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Galaxy Trail  作者: 紀之
新天地を求めて

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第二十五話 敵秘密基地強襲




Drファゼルは自身の搭乗するメカニオーム・ランビキを惑星ゲダムの海にある、自身の秘密基地の格納庫に係留した。


「ヒヒヒ・・・!良いモノを見つけたぞ!」


コードに覆われた体の間から単眼をギラギラさせながら脳波コントロールできる秘密基地のコンピューターに自身の機械脳の電波を矢継ぎ早に飛ばす。


彼は翼の生えたサメの背ビレの根本部分にあるコクピットから天井のクレーンを使って薄暗い床に降りると、そのクレーンでランビキの歯に付着した破片をつまみ上げると、正面のコンピューターに分析をかける。その片手間にランビキの歯をまるで入れ歯を交換するように口に装着した。


「やはり!!これだ!!これさえあれば、最強の戦闘メカになれるぞ・・・・待っていろよ」


この傍若無人な科学者が生まれて初めて愛おしそうな視線をゴボゴボと水音を立てる、研究所の最奥の巨大なカプセルに向けた。



同時刻・ガラン格納庫


メカニオーム・スマラグティナの追跡に失敗して帰還したカデシュ。


そのコクピットから北条翔と牧野琴音は複雑な表情で降り立った。


一杯食わされた。


あのカメレオンが始めからあの空飛ぶサメの縄張りに逃走経路を設定されていたならもはやその黒幕の下に辿り着く事は不可能に近い。


(どうすればいい?)


帰還する途上、コクピット内で琴音と共に考えても、今ガランの廊下で司令室に行くまでにもいい案は浮かばなかった。


「おのれ・・・やってくれる!」


その報告を翔から聞いた司令室の椅子で右腕を包帯で巻いたレガスはその右腕を叩きつけようと振り上げて痛みでその動きを止めた。


「それで・・・どうする?これでもう敵の基地を探す手掛かりがなくなった訳だけど・・・」


レンの言葉に答える者はいなかった。


長い沈黙の後司令室の卓上の通信機が鳴った。


「はいはーい!こちら司令室!あ、ハリオさん!」


どんよりした空気を嫌った相羽優歌は通信機に飛びついた。


「貴様、私を差し置いて・・・!?」


優歌は物凄い表情のレガスの視線を避ける様に後ろを向いてハリオに続きを促す。


『なんだ!?何で嬢ちゃんが・・・まあ丁度いい、今すぐ全員格納庫に来てくれ。説明したい事がある』


「ここでは無理なのか!?」


通信機を優歌からひったくったレガスが怒鳴る。


「してもいいが、口で説明しても多分理解できんぞ。だから実際に見てもらった方が良い」


舌打ちして通信機を切るとレガスは大股で部屋を出る。その後ろを4人のカデシュのパイロットとルツが続く。


「爺さんは何か言っていたかい?」


「何も。ちょっと興奮気味だったけど」


「つまり、行ってみるしかない訳ね」


優歌とルツの会話にレンは肩をすくめた。


格納庫にはいつも通り緑色に塗られたタラス(最初期型)と灰色のカサブタが広がったカデシュに整備士が慌ただしく作業していた。


その現場から少し離れた所で小さなモニターの傍に立ってハリオが小さな緑色の物体の入った透明な四角い箱を(いじ)っていた。


「それ何?」


優歌の疑問に得意そうに両腕を広げて彼は説明を始めた。その隣でレガスが憮然(ぶぜん)として鼻を鳴らした。


「よくぞ聞いてくれた!こいつはな、あの緑のバケモノの足跡から採取した破片だ。そして」


モニターの画面を切り替える。そこには2種類の成分表のような物が表示される。その左側の表をコンコンと指で叩く。


「それとな、これはカデシュのカサブタに刺さっていた歯の成分表なんだ。結論から言うと何と!?2つは殆ど同じ成分なんだよ」


驚く一同を見回してハリオは満足そうだった。


「つまり、あの空飛ぶサメはヘーレムの機動兵器だってことか!?なら」


ハリオは翔を指さし、笑顔で『その通り』と告げる。


「あのサメの縄張り巡回ルートを辿っていけば奴らの秘密基地か拠点の位置が割り出せるって寸法さ」


モニターの画面がスオウから貰ったメカニオーム・ランビキの巡回ルートに切り替わる。


「・・・この広い範囲をか?しかも地上は森林地帯だぞ。入り口を調べるのも骨だな」


「だが、さっきの交戦記録からここの範囲は除外できる。怪しいのはこことここだな」


レガスのぼやきにハリオはモニターの地図に2つの丸い点と赤い範囲を追加した。


「何でそう思うんだい?」


「決まってるだろ。証拠をとにかく早く隠滅する為にあの緑のバケモノを始末して逃げ去るしかねえ。それにはあいつらの行動を把握してなきゃならない。そうなると連中が落ち合ったあの場所からサメのスピードを計算するとこの2つの赤い部分が一番怪しいってわけよ」


ハリオの推論にレンは(うなづ)く。


「だけど、カデシュのアレ、広がってない?武器とかどうするの?翼も腕も灰色になっちゃてるよ」


「それなんだがな・・・どうやっても剥がれねえんだよ。カサブタに塞がれて、ソードもライフルも使えないかもしれん。なんでタラスのフォトンライフルとプラズマソードを借りてってくれ」


「他に判った事は無いのか?」


「司令官殿、1つだけ。歯を調べて分かったんだが、あのサメな、体に伸縮機構があるらしい。戦闘記録にあるカデシュより少し大きいサイズから推定400mクラス・・・艦艇サイズまでデカくなる。リジェネレイトシステムの応用だろう」


その言葉に全員ゾッとした。


だが戦わなければ安寧(あんねい)はないのだ。この星から去って行く自分達もここに残る者達にも。



1時間後。


レガスの座乗するラッダイト級攻撃空母3番艦『ガラン』は海岸に設営した野営地を飛び立ち、北北西に進路を向けた。その上をカルブンクルスがゲダム軌道上から随伴、地形データの分析に勤しむ。


この探索行を先日隕石に偽装して降下したヘーレム第2艦隊、通称サークレイス艦隊所属の偵察型FOガビエネの1機が捉えた。


ゲダムから遠く離れた宇宙空間。FOカンナエのコクピットでサークレイスはほくそ笑む。サブモニターに表示されるゲダムの『地図』は極めて詳細で、空白部分は瞬く間に埋まっていく。


『連中は相当な馬鹿の集まりではないようだな。だが戦力が心許ないな。・・・場所の特定さえ出来れば良いか。この情報を例の住民共に教えてやれ。あれを燻り出すには格好のエサになる』


サークレイスの指示を無機質な機械音で実行するガビエネ。直後リマジハの政務局のコンピューターはガラン発進の情報と映像そして『この星の邪悪を打ち砕くべく力を貸して欲しい』という一文を傍受した。


「我々脱走兵をおびき出す罠では?」


副官の言葉にスオウは画面を睨みつけながら唸る。


「船の向かう先はあの空飛ぶサメの縄張りだな?」


「そうです。リマジハの人間であの辺りに近づく者はいません」


「周辺に艦艇やFOは無いのか?単艦というのが気になるが・・・」


「送られてくる映像には映っていません。カメラ位置と艦との相対速度から地上部隊かと」


副官の言葉にスオウは頷く。


「何のためにそんな部隊を展開しているのか、がな」


「戦力が枯渇しているのでしょうか?なら・・・!?」


2人の後ろに控えていた警備主任の言わんとしている事をスオウは手で制した。そして


「主任、部隊を編成して村の警備を固めたまえ。連中の本心がどこにあるか見極めるのが最優先事項だ。そして可能なら連中に恩を売ってやるといい」


その決断に副官も警備主任も納得した表情で去って行く。彼のこの決断を非難は出来ない。


責任と権力は常に表裏一体なのだから。



同時刻


ガランの格納庫ではFOの発進準備が粛々と進んでいた。


「このカサブタどんどん広がっているけど大丈夫なの!?」


優歌は自分の座るシートの正面モニターの映像、つまり機体背面が灰色一色である事に顔を引きつらせる。


『分からん。だがな、かなり硬くて重い。だから回避より防御した方が良い』


「つまりあたし達に盾になれって言うのね」


ハリオの言葉にレンが毒づく。


『いや、そういう意味じゃねえよ。動かして見りゃ分かるだろうが、運動性はかなり低下してるぞ。さっ

きより数倍もな』


「どの道艦からあまり離れては戦えない。戦力を集中させなくちゃあの兵器は落とせないからな。カルブンクルスの砲撃は地上を焼くだけだ」


シートベルトを締めつつ翔は操縦桿を握る。その感触は確かに昨日より重い。


『そういうこった。難しい事を頼んでいるのは百も承知だ。だけど俺達が全員生きて帰るにはお前らに頑張ってもらうしかねえ。だから分かっている情報は出し惜しみしたくないんだよ。良い事も悪い事もな』


「悪かったよ。あたしも軽口のつもりだったんだ」


『しってらあ。だから思いっきりぶちかましてこいや!』


「「「「了解!」」」」


パイロット4人は笑顔をモニターのハリオに向ける。翔は通信を切ってカタパルトへ進んだ。


「カデシュ出ます!!」


出撃と同時にガランが高度を上げる。例のスマラグティナの侵入を嫌がったレガスの指示によるものだ。


機体は確かに重く、操作感が違う。だが不思議と何とかなる気がした。



「あんたが謝るなんて珍しいじゃん」


「悪いと思ったら謝るよ。悪いと思ったらね」


軽口のつもりが見事にレンにカウンターを食らった優歌はむくれて手元のモニターに齧り付く。


その様子を見て琴音がクスクス笑いながらコンソールを弾いていた。


「何がおかしいのよ?」


「いつもの調子に戻ったなあって。最近気の滅入る事ばかりだったから・・・」


「そうだね・・・いつまでつづくんだろう。こんな・・・事!?」


「どうした優歌?」


翔は振り返って優歌に声をかけた。


「今何か動いた・・・かも!?」


「どの辺だ!?」


優歌の指示したポイントに滞空したカデシュのコクピット内で4人は索敵するが異常は見られない。


「こちらカデシュ。不審な物体を確認。地上に降りてみます」


『了解。気を付けろよ』


出撃していたタラスのパイロットからの通信に短く返事を返して森林の一角に降り立つ。


「・・・・カケル、周辺をソードで叩いてみて」


「こうか?」


言われるがまま翔はプラズマソードの腹で足元の木々や下生えの繁茂した大地を殴りつける。


「そこ!反響音が違う!」


レンの鋭敏な聴覚が(わず)かな金属の反響音を捉えたのだ。


「もしかしてここが入り口か!?」


フォトライフルを構えたカデシュに正解、と言わんばかりに地面が樹木を押しのけて口を開ける。その銀色の開口部からメカニオーム・ランビキとメカニオーム・アタノール2機が飛び出して来た。


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