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恐れ知らずの切り込み部隊

……………………


 ──恐れ知らずの切り込み部隊



 アレックスたちは同盟最高統帥会議で決定されたツヴァイヘンダー作戦において、アレックスが提案したように少数精鋭の切り込み部隊として作戦に当たることになった。


「『アカデミー』の同志とその友人たち!」


 アレックスが作戦に参加するメンバーを見渡して声を上げる。


 この作戦に参加するのは『アカデミー』のメンバーはもちろんとして、アルカード吸血鬼君主国からエドワードとヴィクトリア、バロール魔王国からオフィーリア元帥が参加している。


「我々は同盟最高統帥会議より名誉ある先駆けを任された! 敵に殴り込んで大暴れしてやろうじゃあないか!」


「具体的な作戦はあるんです?」


 アレックスが大笑いして語るのにアリスがそう尋ねる。


「もちろんだよ。あるとも、あるとも。説明しよう!」


 アレックスはそう言って説明を開始。


「我々はコルネリウス元帥から拝借した空軍のドラゴンによって敵地後方に機動。密かに降下し、そこから友軍の攻撃前に兵站基地や司令部を襲撃して暴れ回る。そのいい感じに敵が弱ったら、進軍してくる友軍に合流だ」


「ふむ。まるでオーウェル機関の準軍事作戦要員(パラミリ)どもが行うような作戦だな。参考にしたのか?」


「まさに、だ、エドワード。こういうのを業界では特殊作戦と呼ぶのだよ」


 エドワードが尋ね、アレックスがどやりながら返す。彼には前世でイギリスの特殊空挺部隊(SAS)やアメリカのネイビー・SEALsが行った作戦などの知識もある。


「しかし、我々だけで敵地に降下するのですか? いささか無謀に思えますが」


「ジョシュア先生! 今回は留守番は残さないよ。それに前にやった共和派への斬首作戦でも少数で敵地深部に殴り込んだじゃないか」


「それは、まあ、そうですが……」


 ジョシュアは見るからにやる気がなさそうだ。


「アレックス。作戦についてもっと詳しく説明しよう。予想される敵の規模とか」


「オーケーだ」


 エレオノーラは同盟最高統帥会議の作戦会議に参加していたので、今回の作戦において自分たちが何をすべきが理解している。


「まず我々が降下するのは偵察飛行の結果、ミネルゼーン政権軍が終結しつつある地点が判明している場所、その近辺だ」


「敵地のど真ん中に降下か? 自殺にしては回りくどいな」


「そんなことはない、カミラ殿下。ちゃんと降りてすぐに敵に遭遇しない場所に届けてくれるとコルネリウス元帥から約束を取り付けている」


 カミラが呆れたように言うのにアレックスはにやりと笑ってそう返す。


「それにミネルゼーン政権軍の防空網は今のところ機能していない、そうだ。すでに何度も偵察飛行や爆撃を行っているが、それに対する反応はほとんどない、と」


「本当なんです? あえて見逃してるだけとか……」


「だとしても、我々の側に内通者がいなければ本当に攻め込んできたときに迎撃できないだろう?」


「うーん」


 アリスは何やら不安そうだった。


「途中で落とされれば、落とされた場所で暴れるだけだ。問題はないだろう」


「実に悪魔の中でももっとも獰猛な皇帝らしいな、サタン」


 サタナエルが苛立った様子で言い、オフィーリアが笑いながらそう言った。


「士気が高いようで嬉しいよ。遭遇が予想される戦力も後方の治安維持担当である警察軍が大きくて1個大隊程度だという話だ」


「1個大隊は800名から1000名だって将軍たちは言っていたね。けど、こっそり動けば交戦は避けられるよね?」


「うむ。正面から戦うことは想定していないよ!」


 エレオノーラが思い出しながら告げ、アレックスが頷く。


「作戦においては可能な限りこそこそと行動して、兵站基地を焼き払い、司令部を吹っ飛ばす! 以上だ! 何か質問は?」


「いざという場合の脱出手段は?」


「そんなものはない」


「うへえ」


 アリスの質問にアレックスが平然とそう返した。


「それから我々は正規軍の将兵ではなく、シュヴァルツラント陸戦条約を守るつもりもないので、作戦においては一時的にミネルゼーン政権軍の軍服を使用する」


「それは随分な条約違反行為ですね」


「それを言ったらスパイだって条約違反だろう、トランシルヴァニア候?」


 シュヴァルツラント陸戦条約は戦争における人道を守るために人類国家同士やアルカード吸血鬼君主国などの間で締結された条約だ。


 このシュヴァルツラント陸戦条約では正規軍の将兵以外の軍服着用は禁止されており、当然ながら他国の軍服を装備することも禁止されている。


 だが、アレックスはそんなものを守るつもりはないようだ。


「シュヴァルツラント陸戦条約を守らないということは、こちらが捕虜になった際の人道的待遇も守られないということになるが。当然ながら、ちゃんとそのことも考えてのことなのだろうな?」


「ああ。当然考えているよ。みんな、捕虜にならないようにね!」


「随分と簡単に言ってくれる」


 アレックスの言葉にカミラが呆れる。


 シュヴァルツラント陸戦条約は捕虜の人道的待遇も規定されており、このシュヴァルツラント陸戦条約があるからこそ捕虜は守られているのだ。これを守らなければ、相手も自分たちを人道的に扱わないことになるだろう。


「そもそもアルカード吸血鬼君主国はシュヴァルツラント陸戦条約に調印したが、バロール魔王国は無視していて、今も調印していない。だから、我々だけが条約を守ってもほとんど意味はないよ」


「そうかもですね。バロール魔王国の力を借りた作戦ですし」


「というわけで、シュヴァルツラント陸戦条約は思いっきり破ろう!」


 アレックスたちは条約破りをカジュアルに決定した。


「作戦は友軍が配置についてからだよ。ちゃんと友軍と連携して行動しないと敵地で孤立することになるからね」


「そうだ、エレオノーラ。友軍との連携が大事だ。我々が暴れて混乱を起こしても、友軍の正面からの攻撃なくしては意味がない!」


「私たちはあくまで補助。けど、全力を尽くすよ」


 エレオノーラとアレックスが言うように彼ら『アカデミー』が暴れたあとで、友軍が正面から攻撃を仕掛けるまでが作戦だ。友軍との連携なくしてこの作戦の成功と勝利はないのである。


「それでは作戦に備えて待機だ。作戦の予定される時間は半日から1日程度だそうだ。水やおやつを準備しておくとよいだろう。ドラゴンから飛び降りたら、その後は友軍と合流するまで補給はないぞ!」


「日持ちするクッキーを焼いてあるからほしい人は取りに来てね」


 アレックスとエレオノーラがそれぞれそう言い、作戦に向けた準備が始まる。


「軍服はどこでもらえるんです?」


「今、補給将校からもらってきたところだ。これがミネルゼーン政権軍の軍服だ。どこで見られているかもわからないし、友軍も混乱するから今は着用しないように!」


「はいはい」


 アリスたちはアレックスから使用する帝国陸軍の軍服を受け取る。


 その間にも友軍──カイゼルブルク政権軍は攻勢開始位置に集結していた。


 カイゼルブルク政権の帝国陸軍と警察軍より、エルヴィン・ヴァイクス陸軍上級大将が指揮するヴァイクス軍が5個師団。


 アルカード吸血鬼君主国から派遣されている、ピーター・アマースト陸軍大将が指揮するアマースト軍が3個師団。


 バロール魔王国から派遣されている、アルフォンス・サラン陸軍元帥が指揮するサラン軍が3個師団。


 以上が集結を始め、ツヴァイヘンダー作戦に向けて進む。


「閣下。全部隊が配置につきました」


「よろしい。ツヴァイヘンダー作戦を開始する」


 同盟最高統帥会議のシュライヒ上級大将がそう命令。


「いよいよだぞ、諸君! 作戦開始だ!」


 そしてアレックスたちも動き始める。


……………………

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