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Galaxy Trail  作者: 紀之
追撃+反撃=追跡

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第九話 隕石の海を越えて(前編)





来い。我が(もと)へ。今こそお前の力が必要なのだ。来るのだ・・・・我が許へ


カルブンクルス内に鳴り響く警報と共にスクランブルを告げる音声とは別の重々しい声だ。


「ッ!なにこれ!?」


突然聞こえてきた声に相羽優歌は頭を押さえる。


「どうした?」


カルブンクルスの砲台に向かっていたクルーの1人が足を止めて彼女の顔を覗き込む。彼らも先の戦闘での優歌の活躍と休憩時間に生き別れた親探しをしている事を知っていた。だから休むか、という言葉はかけない。それは自己責任だからだ。言い方を変えれば優歌も彼女の友人らもお客さんではなく共に戦う同志であると思っている証左だった。


「声が・・・あれ、もしかしてあのロボットのかも・・・?」


「声ねェ・・・・分かった、行ってきな!艦長には俺が言っとく」


「ありがとう!また後でね!」


「やれやれ・・・エースが居なくなっちまったか」


振り返って手を振る優歌の赤いツインテールが廊下の角を曲がって見えなくなるとクルーはため息をつき廊下の通信機に向かって代わりの砲手をブリッジに要請した。



「ユーカが!?わかった、代わりの者をそっちにやる」


ルツは砲手の1人から優歌が抜けた事を聞くとすぐに人員名簿を呼び出し適性の高い人員を調べ始める


「マンジケルト接近!!3機です!!」


「撃ち落とせ!滞空監視怠るな!光点は6つのはずだ!?残り3つ探し出せ!」


足の速いマンジケルトでこちらの目を引き別動隊で艦の懐へ飛びこむ。


(セオリー通りではある。だが数が少なすぎる)


カルブンクルスのバリアーを侮っているのならばその慢心につけ込める今が優位なのだ。その為にも敵の別動隊を迅速に捕捉する必要があるのだ。


「ウッ!?」


ブリッジ正面のモニターが紅く染まる。前面のバリアーの一点に3機のマンジケルトのフォトンバルカンを受けたのだ。人間には到底不可能な幾何学的な機動でマンジケルトはこちらの砲撃を避けると一瞬で索敵範囲から消える。


この動きを見せつけられることで人間側の士気は下がり、何度敗北してきたことか


「今のは連中の挨拶だ!!受けた礼儀はキッチリ返す。我々の義理堅さを教えてやれ!!」


ルツは全クルーへ発破をかける。幾分か和らいだブリッジクルーの表情を見て彼女も笑顔を返す。

そう。今はこちらにも切り札があるのだ。



「バリア―強度算出・・・・次で破る」


ルオゾ・ム―は、正確には彼の頭脳ユニットは瞬時に次の攻撃ポイントを部隊員へ送ると機体を最大戦速で垂直に降下させる。マンジケルトの正面モニターが目標をサッカーボールくらいの大きさに見える距離で6連垂直式ホーミングレーザーナパームを斉射。後れてカルブンクルスからの砲撃が来るがそれを避けるのは児戯(じぎ)に等しい。


僚機のマンジケルト2機が左右に離脱、同時に隕石から飛び出したタラス(現用機)3機がレーザーナパームの着弾予想地点に向けてフォトンライフルを撃つと同時に隕石群の影に隠れる。タラスの攻撃と同時にマンジケルト3機の両腕のフォトンライフルの連射も同じ1点に集中し、バリアーの1角がガラスの様に割れる。


「バリアー破られ、マンジケルトバリアー内にしんにゅ、うわああ!!」


割れたガラスに小鳥が飛び込むようにルオゾ・ム―のマンジケルトがバリアー内に突入する。


「バリアーを張り直す!カデシュの発進急がせろ!!砲手はタラスを撃て!これ以上飽和攻撃を許すな!!」


ルツの判断はカルブンクルス自身の装甲の厚さを信頼しての物だ。彼女を含めてカルブンクルスのクルーらは敵の狙いがカデシュを引っ張り出す事だとは気づいていない。



「どうした!?早くカデシュを発進させろ!?」


「駄目だハリオさん!動かないんだ!!」


モニターに映る、なんでだよ!?というハリオの真っ赤な顔を横目で見ながら北条翔はコントロールパネルのスイッチをいれつつ、動けと念じるが機体は石像の様に動かない。


「カケル、あんまりパチパチするのやめて。計器は正常だよ」


「じゃ、レンは何でカデシュが動かないか、判るのか?」


「多分、待ってるんだよ」


「待つ?誰を!?」


翔はエアロックへ退避するよう促す整備クルーが避難民に拒否されるのを眺めながら言った。


「分からないよ、そんなの。だけどそうとしか考えられない」


「皆逃げろ!!」


翔はレンの言葉を遮って絶叫する。発進口のハッチが赤熱化し、穴が開く。猛烈な空気の流出と同時にマンジケルトが内部に飛び込んで来た。


「優歌!?」


突風に流される人や機材の中に幼馴染の赤いツインテールがはためくのを見つけた翔は心臓が凍り付く感覚に襲われ、反射的にレバーを倒す。


動いた!!


カデシュは格納庫内を保護するようにバリアーを張ると同時に優歌を右手で受け止め飛び上る。バリアーはフォトンバルカンを完全に弾き返すと同時にコクピットがせり上がり、開いたハッチから優歌が飛び込んで来る。


「待ってたって、優歌の事か!?」


「声が聞こえたの。ここへ来いって」


「・・・・どうでもいいけど早く座ったら!?あんたの席は翔の膝じゃなくてこ・こ!!」


抱き合う形になっていた翔と優歌に妙な苛立ちを感じながらレンはバンバンと自分の左側のシートを叩く。


「わかってるわよ!」


優歌はふくれっ面をしつつシートに潜り込む。


「フン、戦闘中にメロドラマやってる方がどうかしてる」


「行くぞ!」


パイロット達の会話中狭い格納庫内で両腕のフォトンライフルをバリアーで弾き返し続けていたカデシュは反撃に転じ、降下と同時に右腕を振り下ろす。


「なるほど」


ルオゾ・ム―は自機を移動させ人型へ変形させる。


「な・・・!」


変形時に足が格納庫に着いた瞬間、格納庫に留まっていた避難民を踏み潰した事に翔は絶句する。


「こ・・・こいつワザと人間がいる所で・・・!?」


カッと頭に血が上る。カデシュが逆袈裟に振り上げた右腕を再び変形で躱すとマンジケルトは180度機体を反転させ、カタパルト内を飛ぶ。


「ハッチ開けろ!敵はこちらの砲撃の死角に身を潜めている。カケル、気を付けろ!」


「はい!!カデシュ出ます!」


ルツの指示で自動修復中のハッチが開きマンジケルトが、少し遅れてカデシュが飛び出した。


「いたか!」


カルブンクルスの間近の隕石に隠れていたタラスがカデシュの上下からショックアンカーを撃ち込む。


「そいつは食らわない・・・!」


翔はプラズマソードを翼の鞘からせり出した状態で上昇、ワイヤーを2本とも切断上のタラスへソードを振り下ろした。


「カケル、来るわ!」


「ン・・・!?グッ!」


ソードがタラスの胸部を裂く直前、マンジケルトのフォトンバルカンが右腕を直撃し腕を僅かに逸らすと同時に2機の頭上を通過。腕と一体になった速射型フォトンライフルを後方に向けて連射し、カデシュの背中を焼く。


「クソッ、早すぎる!」


翔はカデシュの左腕装甲を変形させたフォトンライフルを撃つがマンジケルトの速度を追いきれない。唯一の救いはこの可変機の火力が低い事だった。


「マンジケルトを撃ち落とすのは至難の業よ。タラスの撃墜に集中して!」


「分かった!」


レンのアドバイス通り、隕石に隠れつつフォトンライフルを撃ってくるタラスに狙いを変えた翔の目と思考がライフルの引き金を引く。


「しまった!早すぎた!」


ライフルの光弾は回避運動に入ったタラスの左の空間を抜け、1拍遅れてタラスはカデシュの左に回り込む。そこへ再度翔はライフルを撃つ。先程よりも距離は近いが外れ。敵を追うカデシュにマンジケルトが下方から突撃しながら変形、猛烈なキックを叩き込むと同時に変形して離脱、別の2機が速射型フォトンライフルを左右から斉射。


「ナールライト司令の言った通りだな。マンジケルトとタラスの速度差を利用した作戦がこれ程有効だとは・・・有機生命体の目は我らと違い速度差の違いに一時的に目の焦点が合わなくなる。全く難儀な物だ」


戦闘は隕石の特に多い所へ移動していた。それはヘーレムの作戦が順調に進んでいる事の証明であった。


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