第77話 一つの終わりと戻ってきた日常
「それでは。ドライアドさんの快復を祝して、乾杯ですっ!」
ある日、ルクスの家にて。
ロゼッタが元気よく宣言して、その場にいた皆がそれに続いた。
「あの……。改めて皆さん、本当にありがとうございました」
乾杯が済んだ後、ドライアドが皆に向けおずおずといった感じで頭を下げる。
ルクスたちがユグドラシルと交戦している一方、別行動をとっていたシーベルトが見つけたアイリスフロームの花によってドライアドは完全に復調していた。
今日はそれを祝うための席がルクスの家で開かれているというわけである。
「でも、本当に良かったですね。一連の事件が解決して」
「そうね。最初にルクスたちと会ってからまだ少ししか経っていないのに、随分と色んなことがあった気がするわ」
ロゼッタに続いてウンディーネがここ最近の出来事を振り返って呟いた。
今この場には、ルクスとロゼッタはもちろんのこと、シーベルトの他、事情を知るシエスタやコラン、そして精霊たちが一堂に会している。
ルクスの家にはそれなりの広さがあったため、幸いにもこれだけの人数がいても手狭になるようなことはなかった。
(紅茶のカップ、増やしておいて良かったな。といっても、これだけの人数がウチに来るなんて思っていなかったけど)
ルクスはそんな感慨を抱きながら自分のカップに口を付ける。
「はは……。なんだか改めて凄い面子だよね」
「そうですね、コランくん。こんな中に自分がいていいのかって思っちゃいます」
「何言ってるんだ。あの時も二人が他の生徒たちを避難させてくれたからあのデカい竜が倒せたんだぞ」
「あ、ありがとうございます、ルクスくん」
コランとシエスタは謙遜していたが、あの日二人の働きが功を奏したのは事実である。
ルクスがユグドラシルに放った精霊魔法は広範囲に効果が及ぶため、周囲に他の生徒たちがいるかもしれない状況では使用できないものだった。
故にコランとシエスタは陰ながら欠かせない働きをしてくれていたのだと。
ルクスが本心からそのことを伝えると、二人は照れたような顔ではにかんでいた。
「それにしても、まさかここまで多くの精霊が地上に出てきていたとは思いませんでした。ノームやウンディーネ、ドライアドに私も含めると四人ですか」
「そうじゃの。むしろ儂がルクスと会う前に出ていた者もいるようだし、この分だと他の精霊たちも案外住処を離れているのかもしれんのぅ」
「ああ、そうそう。今度探しに行ってみましょうよ。色々と落ち着いたことだし」
「そ、そうですね。私、久しぶりに皆さんとも会ってみたいです」
ルーナにノーム、ウンディーネにドライアドと続いて和気あいあいとした会話が繰り広げられる。
それに目を輝かせたルクスが「俺も行きたい!」と乗っかり、相変わらずねぇとウンディーネに溜息をつかれていた。
「僕もドライアドと会ったときには想像もしていなかったな。まさかこんなにたくさんの生徒たちが精霊と関わりを持っていたなんて」
「会長からしてみればそうですよね。というより、私も会長がドライアドさんと一緒にいるなんて思いませんでしたけど。生徒会では普通に仕事していたのに」
「そういえばロゼッタ君。ルクス君に生徒会に入ってもらうのってどうかな? 他の生徒会メンバーも話せば分かる人間たちだと思うし。そうすれば僕も楽ができ――」
「会長、素晴らしいお考えです。明日にでも議題に上げましょう」
「早い……」
シーベルトとロゼッタがそのように恐ろしいことを言うものだから、ルクスは慌てて待ったをかける。
「おいロゼッタ、勝手に話をまとめてくれるな。俺は御免だぞ。せっかくオリオール先生が上手いことごまかしてくれたってのに」
「とは言いますが師匠。ここにいる人たちを見てくださいよ。もうけっこうな人たちに知れ渡っちゃってますよ? 師匠のこと」
ロゼッタが見渡すと、ルクス以外の全員がそれもそうだと納得していた。
ルクスが肩を落とすと皆が笑い声を上げる。
(まあ、こういうのも悪くはないかな……)
ルクスはその光景がどこか眩しいもののように感じ、自然と笑みが溢れるのを感じた。
「それでさっきの、他の精霊たちに会いに行くって話なんだけど。今度みんなで一緒にダンジョン探索行かない?」
ルクスがそう切り出すとまた皆から笑い声が上がって――。
そうして、ルクスと仲間たちとの一日は賑やかに過ぎていくのだった。
●あとがき
ここまでお読みいただき本当にありがとうございました!
ここで第1部が終了となります。
本作は第2部も書いていきたいと思っていますが一旦の区切りとさせていただきます!
(連載再開が分かりやすいかと思いますので、ブックマークはぜひそのままにしておいていただければと……!)
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