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ロングボウ作戦

……………………


 ──ロングボウ作戦



 バロール魔王国の空軍基地にてバロール魔王国三元帥のひとりであるオフィーリアが、次々に集結するドラゴンの軍勢を見ていた。


「オフィーリア」


「ああ。コルネリウス。準備はいいのか?」


 そこに白い鱗のドラゴンであるコルネリウスが現れ、オフィーリアが尋ねる。


「準備はできている。しかし、本当に上手くいくと思うか? 帝都の防衛結界はこれまでの歴史上、一度も破綻したことがない。無敵の結界として知られている。それを『アカデミー』などという連中が……」


「私は信じてやっているぞ。失敗しても馬鹿が死ぬだけだ」


「それもそうだな。防衛結界が破綻しなければ、こちらは引き返せばいい。後は何とでも言い訳して有耶無耶にすればいいだろう」


「そういうことだ。成功すれば、それは最大限に活用させてもらうがな」


 そして、空軍基地に帝都攻略作戦であるロングボウ作戦に参加する兵士たちがそろった。無数のドラゴンが隊列を組み、陸軍の選ばれた精鋭たちが魔剣ダモクレスを腰の鞘に下げて整列した。


「諸君。これから我々はイオリス帝国帝都カイゼルブルクを攻略する」


 兵士たちを前にオフィーリアが出撃前の演説を始めた。


「諸君の能力がこの作戦に相応しいことを私は信頼している。その上で命じよう。殺せ。殺して、殺して、殺せ。この作戦で帝都を攻撃すれば20年ぶりに戦争が始まる。戦争とは多く殺した方が勝者だ」


 オフィーリアがそう言ってにやりと笑う。


「そして、大勢を殺せば英雄だ。さあ、100万人を殺して英雄になろうではないか!」


「おおおっ!」


 こうしてバロール魔王国側はロングボウ作戦の準備が完了した。


 しかし、アレックスたちの方は作戦がまさに進行中だ。


「エレオノーラ。準備はいいかい?」


「ええ。できてる。やろう、アレックス」


 アリスと帝国陸軍の戦闘が続く中、アレックスとエレオノーラ、そしてサタナエルは他でもないノルトラント宮殿に向けて進んでいた。


 現在、帝都には帝都軍管区司令官によって戒厳令が布告されており、第1騎兵師団を主力に治安作戦が始められている。


「そこの人間! 止まれ!」


 早速その第1騎兵師団所属の騎兵にアレックスたちが呼び止められた。


「現在、帝都には戒厳令が布告されている。身分を証明できるものを提示しろ」


「なんとまあ。あいにくだが、そういうものは持ち合わせていないのだよ」


「では、その身柄を拘束──」


 そこで騎兵の首が飛んだ。


 サタナエルが『七つ冠』を展開させ、その1本が首を刎ねたのだ。


「もう殺し始めていいのだろう? 派手にやるぞ」


「やれやれ。我々はノルトラント宮殿の兵士を引き付けなければならないのだがね」


「連中が食いつくほど暴れてやる」


 アレックスの言葉にサタナエルがそう言い、サタナエルは『七つの王冠』を展開させたままあ、ノルトラント宮殿に向けて進む。


 遭遇した帝国陸軍と警察軍部隊を撃破しながら、アレックスたちはノルトラント宮殿の見える公園まで進出。


「お前たち! そこで何をしている!」


 すぐに展開していた近衛兵がアレックスたちに向けて進んでくる。


「なあに。そう大したことではないよ、兵隊諸君。我々はただのテロリストだ!」


 アレックスはそう言って手をかざす。


「バビロンよ、来たれ!」


 そして、死ぬことの許されないバビロンが召喚される。怒りに燃えるバビロンが咆哮して、その音に近衛兵すらもたじろぐ。


 そして、その音はノルトラント宮殿にまで届ていた。


「さあ、さあ! 派手に花火を上げよう! 大戦争の始まりだ! さあ、サタンよ、来たれ! 『三つ目の頭』まで!」


「ははっ! いいぞ。好き放題暴れてやる」


 公園でアレックスたち『アカデミー』と近衛兵が衝突。


「我々の近衛だ! 皇帝陛下をお守りするためならば命も捨てる!」


「はい!」


 近衛兵たちはこの絶望的状況でも士気は萎えておらず、魔剣クラウ・ソラスを構えてアレックスたちに立ち向かう。


「対悪魔戦の定石通りにやるぞ。召喚者を仕留めろ!」


 近衛兵たちが狙うのはバビロンを召喚しているアレックスだ。アレックスに向けて身体能力強化(フィジカルブースト)を施した近衛兵たちが突撃していく。


 その刃がアレックスを狙うが──。


「させない」


 そこにダインスレイフを構えたエレオノーラが立ちふさがる。


「それは魔剣ダインスレイフ……!? 何故ヴィトゲンシュタイン侯爵家の宝剣がテロリストの手にあるというのだ!?」


 うろたえる近衛兵たちがエレオノーラが呪いで生成した無数の槍によって貫かれる。鮮血が舞い、死体が積み重なった。


「ありがとう、エレオノーラ。だが、戦いはこれからだ」


「ええ。派手に暴れよう! 帝都の全ての戦力がここに集まるくらい!」


「ははは! それはいいね! 是非ともやってやろうではないか!」


 アレックスたちが哄笑する中、さらに近衛兵の増援が出現。


「あれが報告にあったテロリストだ。警戒しろ」


「爵位持ちの上級悪魔を使い魔(ファミリア)にしています。何て奴だ。それにあれは精神魔剣でしょう。相手はかなり高度な黒魔術師たちのようですね」


「だが、勝利するのは我々だ。魔術砲撃後、一斉に突撃する。準備しろ!」


 後方の魔術猟兵大隊に砲撃支援が要請され、魔術師たちが狙いを定める。砲撃は時間に従って実行されるため、その間は前線部隊は砲撃予定地点から退避し、アレックスたちを食い止めることに専念した。


「時間だ。来るぞ!」


 後方から激しい魔力のうねりが響き、アレックスたちのいる場所に向けて無数の精神魔剣や触れれば爆発する火球などが降り注ぐ。


「目には目を、歯には歯を」


 しかし、それら砲撃はアレックスの詠唱直後、アレックスたちではなく、後方の魔術猟兵大隊に向けて襲い掛かった。結界の力だ。


「まさか対砲結界だと!?」


「後方の魔術猟兵大隊は被害甚大! これ以上の砲撃支援はできないとのこと!」


 現代の戦争でも砲兵の敵は砲兵だ。


 対砲迫レーダーを装備する部隊はすぐさま砲撃を行った敵の火砲の位置を把握し、そこに向けて砲撃を行う。だから、砲兵には機動力が必要になる。


 その点で近衛の魔術猟兵は油断していた。アレックスたちは対砲迫レーダーこそ持っていないものの、結界によって攻撃をそっくりそのまま送り返せたのだ。


「ふふふ! 私が黒魔術師か使わないと思ったかね? 我々は魔術の探求を進める『アカデミー』だ! この程度の結界など容易い!」


 アレックスは友軍の砲撃が不発に終わったことに苦い表情を浮かべる近衛たちを見て、そう言い放った。


「こうなれば近接戦闘で片付けるぞ。続け!」


「おおおっ!」


 近衛兵たちが魔剣クラウ・ソラスを手に突撃を開始。


「ははっ! 殺し放題だな!」


「まさに戦争だ!」


 サタナエルが『七つの王冠』を振るって突撃してくる近衛兵たちを切り倒し、アレックスもバビロンを従わせて敵を蹴散らしていく。


「悪魔の相手を正面からやるな! 召喚者を仕留めろ!」


「了解!」


 近衛兵たちは巧みにサタナエルとバビロンとの交戦を抑えながら、アレックスに向けて再び肉薄しようとする。


「ここは通さない!」


 しかし、その行く手をエレオノーラが確実に遮っていくる。


 生成された無数の呪いの槍が肉薄を試みる近衛兵たちに降り注ぎ、彼らを薙ぎ払う。近衛兵たちは言うならば無数の機関銃に向けて策もなく突撃しているようなものだ。


「クソ。砲撃支援なければ兵士たちを肉挽き器に突っ込ませるようなものだぞ!」


「師団長閣下! 宮殿の方から第九使徒教会が援軍に来ます!」


「第九使徒教会。聖騎士団の聖騎士(パラディン)か」


 ここで状況が動いた。


 宮殿にいた第九使徒教会の聖騎士(パラディン)たちが、苦戦する帝国陸軍を支援するために駆け付けたのである。


「おっと。雑魚以外も来たようだな」


「そのようだ。まさかここにいるとは思わなかったがね」


 サタナエルとアレックスが攻撃が止まった近衛兵の陣地を見ながらそう言い、バビロンが吐いた火炎放射の炎を裂いてある人物が現れた。


「アレックス・C・ファウスト。あなたが黒魔術師だったのですね」


 ガブリエルが、その姿を見せた。


……………………

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