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神聖イオリス帝国による反撃

……………………


 ──神聖イオリス帝国による反撃



「まさかザルトラントに敵が上陸しただと……!?」


 神聖イオリス帝国首都ミネルゼーンにて開かれた会議の場にて、列席者たちが呻いていた。彼らはうろたえ、混乱し、どうしていいのかと悩んでいた。


 アドラーベルクを巡る攻防戦で敗北し、もはや負けられないはずだった神聖イオリス帝国だったが、彼らはザルトラントにおいて黒色同盟軍の上陸を許した。


 いまやザルトラントからは何万もの戦力が戦線を拡大させつつあり、予備戦力も不足する中、神聖イオリス帝国は手を打てずにいた。


「どのように対処すべきか。それを提示してもらいたい、クイルンハイム上級大将」


 そう言うのはビューロー宰相で、その傍には皇帝マクシミリアンがいた。


「はっ。ただちに全ての予備戦力を投入して敵上陸部隊がこれ以上我々の後背を荒らしまわるのを阻止します。それがまず第一です」


「しかし、予備戦力はアドラーベルクに投じたのではないか?」


「まだ戦力には余剰があります。またアドラーベルクでの敵の圧力も軽減されているため、戦力を引き抜いて投入することは可能です」


「なるほど。分かった。そのように対処したまえ」


 こうしてアドラーベルクから戦力が引き抜かれ、ザルトラントから浸透し、後方連絡線を食い荒らす黒色同盟軍への対処が決定した。


 予備戦力が戦略機動し、ザルトラントに上陸した敵部隊に向かう。


 その中には第九使徒教会から派遣されていた神聖義勇軍の姿もあった。


「ついに到着しましたね」


「ああ。敵はこの近くにまで進出している。しかし、厄介だな」


 ガブリエルが言うのにアウグストがそう唸る。


 遠くから砲声が響くと不意に大爆発が起きるのだ。そう、マリアの魔術砲撃が、彼女の寝返りによって黒色同盟側に渡っているのである。


「味方だと心強かったが、敵に回すと面倒だ。我々も黒色同盟のように暗殺を視野に入れて行動すべきなのかもしれない」


「それは恥ずべき行為かと。暗殺などせずとも我々は勝てます」


「しかし、正面から戦えば犠牲は大きい。我々には莫大な犠牲の上に勝利するという余裕はもはやないのだから」


「限られたリソースで戦わなければならないですか」


「そういうことだ」


 名誉ある戦いは確かに素晴らしい。だが、実際の戦場は天使が戦っているわけではないのだ。


「司令部はザルトラントいる黒色同盟軍を追い落とすことを計画しており、ザルトラント奪還に向け準備中だ。そこには温存できる兵士のひとりも、躊躇って実行できない計画のひとつもないろうだ」


「了解」


 神聖義勇軍もザルトラント上陸に対する反抗作戦に組み込まれており、作戦においてはザルトラント突入があった。


 それにマリアの排除が加わったのは数時間後のことだ。


「諸君。我々はそろそろ行動に出なければ」


 そして、この作戦の司令官であるテオドール・フォン・ウッカーマン大将によって作戦開始が指示された。


 このザルトラント奪還作戦はツェルベルス作戦と呼称。


 作戦の内容は実にシンプルな攻撃と包囲を行う外線作戦あり、最終的にザルトラントを奪還することで成功とするものだ。帝国陸軍第4軍から第10軍団が右翼から圧力を、第15軍団が左翼から圧力をかける。


 神聖義勇軍は帝国陸軍第15軍団に参加して攻撃を行う。


「全軍前進開始!」


 そして、神聖イオリス帝国軍が動き始めた。


「敵だ! 敵の反攻だ!」


「阻止攻撃を要請!」


 ザルトラントから前進にその付近に籠っていた黒色同盟軍の兵士たちが叫ぶ。


「阻止砲撃要請です。ツェッペリン卿」


「分かった。叩き込んでやろう」


 迫る神聖イオリス帝国軍に向けてマリアが魔術砲撃を実行。


 無数の巨大な爆発が神聖イオリス帝国軍部隊の傍で生じる。


 マリアは遥か後方の厳重に守られた地点から砲撃を行っており、ザルトラントにすら手が届いていない神聖イオリス帝国軍にはどうしようもなかった。


「いやはや。凄まじい威力だ!」


 アレックスは善戦付近でマリアの放った魔術砲撃を見ながら歓声を上げていた。


「我々はよくこれを相手に戦えたものだ」


「そうだね。私もびっくりしている」


 アレックスとエレオノーラがそう言葉を交わす。


 アレックスとエレオノーラは前線付近に進出し、そこで迫りくる神聖イオリス帝国軍を撃退しようと考えていた。


「だが、敵も魔術攻撃をしのいで前進しているようだ。流石に砲撃だけで勝利しようと考えるのは無謀だったかな?」


 アレックスが言うように敵部隊はマリアの激しい魔術攻撃の中をくぐり抜けてきた。


「じゃあ、仕事だね、アレックス」


「そうとも。やるとしよう! バビロン!」


 巨大なドラゴンの体がそこに出現し、目の前に現れた。


 その表情には憤怒のそれがにじみ出ており、そのような感情のままバビロンが神聖イオリス帝国軍に襲い掛かる。


 バビロンは破壊と死を振りまき、前進してくる敵戦力を迎撃。ちょっとした方面軍レベルの戦力であるバビロンを敵は撃破できずに、追い散らされていく。


「はははは! バビロンを何人たちとも突破はできな──」


 アレックスはそう哄笑したところでバビロンの首が落ちた。


「おや。誰かと思えば、我々の級友ガブリエル君じゃあないか!」


 そう、戦場に姿を見せたのは他でもないガブリエルだ。彼女が聖ゲオルギウス騎士団の聖騎士(パラディン)たちとともにザルトラント奪還を目的としたツェルベルス作戦に加わっていた。


「前進を! ツェッペリン卿を討ち取ってください!」


「おう!」


 ガブリエルが単騎でバイロンを押さえている間に、聖ゲオルギウス騎士団の聖騎士(パラディン)がマリア排除のために戦線を突破していく。


「エレオノーラ! 連中を通してはならない! 私がガブリエル君の相手を!」


「了解だよ、アレックス!」


 アレックスがバビロンを使ってガブリエルと、エレオノーラは突破を試みた聖ゲオルギウス騎士団の聖騎士(パラディン)たちを。それぞれ相手にする。


「ガブリエル君! そう簡単に突破できると思っているならば大間違いだ!」


「黙れ。ここを突破して裏切り者を殺し、そして勝利する」


 ガブリエルはエクスカリバーでバビロンを切り刻み、死ぬことのない彼と互角に戦っていた。彼は殺され、生き返り、そしてまた殺されるのを繰り返している。


「恐るべき力だ。流石に私だけでは手に余るよ」


 アレックスは苦笑いを浮かべて、そう呻く。


「しかし、だ。君はバビロンを決して殺せない。それだけは確かだ!」


 バビロンはその存在を潰えさせることなく、ガブリエルを足止めし続けている。


 その間、エレオノーラも突破を試みていた聖ゲオルギウス騎士団の聖騎士(パラディン)たちと交戦状態にあった。


「クソ! どうしたただひとりの黒魔術師に──」


「気を付けろ! そこらじゅうのものを呪いでコントロールしているぞ!」


 エレオノーラは呪いを使って周囲のものを操り、刃や槍にして聖ゲオルギウス騎士団の聖騎士(パラディン)たちに叩き込んでいた。


「ここは通さない。何があろうとも!」


 エレオノーラはそう宣言し、聖ゲオルギウス騎士団の聖騎士(パラディン)たちを殲滅する姿勢に入った。


「クソ! 団長がいてくれたら……!」


「文句を言うな! 戦え!」


 今回の戦いにおいて聖ゲオルギウス騎士団の団長アウグストと副団長エミリーは、第九使徒教会の総本山たる法王庁からの指示で参加していなかった。


「このまま殲滅しよう!」


 ガブリエルがバビロンに手を取られている間にエレオノーラと黒色同盟軍主力が聖ゲオルギウス騎士団の聖騎士(パラディン)たちに猛攻。これを徐々に後方へと教え返していく。


「不味い、ですね……!」


 エレオノーラたちは猛攻撃によって一斉に戦線を動かしており、このままではガブリエルが孤立してしまう。


「どうするかね、ガブリエル君! このまま君を屠るもの素晴らしい話だろう!」


「私はそう簡単にやられたりしない」


 ガブリエルはバビロンをいなしながら、撤退を試み始めた。友軍の撤退支援とともに自身が敵地で孤立することを避けるためだ。


「お前はいつか必ず殺す、アレックス・C・ファウスト」


 そして、ガブリエルは撤退していった。


……………………

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