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Galaxy Trail  作者: 紀之
冥王の住む星

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第十五話 激戦への序章




 突如もたらされた、冥王星基地の詳細図。カルブンクルスの司令室内の空気は微妙な物となっていた。


「それ本物なんですか?」


北条翔の疑問にルツもため息をつく。


「そこなんだ。いくら人間の数が機械共の数億倍だろうと見逃す連中じゃない。ニセモノかあるいは」


「罠だね・・・」


レンの言葉にルツも頷く。


「だろうよ。地図に添付されていた文言には基地の上層部はカデシュパイロットの関係者を探し出してどこかに連れて行ったそうだ」


「ウソ!?それじゃお父さん達は・・・!」


「落ち着け優歌。まだ・・・そうと決まったわけじゃない・・・!」


翔は相羽優歌を慰める。表現をぼかしたのは自分自身が両親らに無事でいてほしいという願望からである。


「で・・・でもあの人達は何も言わずに・・・・皆を・・・・地球を・・・・あんな風に・・・!?」


「琴音!?しっかり!?」


地球での惨劇を思い出したのであろう、牧野琴音は青い顔で呟くと失神してしまった。


「医務室に運んでやりな。それが終わったらブリッジに集まるように。作戦会議だ」


十数分後にはカルブンクルスの主だったクルーがブリッジに集合していた。その中には無謀な補給要請へ行き、医務室で治療を受けていたレンの親友のラナらアニマ級のクルーらも混じっていた。正面のモニターにはガランの司令室とブリッジが映っており、ガランのブリッジクルーとレガス司令官が苦虫を嚙み潰したような顔で座っていた。


「ここに居る全員はこれから無謀な作戦を遂行しなければならない。すなわち太陽系外縁部に位置する冥王星の基地を破壊し、駐留するヘーレム艦隊の、それもカルバラー率いる本隊を追い払うという作戦をだ。この会議はいかにして作戦の成功率を上げ、犠牲を抑えることができるかを話し合う場である。皆、忌憚(きたん)のない意見を言ってくれ」


ルツの発言にブリッジは静寂に包まれる。だが暫くして1つの手が上る。優歌だ。


「そもそも何で冥王星なんかに基地を造っているの?いえ・・ですか?」


失笑が起こるが、ルツはそれをかき消すように答える。


「良い質問だ。ヘーレムは機械人間の集団だ。だから飲み食いも休息も基本、必要ない。だが機械である以上、真水による部品の洗浄だけは絶対に必要だ。この図を見て分かる通り、冥王星は氷の惑星だ。連中は星の氷を採取し、せっせと洗浄水を本国へ送っていると思われる。つまりこれから攻める基地は資源採掘基地という事になるな。ちなみに生物が呼吸できる大気はない事も付け加えておこう」


「その基地の詳細が送られてきたというのは本当でしょうか?」

優歌の質問で場の緊張が緩んだのに安心したのか、クルーの1人が手を上げて質問する。


「本当だ。だが、それが本物かどうかは分からない。私達を罠にかける為のニセの地図である可能性は極めて高い。かといってこの基地と艦隊を無視する事は出来ない。太陽系を抜けた先に別の艦隊が居た場合、それと冥王星駐留艦隊に挟撃されれば今以上に生存率は低くなるだろう事は明白だからね」

攻撃するのではなくせざるを得ない。この死に物狂いの作戦を遂行しなければならない事にブリッジがざわつく。


『静かにしろ!!諸君、こうなった限りは地図の正しさを信じるより他はない。送られてきた情報には冥

王星周辺の哨戒部隊の配置や時間までもが記されているのだ。危険を顧みずにこれらの情報を送ってくれた地球人同志に報いるべく、我々は彼らをそしてあの機械共を太陽系から駆逐せねばならぬ!!』


モニターが震えるかと思う程の大声でレガス司令官が全員を一喝する。


「具体的にはどうするんです?」


誰かの発した疑問に司令官は一瞬言葉を詰まらせる。が、すぐにこう言った。


『隕石に偽装して突入部隊を送り込めばよい。カデシュはその護衛兼囮だ。当然カルブンクルスと我がガランも支援する』


無理だ、できっこないと再びざわつく艦内。


「出来ねえことは無いがな」


『出来るのか老人!?』


ハリオの呟きを耳ざとく拾ったレガスが喜色を見せた。


「ただメカニックや機械知識のある奴らは全員協力してもらわなきゃならん。そしてあんたんとこのタラスの残骸を全部使わせて貰う。つまり作戦中艦の護衛は無しだ」


『う・・・ウムム・・・・仕方がない・・・・!だが作戦は時間との勝負だ!電撃的に基地を襲撃し基地を破壊するのだ!』


レガスの後にルツが続く


「基地破壊に関しては内部にある大量の水を利用して水蒸気爆発を起こさせる。その為の潜入部隊を今から選抜する。志願する者は申し出てくれ。では解散。準備が出来たら海王星と冥王星の間へ跳躍する。それを持って作戦開始だ!」



「本当にこんなんで大丈夫なの?作戦もだけどさ」


カデシュのコクピットから飛び出した優歌は船外にて急ピッチで組み上げられる『船』にドン引きしていた。船などと言われているが内実は隕石をくり抜き内部をタラスの装甲材で内張りし、そこにコントロールシステムを組み込んだだけの代物である。


「帰りは敵の船を奪うなんて・・・これじゃ決死隊じゃなくて特攻隊です。あの人達は本当に捕虜を・・・私達の家族を救う気があるんでしょうか?」


琴音も不安げにレンを見る。レンも普段の気丈さは無く、しきりにため息をついてばかりだった。


『出来る事、やれる事をするだけ。だからお守りはまだ持っといていてよ。私も身に着けていくから』


緑色のペンダントを(かざ)しながら言うとラナは決死隊に志願したのだ。


(ラナ・・・)


「・・・・気休めじゃないけどカデシュのパイロット追跡能力を利用して潜入部隊の位置はそちらで把握できるんだ。本当にマズイ状況になったら連絡する」


「わかってる。その為にカケルが決死隊のメンバーに入ったってこともさ。必ず行くよ。絶対に!」


翔の言葉にレンはいつもの表情で振り返って応える。その手が震えているのを彼は指摘しなかった。


「翔~あたしのお守りあげる!だから・・・・さ」


差し出されたのはスマホ。もはや電波など入らないが地球での日常でなくてはならないアイテムで大切な思い出も記録されていた。


「ありがとう。俺、気の利いたモノなくてさ。だからこれ」


幼馴染に自分のスマホを渡す。


「ううん。これでいいよ。これが良い」


(良かったね優歌ちゃん)


(そういうのじゃないって!?返さなくちゃいけないんだから)


「?」


小声で(ささや)き合う女子2人に首を傾げる朴念仁が1人。出撃のアナウンスが艦内に響く。

カルブンクルスとガランは冥王星と海王星の間へとスペースジャンプをかけた。



海王星の磁気圏の影響で人類連盟の2艦は敵に感知される事無く冥王星を正面に臨む空間へと跳んだ。カルブンクルスとガランは正面の隕石地帯、通称『カイパーベルト』に突っ込むと同時に隕石に偽装した船とカデシュType・Fを出撃させると停止する。


「また隕石群だ!?しかも前のより一杯じゃない?」


『密度だけならアステロイドベルトの20倍だ。これなら1個くらい冥王星に落っこちても誰も気にしないかもな・・・』


「おしゃべりはここまでだよ、カケル、ユーカ。そろそろ連中のパトロール網に入るから通信を切るよ」


『レン、頼りにしてるよ!』


「そっちも気を使わせて」


通信を切る直前ラナからの激励に指が止まる。後ろ髪を引かれながらスイッチを切ったレンは自分の不器用さに内心ため息をつく。


(もうちょっと気の利いたことが言えればね・・・)


船から離れて警戒網に近づくカデシュのコクピット内で琴音はレンに声を掛ける。少し落ち込んでいる様に見えたからだ。


「きっとラナさんに伝わってますよ。レンさんの気持ち」


「それはね。ただ・・・いやでもありがとう、コトネ」


「出て来たよ!・・・・何アレ?」


和やかな雰囲気を優歌の()頓狂(とんきょう)な声が壊す。


「ゴボウでしょうか?竹にも見えますけど」


「あれが連中のパトロール艇さ。ラディックス級だったかな?ともかくアレの中央をブッタ切って!」


「そういうのは得意!!2人共(つか)まってて!!」


カデシュType・Fが一隻のラディックス級へ猛スピードで接近。全長250mと最も小さいこの艦級は琴音の感想通り見た目はゴボウか竹を横倒しにしたようにしか見えない外観をしている。事実竹の様にいくつもの節があり、それを1つの貨物室(この中にタラスを1機搭載できる)として先端の操艦部と最後尾の推進部の間に理論上、無限に継ぎ足していける構造をしている。この構造を発展させたのが地球に派遣された悪名高い奴隷船ペイガン級輸送艦であり、その就役と同時にラディックス級はその航続距離の低さとペイロードの無さからパトロール艇に転用されていた。その艦の側面からハッチが開き4機のタラスが飛び出す。優歌はFOを無視して艦の上を取ると同時に急降下。


「砲撃!?ゆうかちゃ!?」


「今更止まれないって!!」


猛烈なビームの嵐を強引に突っ切りカデシュは翼に仕込まれた刃でラディックス級を真っ二つに切断する。


「あんな火力が・・・!?」


ラディックス級の冗談のような見た目に反した火力に琴音は怯える。


「違う!あれはハッチを開けてFOの武器を撃っただけ!それに今の奴はマンジケルトの強化型に艦を曳かせてる!」


「どんなデタラメよ!?それ!?」


「良いから!あんたはとにかくそのゴボウだか竹モドキだかをスパスパやってくれればいい!」


「なるべく派手に、でしょ!!」


「得意でしょ、そういうのは!!」


売り言葉に買い言葉。優歌はアラートを頼りに機体を左に揺する。カデシュの先程までいた場所を追ってきたタラスとマンジケルト・ダンのフォトンライフルが交錯する。タラスは頭部を吹き飛ばされたが、マンジケルトの方は艦と自身を繋ぐコネクタをパージし、離脱すると艦の先端部が爆散する。


マンジケルト・ダンは上下にフォトンライフルになった両腕から光弾を連射。その左右から爆炎を上げる艦のハッチから飛び立つタラス4機がフォトンライフルと脚部のフォトンガンを浴びせる。


光弾の嵐を巧みに(かわ)すカデシュを囮に隕石に偽装した船は冥王星へ突入する。


(遂に来た!きっとここに父さんと母さんがいる!!待っていてくれ!)


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