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ロットリッツ、チャージアサルト!

……………………


 ──ロットリッツ、チャージアサルト!



「そろそろですかね?」


「いえ。まだ連絡はありませんな」


 司令部奇襲作戦において陽動用の悪魔召喚チームであるアリスが呟き、同じチームであるトランシルヴァニア候が告げる。


「しかし、これはとても便利ですね。私には思いつきませんでした」


 一方同じチームのジョシュアが関心を持ってみるのは、アリスが使役する下級悪魔の使い魔(ファミリア)を宿した人形だ。


 この人形はアリスが構築したネットワークに接続されており、今まさに戦場にいる『アカデミー』の面々はもちろんとして、他にもカイゼルブルク政権軍の各部隊に通信を行うことが可能だ。


「ああ。それですか? 私が考えたわけじゃないんですよ。これを通信のための道具にあれこれ細工したのはアレックスです」


「なるほど。彼はいろいろと新しい発想をするのですね」


 アリスがそう言い、ジョシュアが頷きながら悪魔に施された魔術を分析。


 この下級悪魔の通信ネットワークはインターネットの歴史の初期に目指されたものに似ている。すなわち、ARPANETのそれで、いくつかの端末が破壊されてもネットワークが維持されるというものである。


 その仕組みは電話のような特定の回線を指定し、占有して通信を行うものでは、回線が集中する中継局が必要になる。そして、その中継局が破壊されると一切の通信が不可能になってしまう。


 だが、このアレックスが提案した通信網はデータを複数の中継機を設け、そのいくつかが破壊されても破損した部位を迂回してデータが届けられるものとなっている。


「本当に面白い仕組みです。彼はどこでこのような仕組みを思いついたのでしょうか? 学園ではないでしょう。あそこでそこまで高度なことは教えていませんから」


「学問は議論によって発展するとは言いますから、彼も誰か議論をする相手がいたのかもしれません。彼と同じくらいの発想力と実現に至るまでの技術力を有する人間がいた可能性も。まあ、可能性ですが」


「興味深い」


 インターネットの構造を覚えていても、それを下級悪魔の使い魔(ファミリア)で実現するというのには技術力が必要になる。


 黒魔術の権威であるアレックスにとってはその点は問題なく、アリスに仕組みと実現方法を通達し、今のネットワークが維持されているのだ。


『全軍に通達、全軍に通達!』


「おっと。アレックスからですよ」


 ここでアレックスからの連絡が響いた。


『予定通り攻撃開始! 攻撃開始!』


 アレックスから発されたのは攻撃開始命令。


「では、行きますか。使い魔(ファミリア)、ゴー!」


「やりましょう」


 アリスたちは下級悪魔、中級悪魔、死霊を使い魔(ファミリア)として使役し、それによって編成した軍隊を陽動のために送り込んだ。


 陽動であるため、作戦目標があるロットリッツではなく、それとは全く別の場所にある集落に向けて悪魔たちはけしかけられた。そこにいるミネルゼーン政権軍のパトロールなどが慌てて対応する。


「敵だ! 悪魔と死霊が多数!」


「クソ。総員抜刀!」


 小隊規模のパトロールがアリスたちの使い魔(ファミリア)と交戦開始。


「始まったようだ、エドワード兄」


 そして、吸血鬼チームにも連絡は来ていた。


「そのようだな。俺たちも動くとしよう。許可は出ているのだろう?」


「ああ。順次暴れろ、だそうだ」


「では、思いっきり暴れてやるとも」


 カミラの言葉にエドワードが頷く。


「あれが目標だな、エドワード?」


「そうだ。警察軍の治安部隊。あれを叩いて盛大な陽動としよう」


「了解だ」


 エドワードの言葉にヴィクトリアがにやりと笑う。


 カミラたちが狙っているのはアルトゥール・ヴォルフ警察軍中将隷下の警察軍治安部隊の一部だ。先の兵站基地攻撃を受けてゲリラ狩りを始めたヴォルフ中将の命によって、子の場所にも1個中隊から2個中隊の戦力が展開している。


「カミラ。お前は後方から魔術砲撃を。前に出る必要はない」


「ふむ。いいのか、兄上?」


「後方からの支援があれば、俺としてもありがたいからな。頼むぞ」


「分かった。援護しよう」


 エドワードの言葉にカミラが頷き、魔術砲撃の準備を開始。


「過保護だねえ、エドワード」


「ふん。今の俺は王位継承権のない死んでも代わりのいる人間だが、カミラはそうではない。全ては祖国のためだ。余計なことを考えるな」


「はいはい。じゃあ、大暴れと行きますか」


 そして、カミラが魔術砲撃を行った直後、エドワードたちが警察軍に襲い掛かった。


「接敵、接敵!」


「信号弾を打ち上げろ! 急げ、急げ!」


 薄く展開している警察軍所属の治安部隊の目的は忍び込んだ敵工作員の包囲と発見であり、撃破に帝国陸軍の部隊も動員される。その動員のための信号弾が空高くに打ち上げられ、周囲に敵の存在を知らせた。


 しかし、アレックスたちの目的は変わらずロットリッツの司令部だ。


「おー! みたまえ、エレオノーラ。みんなが陽動に成功したようだよ。あちこちで信号弾が乱れ撃ちされている。これでは敵も大混乱だろう」


 アレックスは周囲で打ち上げられる信号弾を眺めてエレオノーラにそう言った。


「なら、そろそろ始めないとね」


「ああ。今回はサタナエルもいない。私たちだけだ。不安はないかい?」


「アレックスがいれば大丈夫」


 アレックスのその問いにエレオノーラが笑顔で応じた。


「そうか。ならば、その信頼には答えなければね。始めよう!」


「ええ」


 アレックスとエレオノーラは作戦目標が存在するロットリッツに向けて進む。


「止まれ!」


 ロットリッツに近づくとすぐさま警察軍の歩哨に呼び止められた。


「陸軍の軍服を着ているが、妙に幼いな! どこの所属だ! 答えろ!」


「いやはや。申し訳ない。これで許してもらえるかな? バビロン!」


 警察軍の兵士が怒鳴るのに、アレックスはすぐさまバビロンを召喚。


「なっ──」


 バビロンの巨大な足が警察軍の兵士を踏み殺す。


「クソ! こいつらはカイゼルブルク政権軍の連中だ! 黒魔術師だぞ!」


「応戦しろ! 総員抜刀!」


 警察軍の兵士たちはすぐさま応戦を開始。帝国議会衛兵隊も装備していた魔剣バルムンクを抜き、隊列を組んで、それらを構える。


「許してなんて言わない。ここは通らせてもらうから!」


 エレオノーラが魔剣ダインスレイフを構え、呪術で形成した槍を従えながら、警察軍部隊に向けて突撃。


「馬鹿な! バルムンクには破邪(ブレイクスペル)の効果があるというのに──」


「その程度の破邪(ブレイクスペル)では私の攻撃は防げない!」


 エレオノーラはバルムンクの破邪(ブレイクスペル)に干渉して効果を失わせ、その隙にダインスレイフの刃で警察軍を撃破していく。


「その調子だ、エレオノーラ! さあ、ロットリッツへ!」


 アレックスもバビロンを前進させてロットリッツに向かう。


 そのころ、ロットリッツは大混乱に陥っていた。


「こちらでも悪魔を確認! 黒魔術師も確認されたとの報告が──」


「ヴォルフ中将より連絡! 警察軍部隊が一時撤退! 陸軍の治安維持部隊の展開を待つとのことです!」


 ロットリッツにある司令部はまさに後方の治安維持と兵站を担う部隊の司令部だ。そこにいる司令官のシュラーブレンドルフ大将は次々に入ってくる敵出没の情報に眉間に深い皺を浮かべていた。


「閣下! どうなさいますか?」


「落ち着きたまえ。慌てても余計に混乱するだけだ。まず、敵ゲリラ出没の連絡があった場所に兵力を集中。それから後方の兵站基地や司令部などの守りを固める」


 参謀が尋ね、シュラーブレンドルフ大将が答えていく。


「敵がゲリラ戦に出ているということは、こちらの主力との戦いを避けなければならない小部隊であることを意味する。であるならば、こちらが主力を動員して対処すれば容易に撃滅できるだろう」


 シュラーブレンドルフ大将はうろたえる部下たちにそう言って聞かせた。


「了解しました、閣下。では──」


「報告っ!」


 参謀たちがアレックスたちゲリラを撃破するための作戦を計画しようとしたとき、息を切らせた伝令が司令部のある民家に飛び込んできた。


「何事だ?」


「敵です! 上級悪魔と黒魔術師2名がこの司令部に向かっています!」


「なんだと!」


 シュラーブレンドルフ大将たちが大きく目を見開いた。


……………………

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