第55話 ロゼッタの日記
読者の皆様に作者からの大切なお知らせがございます。
あとがき欄に記載しておりますので、ご覧いただけますと嬉しいです!
それでは、本編をお楽しみくださいませ。
私が初めて師匠の魔法を見たのは、この学園に入学してすぐのことだ。
クラス分けの試験を1ヶ月後に控え、まだ初級魔法すら扱えない私はひどく焦っていたのを思い出す。
絶対にはぐれないように、と。
ダンジョンに入る前、引率の先生からはそう言われていた。
低級ダンジョンとはいえ、まだ入学間もない生徒が魔物との戦闘になれば危険があるためだ。
それなのに私ははぐれてしまった。
後ろの方で遅れていた生徒がいたため、そちらを気にかけながら歩いていたら、亀裂の入った箇所に気づくことができなかったのだ。
音を立てて崩れ落ちる地面。
それに巻き込まれるようにして、私は下層まで落ちてしまう。
そこで運悪く魔物の群れと鉢合わせてしまった。
魔法を打ち込んでみるが、ロクに命中もせず、むしろ火に油だった。
どうしようもなくなり、私は逃げる選択をする。
そのことがまた悔しくて、それでも私の意思などおかまいなしに魔物の群れは追い詰めてくる。
為す術なく壁際に追い込まれ、近くにいた魔物が私に襲いかかってきて――。
そこで初めて師匠の使う魔法を見た。
それは恐ろしく早く、正確で。
場違いにも、とても綺麗な魔法だと思った。
そして同時に、とても悔しかったのを覚えている。
だから私は、この人に近づきたいと思った。
こともなく魔物の群れを一掃した後で。
助けに現れたその人が振り返り、屈託なく笑うのを見て、私は思わず懇願した。
あなたの弟子にしてほしいと――。
師匠と呼ばせてほしいと――。
その人は驚いた顔をしていたけれど、私も自分の胸の内を突いて出た言葉に驚いていた。
今思えばまず始めに感謝するべきだろうと過去の自分を戒めたくなるけれど、それよりもこの人に近づきたいという思いが強かったのだと思う。
その人は「俺は師匠なんてガラじゃないよ」と言った。
でもせめて、師匠と呼ぶことと、教えを乞うことは許してほしいと私は告げた。
それから半ば押しかけるようにして、その人の教えを受けることになった。
魔法を扱う上での基本的な考え方を教えてもらったり、本来引率なしでは禁止されているダンジョン探索にこっそり二人で出かけたりと。
楽しかった。
いつしか悔しさは憧れに変わっていた。
そして憧れは……と、それは置いておこう。
とにかく、嬉しかったのだ。
変わっていく自分が。
あの人を追いかけることが。
私があの人に感謝していることは言うまでもない。
願わくはこれからもずっと、あの人の傍で、あの人を追いかけたいものだ。
それが私の、想いだ。
そこまで書いて、ロゼッタはペンを置いた。
そして日記帳をパタンと閉じ、胸に抱えたままベッドの上をゴロゴロと転がる。
そんなに恥ずかしいのであれば書かなければというのが自然な考えだが、こういうのは理屈ではないのだろう。
ロゼッタは足をバタバタとベッドの上に叩きつける。
「はぁ……。また生徒会の仕事で師匠と会えませんでしたね。ノームさんたちは師匠の元に戻ってきたでしょうか?」
そんなことを独り呟き、ロゼッタは窓の外に浮かぶ月を見上げる。
そして明日こそは師匠と話をするのだと、日記帳を抱えたまま眠りにつくのだった。
● 作者からのお知らせ ●
本作の書籍化&コミカライズ化が決定しました!
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もちろん今後も更新を続けてまいりますので、ぜひお楽しみいただけますと嬉しいです!





