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クーデター勃発

……………………


 ──クーデター勃発



「斬り込め! 政府施設を陥落させるんだ!」


 ミネルゼーンにおいて突如として第九使徒教会から派遣されていた聖騎士団が武装蜂起し、神聖イオリス帝国の政治中枢の占領を図った。


 その突然として起きた事件に、ミネルゼーンには動揺が走っている。


「ついに起きたな」


 早朝の時間帯にクーデター勃発の報告を受けてビューロー宰相が閣議を開く。


「ヴォルフ大将。ここは安全なのだな?」


「はっ! 安全です、閣下。クーデターを起こした聖騎士は現在ミネルゼーンの北部に押しとどめております」


「よろしい。それではこれからのことについて話し合おう」


 ビューロー宰相は黒色同盟との講和は継続すること。第九使徒教会とは国交を断絶すること。そして、ヴォルフ大将率いるこの事態に備えていた警察軍部隊によって速やかに事態を鎮圧すること。


 これらを決定し、実行を指示した。


「ヴォルフ大将閣下。ビューロー宰相より第九使徒教会のクーデター部隊を制圧せよとのことです」


「よろしい。反撃開始だ」


 ヴォルフ大将は第1~第4警察軍擲弾兵師団を指揮して、第九使徒教会の聖騎士団の鎮圧に差し向けた。


「警察軍だ!」


「第九使徒教会の反乱勢力を叩け!」


 昨日までは友人であった彼らが殺し合い、ミネルゼーンの市街地に血が流れる。


 ミネルゼーンの北部にある一部の官庁を制圧していた第九使徒教会であったが、神聖イオリス帝国の反撃を受けて瞬く間にミネルゼーンから駆逐されていく。


「クソ。まるで我々がクーデターを起こすのを察知していたようではないか!」


 第九使徒教会側の司令官がそう憤慨する中、ついに第九使徒教会はミネルゼーンからの撤退を図った。


 警察軍の追撃を受けながらも第九使徒教会はミネルゼーンから撤退し、それからは彼らの総本山であるブリギット法王国に向かった。


「無事にクーデターは制圧されました」


「よろしい。後は講和を急ごう」


 ミネルゼーンとカイゼルブルクの間で外交書簡が何度も交わされ、それから両陣営の全権大使による外交交渉が始められた。


 事実上、敗北した立場にある神聖イオリス帝国からは関係者の免責が求められ、黒色同盟はそれを了承。そして、黒色同盟からは神聖イオリス帝国の解体とイオリス魔術帝国への併合が求められた。


 お互いにそれを承認したとき、内戦は終わったのだった。


「終わったみたいだ。少なくとも帝国を巡る内戦は」


 アレックスは『アカデミー』の会合の場でそう宣言。


「後は第九使徒教会とブリギット法王国?」


「まさに。残すは彼らだけだ。トランシルヴァニア候によれば、これから続々とかつての連合国側だった国々が我々に対して下るだろうと考えているが、ブリギット法王国においてそれはないそうだ」


 エレオノーラが尋ね、アレックスがそう答える。


「坊主どもと最終決戦か」


「素晴らしい作戦を準備してもらいたいものだね」


 カミラが吐き捨てるようにそういい、アレックスはそう笑った。


「しかし、将軍たちはまだやる気が残っているのでしょうか? ここまで勝利すれば、もう後は講和してもいいだろうと考えるのでは?」


「将軍たちがそう考えたところで、向こうが応じなければ何の意味もないのだよ、ジョシュア先生! 相手は黒魔術師を目の敵にしている。我々が全員縛り首にならない限り、講和はあり得ない」


「そういうものですか」


「そういうものだよ」


 連合国の他の国は黒魔術について妥協できるが、ブリギット法王国だけはそれは不可能なのである。そうであるが故に彼らは戦い続けなければならない。


 事実、他の連合国諸国が降伏に向かう中、ブリギット法王国は軍を集め続けている。


 そして、この問題は黒色同盟最高統帥会議にも認識された。


「ブリギット法王国を攻め落とさなければならない」


 シュライヒ上級大将がそう宣言。


「まさにだ、閣下。我々が枕を高くして眠るには連中の首を刎ね飛ばさねば」


 黒色同盟最高統帥会議にはアレックスも出席していた。


「ごほん。ブリギット法王国への全面侵攻を現在計画中だ。この作戦が実行された暁には敵も撃破されることだろう」


「どのような計画だ?」


 シュライヒ上級に尋ねるのはオフィーリア元帥。


「まずは頭を切り落とす。敵首都への空挺降下作戦によって」


 シュライヒ上級がそういって地図を指さした。


 ブリギット法王国首都セルウィウス。その一点をシュライヒ上級は指している。


「敵首都制圧後は地上軍を順次進行させて敵を殲滅。敵戦力はもはや我々より圧倒的に劣勢であるため、この点は問題ない」


「連合軍は瓦解し、もはや第九使徒教会の保有戦力だけが相手だからな」


 シュライヒ上級大将の言葉にコルネリウス元帥が頷く。


「そう、第九使徒教会のみだ。だが、ブリギット法王国の陥落に手間取れば、今は講和の姿勢を見せている連合国加盟国が意見を翻す可能性もある。よって、我々は可能な限り迅速にブリギット法王国を落とさねばならない」


 シュライヒ上級大将が敵首都空挺降下などという大胆な戦略を取ったことの意味が、彼のこの言葉に要約されている。


 戦争を可能な限り早く終わらせなければ、少しの遅滞が、大きな遅滞を生む。


「当然ながら抵抗が予想されるだろう。ブリギット法王国は自分たちの生き残りのためになんだろうとするはずであり、我々はそれを粉砕しなければならない」


「任せておきたまえ! 空挺降下には我々『アカデミー』が志願しよう!」


 シュライヒ上級大将が重々しく言うのを嘲るようにアレックスがそう提案。


「他にも戦力は必要だな」


「私が出よう。面白くなりそうだからな」


 そして、ここでさらにオフィーリア元帥が声を上げる。


「インナーサークルも動員可能ならば動員してほしい」


「メアリー殿下にお伝えしておきましょう」


 アレックスの要求にハーディング上級大将が頷く。


「では、ブリギット法王国は首都セルウィウスの制圧向けて!」


 アレックスたちはそれからセルウィウス降下作戦に向けて進んだ。


 まずアレックスたちはブリギット法王国との前線に進出。


「これで戦争は本当に終わるんですよね?」


「知らないよ、アリス。私が戦争を長引かせているわけじゃないんだから」


「うへえ」


 アリスがいつものように消極的なのをアレックスが笑う。


「流石に自分たちの首都が落ちて抵抗が続けられるほど、連中の士気が高いわけでもあるまい。これで恐らくは終わりだ」


「ええ、殿下。これで終わりでしょう」


 カミラとトランシルヴァニア候はそういっていた。


「アレックス。戦争が終わったら何をする?」


「まだなーにも考えていないよ、エレオノーラ! けど、できれば暫くは君と一緒に過ごしたいね。どうだろうか?」


「もちろんだよ!」


 アレックスが求めるのにエレオノーラが頷く。


「メ、メフィスト先生、私たちも戦争がを終わったら……」


「ああ。もちろんだよ、ハニー」


 アリスもメフィストフェレスにそういい、メフィストフェレスが頷く。


「戦争も終わらないうちから欲情とはな」


 カミラはその様子を見て飽きれたように言った。


「『アカデミー』の諸君! 作戦会議だ! 来てくれ!」


「了解!」


 伝令の兵士が走ってきて告げるのにアレックスたちは司令部へと向かう。


「よく来てくれた、『アカデミー』の諸君。そして、ようこそドラゴンブレス作戦へ」


 そういうのは本作戦司令官であるアルカード吸血鬼君主国のローガン・アップルトン大将である。


「ドラゴンブレス作戦?」


「セルウィウス降下作戦の作戦名だ。この戦いで決着をつけるぞ」


 エレオノーラが首を傾げるのにアップルトン大将がそういった。


「さて、将軍! 我々はどうすればいいのかね? 敵陣に一番槍かい?」


「そうなる。君たちは降下第一陣に割り振った。これまでの君たちの功績を考えるに問題なく任務は果たせるであろう」


「何とも名誉なことだ!」


 アレックスが皮肉気にそういい、アリスたちはため息。


「安心したまえ。この作戦には動員できる全ての戦力が動員されている。君たちと同時に1個連隊の戦力が降下するし、火力支援にはツェッペリン卿が確保してある」


「むしろ、ツェッペリン卿に無差別砲撃させればいいのでは?」


 そう身もふたもないことをいうのはジョシュアである。


「それでは駄目だ。我々は確実に首都セルウィウスを押さえ、それによって敵戦力を後方に拘置しなければならないのである。ただ、セルウィウスを破壊すればいいというわけではない」


「なるほど。作戦開始は?」


「1時間後だ。準備をしておいてくれ」


 そして、セルウィウス降下作戦たるドラゴンブレス作戦の準備が進む。


 ありったけのドラゴンとグリフォンがかき集められた。降下部隊の中には警察軍の帝国鷲獅子衛兵隊も含まれている。


「作戦開始! 作戦開始!」


 そして、いよいよ作戦は開始された。


「さあ、行こう、諸君! 戦争に勝利するのだ!」


「うん。何としても勝とうね!」


 アレックスがそう励ましてドラゴンに乗り込み、エレオノーラたちが続く。


 総動員されたドラゴンとグリフォンは一斉に飛び立ち、空を覆いながら、ブリギット法王国首都セルウィウスへと飛行。


『敵防空網の反応なし! 予定通り、降下を実行せよ!』


……………………

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