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Galaxy Trail  作者: 紀之
追撃+反撃=追跡

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第十話 隕石の海を越えて(後編)




 背後から急襲するマンジケルト2機の速射型フォトンライフルがカデシュの背部バーニアに直撃し、爆発に(あお)られた機体は眼前の隕石に激突し、弾き飛ばされる。


「ク・・・カルブンクルスから離れすぎた!?大丈夫かレン、優歌!?」


「アタシは平気。上から来るよ!」


「・・・・・!?」


レンも翔も何でこんなに冷静なの?優歌の疑問は声にならずに口内で消えてしまう。


格納庫で蟻の様に踏み潰された避難民


絶えず交錯(こうさく)する光弾と視界


彼女はポッド内とは比較にならないそれら死の恐怖にカデシュ搭乗以来ずっと震えていた。


レンの言葉に反応して考えるより先に頭が動いて見てしまう。タラスから糸のついた槍のような物が自分に迫ってくる光景にようやく優歌は悲鳴を上げた。


「何度も食らうかよ!」


北条翔はコクピット内で吠え、意志を受けたカデシュは右手のプラズマソードをショックアンカーに絡ませると電流が流れる直前に放り投げアンカーを近場の隕石に固定させた。タラスがアンカーを切り離す刹那、3方向からのマンジケルトの攻撃を無視して翔はフォトンライフルのトリガーを引く。この至近距離では流石に(かわ)し切れず、タラスは爆炎の中に散った。


「やっと1機か・・・!」


それだけの為にダメージを受けすぎた。額から脂汗を滴らせつつ、翔はカデシュの翼や背中にかなりのダメージが入っている事をコンソールで確認する。


「カケル、交代よ。目を休ませないと」


「ごめん。レン頼んだ」


操縦者交代(テイクターン)』で操縦席が右回りに回転し、レンがコクピット正面へ移動する。

同時にカデシュもType・NからType・Gへと『変身』両腕にフォトンライフルを構える。


「カケル、ユーカ、敵の位置は!?」


「上、いやジグザグに凄い速度だ・・・!?」


「ダ・・・ダメ・・・速すぎて・・・・追えない・・・」


「なら!追わせればいい!」


レンはコントロールパネルを叩くと、カデシュ背部の6連ホーミングレーザーナパームを発射、レーザーは2条ずつマンジケルト3機を追っていく。


「でもあれだけじゃ・・・」


優歌の呟きに遂にレンが苛立ちを爆発させる。


「アンタ、さっきからボーっと座ってるか弱気な事しか呟いて無いじゃない!物事にはね、全部意味があるの!アタシはアンタの事気に食わないけど、カデシュはアンタをパイロットに選んだのは何かがあると思うから隣に座ってんのよ!」


「意味って言われても・・・ただ声が聞こえただけで・・・前前!?」


優歌の正面つまりレンの右側からマンジケルト爆光を背にフォトンバルカンとライフルを撃ちながら急降下、直後にカデシュのライフルを急上昇して避ける。


マンジケルトは機体そのものを盾にして垂直式ホーミングレーザーナパームを撃ったのだ。しかもそれ等は全て隕石を避け急旋回して全方位からカデシュを襲う。


レンは隕石を機体の盾にするように上昇と下降を繰り返す。


爆発で『空き地』となった空間へ別の2機の戦闘機が発射したナパームが迫る。


「左右からまたナパームだ!?」


翔の言葉にレンは再度ナパームを発射し、両腕のフォトンライフルを乱射する。そのいくつもの光弾をマンジケルト3機は悠々と躱しながらライフルやバルカンで応戦する。


「ちゃんと狙いなさいよ!?」


目の前を(かす)めていく光弾に肝を冷やしつつ優歌が怒鳴る。


「狙い通りだよ!そっちは回避に集中して!」


乱射されたフォトンの爆発破砕する隕石の影からタラス2機が飛び出し、カデシュを挟んでフォトンライフルを浴びせる。カデシュType・Gは両肩のバーニアと四肢を最小限度に動かして武道家の見切りの如くその射線を回避。1体のタラスは味方の攻撃で右腕を吹きとばされ、もう1体は頭部を吹き飛ばされる。


右腕を吹き飛ばされた方のタラスは左手にプラズマソード、右足からプラズマクローを生成、斬りかかる。


「「いい加減にッ・・・寝てろォ!」」


2人の少女の怒声がコクピットに響く。


カデシュはレンの意志を受けて後退、敵機の膝が上るより早く優歌の反射神経によって左足が相手の踵を蹴り飛ばし、タラスを宙返りさせた。その隙を逃すことなくレンはフォトンライフルでタラスを撃墜する。


「ようやく、いつものユーカに戻ったね」


「い・・・今あたしの考えた通りに動いた?」


「左足だけだが・・・凄い反応速度だったな」


「そうか・・・・できたんだ・・・私でも出来るんだ・・・」


「撃破したのはアタシだよ。調子に乗るな」


レンの言葉を優歌は聞いていない。ただ、レンもトゲは無く仲の良い友人に軽口を叩いている口調だった。


「見てて、翔!あたしもレンと同じくらい動かせる事、役に立てる所を見ていて!!」


操縦者交代(テイクターン)』で操縦席が右回りに回転し、優歌がコクピット正面に座るとコクピット頭上のヘルメットが優歌に被さると彼女の脳波を読み取ったカデシュの全身が発光する。


両腕には巨大な3つ指のクローに、両脚も3本の爪へ変化


翼は巨大化し、羽の1枚1枚の可動範囲が広くなっている。


そして頭部はType・Nの顎と頭部の3つの角が全て合わさり1つの大きな角を額から生やした黄色いラインの入った赤鬼のような風貌へと変わったその名はカデシュType・F。


「ム・・・カデシュの姿が変わるか・・・仕掛ける」


ルオゾ・イーのマンジケルトは無防備に思えるカデシュへ機体の全火力を叩き込む。これで撃破できるとは思わないがそれでも衝撃や熱による消耗は狙える。彼らの計算通り戦闘とフォームチェンジで莫大なエネルギーを消耗しているカデシュはフォトンライフルの威力低下を起こしており、頭部を吹き飛ばされたタラスは本来なら首内部のコクピットまで無くなっているはずなのだ。


「まだ余力があるとは・・・」


「焦るなイー。奴にはもうライフルを撃つだけのエネルギーはない。だから苦し紛れにあんな姿になったのだ」


「イー、ドー、セオリー通り遠距離から叩く。近づかなければ吸収能力は使えん!」


「「了解」」


ルオゾ・ムーの指示の下、3機のマンジケルトは新たなカデシュの周りを螺旋状に旋回しつつバルカンとライフルを浴びせる。カデシュは翼を前方に翳してその攻撃を弾く。と、首なしタラスが羽の隙間から突っ込んでくるのが見えた。


「また来たぞ優歌、まずはタラスから」


「そいつは最後!まずはアイツらからっ!!」


優歌はマンジケルトの1体に狙いを定めると翼を翻したカデシュは恐るべきスピードで追跡、背後から強烈な右ストレートを繰り出す。


「高速戦闘形態だと!?」


冷静を通り越して無機質なルオゾシリーズに初めて焦りが生まれる。だが戦う為に生まれた彼らは感情より先に機体を宙返りさせ、その1撃を躱した。


「な・・・に!?」


敵機の頭上を通り抜けたルオゾ・ドーのマンジケルトは左右に真っ二つになって爆散した。


カデシュの背中から鈍い光を放つ羽根の1枚が展開されており、そこに自ら突っ込んだのだ。


「プラズマソードの翼というのか!?」


作戦は失敗した。だがデータを収集しなければならないという使命からルオゾ・イーもムーも攻撃を続行する。人型へ可変し、隕石に隠れながら両腕のフォトンライフルを連射するイーのマンジケルト


「遅い!」


「ユーカあまり調子に乗るんじゃない!!」


レンの忠告通り、コクピットが振動する。敵機に抱き着かれたのだ。優歌の眼前がホーミングレーザーナパームの収束光で真っ赤に染まる。


「離脱を!!」


「その前に落とす!」


優歌はカデシュの頭部の角をマンジケルトの首元に深々と突き刺す。敵機のモノアイから光が消えだらりと垂れ下がる四肢を()ね飛ばす。


同時に真上から錐揉み状態で突っ込んで来た最後の一機をガッシと受け止めると近くの隕石に叩きつけると跳ね返ってきた敵機の胴体にクローで風穴を開ける。ルオゾ・シリーズの駆るマンジケルト隊は全滅した。それも素人の操縦するFOに。


「野蛮ね」


撤退するタラスをモニター越しに眺めてため息をつくレン。


「これしかできないんだからしょうがないじゃない!」


「でもさ、初陣でこれだけ動かせるのは凄いよ。それよりどうやって戻ろうか?」


コンソールに表示されている、カデシュのエネルギーはゼロだ。通信機も使えない以上カルブンクルスへの連絡すら取れないのだ。慣性に流されるまま、岩石の大海を漂う彼らの目の前に突如白い艦船が現れた。


「何あれ!?」


輪の付いた十字架型という特徴的な船体に優歌の顔が強張る。


「大丈夫。あれは味方の船だよ。アタシ達が探していたレガス司令官殿の艦さ。今まで何してたのか知らないけどね」


レンは相変わらず手厳しい。その口調は嫌な奴に恩を売る事になる、という苦々しい思いが滲み出ていた。


「だけどそのレガスって人に回収してもらう以外方法は無いな。酸素も残り少ない」


「背に腹は代えられない、か」


レンはコクピットハッチを開けて外へ出ると腰からペンライトのような物を取り出すとパッパッと2度短く点滅させると再びコクピットへ潜り込む。暫くして十字架の横木に当たる部分のハッチからグリーンカラーのタラス(初期型)が出てくるとカデシュの手を引いて母艦であるラッダイト級攻撃空母の格納庫へと着艦した。


『ようこそ、カデシュ捜索部隊旗艦ガランへ!無事アステロイドベルトを超えられて嬉しく思う』


戦場に相応しくない妙に明るい気取った声がスピーカーを通して格納庫内に響く。


コクピット内の少年少女らは顔を見合わせ頷き合うとハッチを開いた。


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