ライブラリ・アサルト!
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──ライブラリ・アサルト!
アリスたちが操る死霊と悪魔が警察軍と交戦中のとき。
アレックスたちは帝国議会図書館に到達していた。
「いやはや。警備は全部引き抜かれると期待していたのだが……」
「残念だね。警備が残っている」
帝国議会図書館にはヴォルフ中佐の命令で1個中隊の警察軍部隊が残っている。
その一部が今は閉館中の図書館正面入り口を防衛していた。
黒い軍服に黄金のグリフォンの羽根を刺したベレー帽の兵士。そして腰には破邪の量産魔剣バルムンクだ。
数は4名で警戒している。
「ううむ。強行突破するしかなさそうだ。準備はいいかい、エレオノーラ?」
「分かった。やりましょう、アレックス」
アレックスはそう言い、エレオノーラは魔剣ダインスレイフを構えた。
「相手は破邪の魔剣持ちだ。それだけは用心してくれたまえ。では、始めようか!」
アレックスとエレオノーラは堂々と正面から帝国議会図書館に接近。
「止まれ!」
すぐさま帝国議会衛兵隊の兵士が制止の声を上げる。
「やあやあ! いい夜だね、警察軍の兵卒諸君!」
「そこから動くな! それ以上近づけば斬る!」
兵士たちは教本通りにまずは不審者を制止し、身分を確認しようとしていた。
「こんな素晴らしい夜だからこそ死にたまえよ」
次の瞬間、魔法陣が浮かび上がり、そこからバビロンが姿を見せた。巨大なドラゴンが怒りに染まった爬虫類の瞳で警察軍の兵士たちを見渡す。
「クソ! まさかここも襲われるとは……!」
「中隊本部に応援要請!」
流石は警察軍の兵士たちであり、彼らは驚き、動揺すること少なく、すぐさま軍人とすべきことを始めた。
「爵位持ちの上級悪魔だな……」
「セオリー通り、悪魔の召喚主を叩くぞ」
「了解だ」
警察軍の兵士たちが狙ったのはバビロンではなくアレックス。
身体能力強化で肉体を強化した2名の兵士が地面を蹴って一気に加速し、アレックスめがけて一気に肉薄しようとする。
「させない」
しかし、彼らのバルムンクの刃がアレックスを捉えることはなかった。
それは途中に割り入ったエレオノーラによって阻止されたのだ。彼女のダインスレイフがバルムンクの刃を迎撃し、はじき返した。
「精神魔剣だと……! しかし、なぜバルムンクの破邪で無力化できない……!?」
警察軍の兵士はすぐにエレオノーラのダインスレイフの正体を見抜いたものの、どうしてそれがバルムンクに与えらえている破邪によって打ち消されないか理解できなかった。
「そのバルムンクの破邪は一種の付呪。つまりは呪い。私のダインスレイフは全ての呪いを支配する。あなた方のバルムンクの破邪も同様に」
エレオノーラはそう言い、ダインスレイフで兵士に襲いかかる。
「ぐう! おのれ……!」
まずひとりの兵士がダインスレイフによって屠られた。
「はーはっはっはっはっはっ! エレオノーラはそう簡単に突破されないよ! バビロンよ、焼き尽くせ!」
「クソッタレ──」
さらにバビロンが戦闘に加わり、兵士に火炎放射を浴びせた。兵士は一瞬で炎に包まれ燃え上がりながら地面に倒れる。
「さてさて。ゆっくりしている暇はない。急いで突破して、第66分館に押し入り、魔導書『禁書死霊秘法』をゲットして退散しなければ!」
「急ごう、アレックス!」
エレオノーラが先頭に立って進み、アレックスたちは帝国議会図書館に押し入った。
「敵を通すな! 阻止しろ!」
エントランスを潜れば、すぐさま警察軍の魔術師たちが攻撃を浴びせてくる。無数の錬成された魔力砲弾が飛来し、バビロンがアレックスたちの盾となってそれを受けた。
バビロンは反撃のために炎を蠢かせ始めた、が──
「バビロン! 火炎放射は禁止だ! 本が焼けてしまう!」
アレックスがそれを制止する。
目標はあくまで『禁書死霊秘法』の獲得であり、『禁書死霊秘法』は本だ。火炎放射などして帝国議会図書館が燃えれば喪失してしまう。
渋々というようにバビロンは炎を鎮めると肉薄して攻撃を始めた。
「私も道を切り開く」
続いてエレオノーラのダインスレイフを構えて突撃。バビロンに気を取られていた警察軍の魔術師を容赦なく屠る。
「賊ども! そこまでだ!」
ここで警備に当たっていた中隊主力が迎撃に現れた。
1個中隊約300名の将兵が帝国議会図書館の広大なフロアに展開し、鞘から抜いた魔剣バルムンクの剣先をアレックスたちに向ける。
「ん。あなたはヴィトゲンシュタイン侯爵家の……!」
そこで現れた中隊を指揮しているのはリドレー大尉だった。エレオノーラの相手をして、バルムンクなどを紹介した警察軍の将校だ。
「知り合いかい、エレオノーラ?」
「少し。でも、私の刃は鈍らない」
エレオノーラはダインスレイフを構え、その剣先をリドレー大尉たちに向けた。
「結構だ。では、片付けよう。バビロン──ッ!」
帝国議会図書館の天井を突き破り、バビロンがその巨体をもたげる。その巨体がさらに膨張するように巨大化していくのが下からでも分かった。
「踏みにじれ!」
その巨体をバビロンが前進させる。
「真正面からあの化け物の相手をするな! 召喚主を叩け!」
「我々はあれを引き付けておきます、リドレー中隊長殿!」
「頼むぞ!」
1個小隊が陽動を受け持ち、残りはアレックスを狙う。
残りは3個剣衛兵小隊と1個魔術衛兵小隊だ。
「やらせはしない」
身体能力強化を使用し、下手な銃弾より高速で迫りくる警察軍部隊を相手にエレオノーラが迎撃に動く。
「貫け」
瓦礫が呪いによって槍を形成し、それが一斉に警察軍部隊に向けて放たれる。
「各員、バルムンクを最大限活用しろ! 魔術師殺しの名は伊達ではないと示すのだ!」
「了解、中隊長殿!」
帝国議会衛兵隊が装備するバルムンクの破邪がエレオノーラが形成した呪いの槍を無力化し、その槍が崩れる。
「よし。このまま──」
「随分とシンプルな陽動に引っかかる」
警察軍の兵士が突破できたと思ったとき、横合いからエレオノーラが突如として表れて彼らに襲い掛かった。
「破邪で無力化されることそのものは想定済み」
「クソ! 相手も魔剣を──」
ダインスレイフが次々に警察軍の兵士たちを屠り、エレオノーラを止めようと勇敢な兵士たちが彼女に挑む。
「強力な悪魔召喚者と精神魔剣持ちのコンビとは。それに帝国議会議事堂方面での同時に起きたテロ。かなり計画された襲撃のようだ……!」
「中隊長殿。ここは我々が命を賭してでも食い止めます」
「すまん。任せるぞ」
さらにここで1個小隊がエレオノーラを押さえるために離脱。
「私に続け! 召喚主を確実に叩く!」
「了解!」
バビロンを突破し、エレオノーラを突破したリドレー大尉が指揮する警察軍部隊がアレックスに向けて迫る。
「おやおや! ここまで突破されるとは! しかし、しかしだ!」
アレックスは哄笑すると首を横に振った。
「私はまだ一番重要なカードを切っていない。サタナエル!」
アレックスのその叫びと同時に崩れた図書館の天井から何かが飛び降りてきた。
「いつ呼ぶのかと待ちくたびれたぞ、アレックスの小僧」
そして、地獄の皇帝サタンのアバターたるサタナエルが姿を見せる。
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