジハの隊長は互いに敬礼を返す。飛翔するカデシュを見て隊長は部隊を返す。


(現場が無茶に付き合わされるのはどこも同じか!)


2人は全く同じ感想を抱いていた。


「北条君、さっきのサメですけど光子バリアのような物を全身に張り巡らしているみたいです」


「そうなると打つ手が・・・いや、ある!Type・Fならいけるかもしれない」


翔はヘルメットから流れてくる情報を見て1つの可能性を見出す。


「そうだね。今のType・Fの翼の剣はカサブタに覆われて鈍器状になってるからブッ叩いて内部メカを破壊できるかも」


「そうなんだ・・・ならやってみる!」


翔とレンの後押しを受けた優歌は唇をキッと結ぶとコントロールを翔から譲り受けた。


カデシュはカサブタに覆われた全身をギシギシと軋ませながらType・NからType・Fへと『変身』する。


「行くよ!!掴まっててね!」


「「「・・・ッ!!」」」


強烈なGがコクピットを襲う。


カデシュのパーツでもはやカサブタに覆われていないのは頭部と首回り、背部スラスターのみである。


だが、Type・Fの高速接近戦の特性は死んでおらず、優歌の気合と共に猛烈な加速で一気に砲撃戦を繰り広げているガランとメカニオーム軍団の真っ只中に飛び込んだ。


「おい!通り過ぎるぞ!」


強烈なGに体をシートにめり込ませながら翔は優歌に怒鳴りながらサメのバケモノがガランと同じ位の大きさに巨大化しているのにゾッとする。


「分かっている・・・!けど!?重・・・い!」


優歌は操縦桿を目一杯引く。


カデシュが宙返りし、一直線に下降する。


「キャアアア!」

「ユーカ!少し加減しろ!」


「黙ってて!舌噛むよ!!」


アタノール2体のフォトンランチャーの64条の火線がコクピットの周囲を照らす。


「ハンバーガーが飛ぶんじゃ・・・ない!」


緑色の火の滝を抜けカデシュType・Fが背面翼が変化したプラズマフェザーブレイド5本を一点前方に向けアタノールの1つに激突した。


甲高い反響音が戦域に響き渡り、カデシュは反動で後退する。


吹き飛んだアタノールはガランを噛み千切ろうとしたメカニオーム・ランビキの口に突っ込み、その顎で機体を砕かれながら、ランチャーを発射し2機は大爆発を引き起こす。


「・・・・やった!やったよ!」


「気を抜かない!まだサメはやる気だよ!」


コクピットの揺れによる強烈な吐き気を喉奥に押し込めながらレンは優歌に注意を促す。


「しつっこいのよ!」


カデシュが振り切ろうと加速するより早くランビキは耳まで裂けた大口をガチッと閉じた。


「危な・・・!」


巨大なナイフ状の歯に嚙み千切られる寸前にカデシュはサメの体内に侵入し、内部メカをプラズマクローで破砕しつつ尻尾目掛けて突き進んでいく。


「優歌、大丈夫か?そろそろ交代しよう」


「でもType・Nじゃ・・」


ヘルメット越しに頭を抑えながら優歌は翔の気遣いを有難(ありがた)いと感じつつも不安を口にした。


「体内からゲヘナバスターを撃つ。もう1機のハンバーガーごと吹き飛ばしてやる」


「ならお願い。さっきから頭痛くて」


メインパイロットを翔に譲った優歌は琴音とレンが安堵のため息を漏らしたことに気付かなかった。2人とも散々上下左右に揺すられ続けて三半規管は壊滅寸前だったのだ。


Type・Nに戻ったカデシュはプラズマソードを振るって右側の壁を切り裂いていく。


「このまま進めば奴の横っ腹を裂いて外が見えるはず・・・!」


サメの左胴を引き裂いてゲダムの空の青と赤い太陽がコクピットを照らし出す。天然の光が霞む程の赤い閃光がカデシュの口部から迸る。


「ハンバーガーが見えました!ここからなら・・・!」


琴音の言葉の終わらぬ内にゴッと足下が揺れる。ランビキがガラン目掛けて加速したのだ。


「カケル、最大出力までは間に合わない・・・ッ!?」


「もう少・・・・し!!」


その瞬間、ガランの砲撃をランビキが体をくねらせて回避し、アタノールがカデシュの視界から完全に消えてしまった。


「北条君、反対側に撃って!!」


「わかった!」


琴音の言葉に翔はカデシュをクルリと回転させるとゲヘナバスターを放った。


高出力の光線がランビキの体内を貫通し、真っ二つに裂きながら軸線上にいたアタノールの硬い外殻の一部を削り取った。


(ダメか!?)


翔の落胆と同時に信じられない事が起こった。


全身の光子砲を乱射しながらジグザグ移動を続けていたアタノールがゲヘナバスターを受けての一瞬間の停止に乗じてガランの直掩(ちょくえん)をしていたタラスが突進。破損個所へ生成したプラズマソードを深々と突き刺した。


「あのタラス、誰が乗っているんだ!?」


『よう、日本人のヒヨッコ共!本職の軍人の力をよく見てな!』


スピーカーから聞こえてきたのは以前カデシュに隊長を握り潰されたあの軍人達4人だった。


敵機に密着してアタノールのランチャーの砲撃を無力化したタラスの行動に翔もレンも舌を巻く。


タラスはそのまま敵機の装甲の裂け目からフォトンライフルを撃ち込み続ける。6発目でアタノールは急激に失速、黒煙を上げてふらふらと森に落下すると土砂と爆炎を上げて吹き飛んだ。


『どうだ?』


「凄い・・・」


素直な賞賛に気を良くしたのか、先程の軍人の声の自信に満ちた声が聞こえてくる。


『俺はアメリカ空軍のロバート・ヘイグだ。これからは頼りにしてくれていいぜ』


『ロブ、地上がおかしなことになってるぞ?』


「翔、あれ・・・!?」


和やかな雰囲気の中優歌とタラスのサブパイロットが異変を感知する。メインパイロット2名も下を確認すると熱帯雨林が水浸しになっていた。


「グラビティ・リフターの影響か?いや、どんどん広がっている!?」


『俺達は途中参戦だが、戦場付近に川なんぞは無かった。地下水にしたってこんな澄んだ色じゃない』


「カケル、何か嫌な気配がする・・・上手く言えないけどあの川いや液体からそんな感じがする」


「液体・・・」


ロバートは軍人の勘、翔はレンの言葉から奇怪な印象を受けて機体を上昇させる。


「う!?」


「ジーザス・・・!」


カデシュとタラスの目の前で5km四方にまで広がった例の液体がグニャグニャと『生物』的な動きを取るとタールの如き黒い鎧を(まと)ったのっぺらぼうの大男の姿を形成する。その気味悪い動きに優歌と琴音は小さく悲鳴を上げた。


『ヒヒヒヒ・・・ハハハハハ!見たか!!下等生物共!これがワシの、Drファゼル最高傑作、究極兵器トリスメギストスよ!』


惑星ゲダムの全てを見下ろす巨人からDrファゼルのしわがれた笑いが響き渡った。

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