第6話
私が答えられないでいると、ウルフハルトは沈黙を破る様に口を開いた。
「なんだ、知り合いじゃないのか」
「ええ。初めてお話し…」
そこまで口にして慌てて口元を抑える。ウルフハルトの方におずおずと顔を向けると、口角を上げていた。
「引っかかったな」
その言葉に、私は顔がピクピクと痙攣するのが分かる。こんな男の誘導尋問にかかってしまったことがとにかく腹立たしい。
ウルフハルトは少しだけ目を細めた後、軽く咳払いした。
「それで、あいつをどうするつもりなんだ」
「どうするだなんて、そんな大層なこと出来ませんよ。頼まれごとを叶えるくらいしか」
「へえ、何を頼んだのか気になる所ではあるが、聞いても教えてくれなさそうだな」
そう言って私の顔を軽く覗きこむ。こんな脅しに負けるものか、と目を少しだけ見開く。
すると、ウルフハルトが少しだけ眼光を緩めてから目をそらした。なんとかその場をしのいだ、と安堵のため息が漏れそうだ。
「それより、フロレンツ様の妹様はちゃんと保護しているんですか?」
「愚問だな。その目で確かめればいい」
彼が何を言っているのか分からない、と戸惑っていると、
「もとより、この馬車は別荘に向かっているのだから」