私がみた夢
それは夢か現か幻か
「待って、行かないで、もっともっとそばにいて!もっともっと遊んで!もっともっと話しして!」
夢か現実か解らない境目に本当に叫んでる自分の声で目が覚める。頬の温かみを感じ本当に涙を流してることに気づく。(またこの夢か…)心の中はあたたかい様な淋しいようなよく解らない気持ちで一日が始まる。
私の人生の中で一番最初の身内の不幸は4歳の時。母方の祖母で初めて見るご遺体は顔色が異常に白く、これを透き通る様なとでもいうのかなと思う様な、蝋人形のようでいてでも人間で、触れるとまるで異世界にトリップするかのような感じたことのない冷たさで、いろんな意味で衝撃を受けた。その後もなぜか身内の不幸は続き、高校生の頃には焼香の所作もすっかり見に付いた葬式マスターになっていた。その頃から同じ様な夢を見る様になった。一連の流れはあの世の人が神様から一日だけこの世に戻ることを許された日に、目が覚めると自分の亡くなったはずの人が生前の姿で現れて、思い残すことなく楽しい時間を過ごす。でもその時間は無限ではなく期限があり、その時が来るとまた悲しい別れがあり、限られた時間を惜しむ。
私は小学生の時に父を、会社に入って間もない頃に兄を亡くした。本当にお父さんっ子で大好きだった父が夢に出てきたときは本当に子どもの様にわんわんと声をあげて泣いてた。兄とは顔を見ればしょっちゅうケンカをしていたがそれでも泣いて行かないでとすがった。
ある時目が覚めてダイニングに降りてきたら私が中学生の時に亡くなった伯母さんが食卓に座っていた。何故か喪服で。私が小さい時に近くに住んでいて年下のいとこもいたことからよく遊びに行かせてもらっていた伯母。
亡くなった時に母からただ自殺とだけ聞いていた。原因ははっきり解らずただ突発的にビルから飛び降りたのだった。その伯母が喪服で現れた。いろんな話をしてそろそろ夕方になる頃ふと伯母が「かよちゃんおばちゃん自殺したって思ってる?」と聞いてきた。戸惑いながらも「うん、そう聞いたけど…違うの?」と問うと「違うの、私は自殺したんじゃなくて政夫さんに殺されたの」それまでずっと横を向きながら話してた伯母さんがこちらを向き私の目をまっすぐ見ながら力強く言った。そしてすうっと消えた。
飛び起きた私はしばらくモヤモヤしていて、たとえ夢の中のことといえど聞いてはいけないことを聞いた様な、そんな気持ちに居たたまれなくなり母に実は…と夢の話しをしたら母の顔つきが変わった。「なになに?何かあるの?」問い詰める私に母が重い口を開いた。
伯母からすると舅である祖父と同居していて、どうやら認知症を患いひどくなってきて家の中で粗相をして、壁に擦り付ける、何度も食事を要求する…男尊女卑が蔓延り家の中は女の仕事だった時代。自分の父であるはずの伯父は全部伯母に任せて自分は夜の街を謳歌していた。そして浮気も数知れず。それを知った伯母が伯父を問い詰めたとき「俺が働いた金でどうしようが俺の勝手だ。十分なお金は与えてるだろう。」それに反論した伯母に「お前だけが女じゃないんだよ!」と吐き捨てたらしい。その次の日に伯母はふらりと家を出てビルに行ったらしい。遺体の確認をした伯父。顔の半分が潰れた伯母の顔が頭から離れないと、最後の言葉がそれだったことをずっと後悔しているという話を聞いた。
それ以来伯母の夢を見ることはない。あれは伯母がせめて私には本当のことを伝えたかったのか、それともたまたまみた私の本当に夢なのか、今も答えを出せずにいる。